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短編集③

作者: マサト

 俺には不思議な能力が宿っている。

それに気づいたのは20歳になった成人式でのことだ。高校の同級生に誘われて、冬の寒い中地元の公民館に集まってよく知らないじいさんの講演を聞いてた時にそれが発動した。俺の1年前の今日あった出来事が突然フラッシュバックしたかのように、鮮明に思い出した。最初は仕事疲れかと思って気にしていなかったが、次の日部屋で借りてきたDVDを見ていた時に今度は2年前の出来事がはっきり思い出すことができた。さすがに怖くなった俺は近くの病院で診てもらうことにしたのだが、医者が言うには体には異常が見られないため、おそらく無意識によるストレスからおきていると言われた。その日は精神安定剤をもらって家に帰ったのだが、次の日仕事場に向かう電車の中で今度は3年前の出来事が頭に流れてきた。いくら何でもおかしい。ストレスで心が弱って昔のことを思い出すにしては、あまりにも覚えすぎている。朝何を食べたか、学校で友達と何を話したか、その日の宿題が何だったかまで思い出すのは、異常としか思えない。何か脳に病気でもあるんじゃないか、もしくは知らず知らずのうちに薬でおかしくなってるんじゃないのか。不安で仕方がなくなった俺は、その日職場の上司に相談したところ「お前、有給ためこんでるだろ。それ使ってしばらく休め」と気を使ってくれた。本来なら有給をもらうには本部に申請書を出して許可が下りるまで時間がかかるのだが、上司が本部に直談判してくれたおかげで俺は一か月もの有給をもらうことができた。ゆっくり治せよと言ってくれた上司に感謝し、俺は大きな精神科病院に向かった。

病院に着いてまず初めに脳の異常がないか検査を受けたが、特に何ともないとのこと。医者はしばらく入院してもらってゆっくり治していきましょうと優しく話しかけてくれた。次の日から俺に様々な処方箋が与えられたが、変わらず昔の出来事を思い出していく。もう俺はそういう能力をもった人間なんだと割り切ることにした。そう考えれば幾ばくか楽に感じて、むしろ他人にはない優越感に浸ることができた。そうしていく内に遂に20日目が訪れた。前日見た記憶は俺が赤ん坊で両親にあやしてもらっている映像だったため、今日は何が起きるのか少しワクワクする。もしや前世の俺が見れるんじゃないか?そんなことを思っていたら、いつもの時間に映像が流れてきた。そこに映っていたのは、今の俺の姿だった。

(…もしかして、これは過去を見るんじゃなくて、未来を見る能力だったんじゃ)


そこで俺の記憶は途絶えた。

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