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オダマキは救えない  作者: ゆうま
5/26

2-2

ゲームマスターに続いて、廊下を歩く

突き当りには、重厚そうな扉

遠くからでも良く見える、大きな扉

風なんて、吹きそうもない

でも、嫌な予感を連れてきた妙な風は、まだ吹いてる

僕の身体に、まとわりつく


その重厚そうな扉の手前で立ち止まる

この部屋に入るのかと、思った

でもすぐ隣の部屋の扉を、開ける

これも、十分重そう

風なんて、吹きそうもない


「こちらが皆様に「クイズ〇択」をしていただく会場でございます」


隙間をぬって作られた

そんな雰囲気の、小さな部屋


右側にテレビでよく見るような、回答席

左側に回答席と同じように、モニタがついた席が3つ

こっちには、正面にモニタがない


入ってすぐ見える壁には、数字が沢山書いてある

縦に19の科目、横に5つの名前

さっきもったいつけられた、待合室で受けたテストの点数


僕の平均点は98.37

相手は96.00


読解能力は、相手が上

計算の速さは、僕が上

相手は、英語が少し苦手かも

でも全部、大した差は、ない


他の3人は、名前分かんないから分かんない

だけど、平均点が89.21と93.26と68.00

ひとり明らかに低い

変なことを、しなければどうでも良い


「久住さん、随分と点数が低いですわ。回答者にならなくて良かったですわね」

「誰か高校1年の子がいるね。中学校で習ったことなんて忘れているよ。卒業したのなんて3年も前のことだからね」

「鈴です。すみません…」

「ごめん、責めているわけではないんだ」


視線を感じて、見返す

当然、対戦相手

なに、もじもじしてる

気持ち悪い


「いい勝負になりそうだと思いますけど…」

「それは、拮抗しそう。そういう、意味」

「そうですけど…」

「それなら、いい。絶対に、楽しませたりなんて、しない」

「自分もそれは思いますけど…」


大きく手を叩く音が2回、室内に響く


「問題の内容は全員同じです。知識等の目安になりましたでしょうか」


にこにことした、作り笑顔で見回す


「プレイヤーの2人に関してはほとんどが100点だからなんの参考にもならない気がするけどね」

「そうですね」

「懸念すべきは久住さんですわ」

「どうサポートして良いのか分からない場合があるかもしれないからね」

「ええ、そのせいで負けてしまう場合もありそうですわ。そうならなければよいのですが」


笑顔のまま、睨み合う

難しいこと、してる


「わざわざそこまで言わなくても良いじゃないですか。あ、ほら、回答者は座って準備万端ですよ。鈴たちも座りましょう?」


間に入ったぶりっ子にも、大分悪意ある

大学生がなにか、言おうとした

でもそれより先に、隣から声が聞こえる


「早くしてほしいんですけど…」


大学生に文句を言わせると、長くなりそう

それは分かった

だから乗ることに、する


「遅延行為」

「折角なだめてるのに」


なだめるなんて、子供じゃ、ないんだから

それに、火に油を注いだのは、ぶりっ子だから


「皆様、存外子供っぽいところや思いやりがおありなのですね」


ゲームマスターが、くすくすと笑う

注目が、集まる


これは思いやりとは、違う

面倒だから、自分のため


「失礼しました。皆様「名前当てゲーム」では裏切りや嘘は日常茶飯事というように見受けました。それに、冷静でしたので」

「確かに子供っぽかったかもしれないね。反省するよ」

「わたくしはゲームのために懸念するべきだと申しただけですわ。喧嘩を売ったのは久住さんではありません?」

「そうだね。悪かったよ。さ、席に着こう」


にこやかな表情から、ぷいっと顔を逸らす

売ったのは自分だと、分かってる

でも急に大人な対応をされたから、少し拗ねてる


一番奥の席に、なにも言わず座る

多分、左利き

ずっと日傘を、左で持ってる

2人が分かってるかは、分からない

けど、なにも言わなかった


「それでは「クイズ〇択」開催いたします」


どこにマイクがあるのか、機械を通したゲームマスターの声が、室内に響く

マイクなんて必要もないくらい、小さな部屋

これも多分、演出

このゲームマスターが、好きでやってるのかも

そう思えるくらい、楽しそう


「これよりサポーターに問題をお見せしますので、30秒以内にどちら側をどれだけサポートするのか決めて下さい。その間に回答者は賭け金を決定して下さい。第1問目はこちらです」


賭け金は、一先ず200

どんな問題が出るのか、分からない

所持金が、少ない


だけど、こんなことなら、とは思わない

だって、希和の願いを叶えられるのは、茉莉ちゃんだけ

それはきっと、嘘じゃないから

彼はいつも、誰かのために奔走していた

そんな気が、する


「賭け金とサポートが決定いたしました」


さて、どんな問題か


「第1問!」


3652+5397+2684+8195は?

19818

19828

19928


9×2で18

1の位が8

9×2で18、8と5で13、18と13と繰り上げで32

10の位が2

6×3で18、19

100の位が9

答えは19928


「両者回答が揃いました!回答オープン!」


相手も19928

サポートは?


「村田様のサポートが2、南様のサポートが1で南様の判定勝利です!」


1,500-200+600で1,900

分からないところが、多い

だから今回は相手も200だと、考えて良い

とすると2,500-200-600で1,700

一応、優位には立てた


サポートは、所持金については良い

サポートした側が大切、だから

ふりふりは、相手

大学生は多分、僕

となると、ぶりっ子は相手


2人は余程、サポート側を変えない

ぶりっ子が、鍵

嫌だ

すごく、嫌だ


「第2問目はこちらです」


こんな簡単な問題ばかりだと、困る

勝たせたい方に100賭けて、そうでない方に200賭ける

判定勝負になってもプラマイゼロなだけ

これが一番、マズい


最初の問題で間を詰めることは、出来た

もう少し、問題の傾向が分かるまで様子見

200


「賭け金とサポートが決定いたしました。第2問!」


生類憐みの令を出したのは誰?

第5代将軍徳川家綱

第5代将軍徳川綱吉


答えは、第5代将軍徳川綱吉


だけどサポート1は確定

これが大学生なら、良い

でも多分、違う

大学生は、僕の選択肢を減らすという行動は、とらない

そんな気が、する


「両者回答が揃いました!回答オープン!」


相手は第4代将軍徳川綱吉


相手は、日本史100点だった

ただ覚えてるだけだから、こんな間違いをする

これは、相手の選択肢を増やしてくれた人に、感謝


「村田様が誤答、南様が正解のため、南様の勝利です!」


今回僕のサポートは、大学生とぶりっ子

相手のサポートは、ふりふり

ぶりっ子が、さっき懸念した賭け方をしてるかも

でも多分、大学生とふりふりはまだ、100ずつ


問題や行動の傾向が分かってきた

次からが勝負


ふりふりは終始相手のサポートな、気がする

大学生は余程でなければ、僕のサポートをする感じ

やっぱり、ぶりっ子がどっちに多く賭けるか


「第3問目はこちらです」


傾向が、分かってきた

それは相手も、サポーターも、同じ

慎重になるべきか、勝負をするか


今1,900-200+1,100で2,800

そこから今回の賭け金200を引いて2,600

仮に判定勝負で負けたとしても-600で2,000


相手は1,700-200-1,000で500しか、ないはず

今回の賭け金も200だと、思う

判定勝負で勝ったとして1,100

まだ僕の方が、金額は多い


今回は少し、多めに賭けてみても良いかもしれない

300に、しておこう

この辺りから、金額の増減が激しくなるはず


「賭け金とサポートが決定いたしました。第3問!」


音楽が大音量で、流れる

ショパンの別れの曲

決して、上手くはない

一発撮りなのか、間違えてるところもある


決して、上手くはないこのピアノに、どうして

どうして、こんなにざわつく

分からない

ただ、僕はこのピアノを聞いたことがある

それだけは、確か


どこで?

誰が?

どうして?


この曲の正式名称は?


選択肢なんて見なくても分かる

だけど、思い出さないまま答えても良いのか

それが分からない


この曲を、最後に聞いたのは、1年前

初めて生で聞いたのも、1年前

哀に満ちた、そんな音色だった

助けを求められてるような、気がした

でも「彼」は、姿を消した


彼?

それって誰だっけ


「南様」

呼びかけに

・応える

・応えない

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