2-1
第2回戦「ギャンブルの塔」開催です
次の会場は、真っ暗
アナウンスの反響を聞く限りでは、少し広そうな部屋
「所持金3,500万円!白い服とは裏腹に黒く染まった心!恋に敗れた女の末路とは?!「勝者の黒薔薇」白金美奈都!」
アナウンスと少し間を置いて、暗がりに響いた声
ライトに照らされたのは、真っ白でふりふりな服を着た女の子
必要もないのに、日傘を持ってる
あれが、アイデンティティなんだ
「所持金2,500万円!仕掛け人はお前だ!裏切りの罠罠罠!この男の本心を暴ける者はいるのか?!「ハナズオウの王様」久住秀輝!」
今度は、落ち着いた雰囲気の、男の人
こんなところで微笑んでいられる人は、まともじゃない
注意
「所持金5,500万円!巧みな話術と洞察力で指名成功率100%!可愛い顔の裏に住んでいるのは堕天使か?!悪魔か?!「チューベローズを求めて」小林鈴夏!」
茉莉ちゃんと、キャラ被ってる
でも、茉莉ちゃんの方が可愛い
それから、あざとくない
「所持金2,500万円!欺かれ、欺き返す。全てが計算?!泣き虫チェリーボーイ!「シレネは愛せない」村田新!」
自信のない人は、人を騙せない
だからあの人は、違う
「所持金1,500万円!守っていたのではなく、守られていた!その事実を知り、進む先にはなにがあるのか?!「知らなかったマリーゴールド」南京太郎!」
眩しい…
やっぱり、変な紹介された
多分、他の人も同じ
変な先入観は、捨てた方が良い
「皆様改めまして、ようこそギャンブルの塔へ。今回はわたしがゲームマスターを務めさせていただきます。宜しくお願い致します」
一斉に、会場の照明が全て点いた
姿を現した人は、さっきの声と同じ人
軽くお辞儀
すぐに顔を上げて、大きなモニタを見る
「こちらにひょう」
「その前に、質問」
「南様、質問はゲームの説明が終わってから受け付けますので、」
「質問は、ゲームの内容と、違う」
周囲を見回して、反対意見が上がらないことを確認
僕に、続きを促す
「さっき、僕たちが参加してた「名前当てゲーム」のゲームマスターが、撃たれた。無事?」
「ご心配なのであれば、来た道を戻って確認に行かれてはいかがでしょう。ですが、その場合南様は無条件で負けとなります。どうなさいますか?」
「じゃあ、いい。勝って、自分で確認する」
にこやかに微笑んで、頷く
大きなモニタを、手で指し示す
「こちらに表示されているのはゲームのタイトルです。お好きなゲームと対戦相手を選んで下さい。後にルール説明を致します。必ずお一人様に一度ずつは勝負を仕掛けていただきます。一度行ったゲームは行えません。早い者勝ちです。さぁ、どうぞ!」
怠い…
眠い…
面倒…
だから、後からゆっくり、選ぼう
残り物には、福がある
「自分が最初にやります…けど…」
ほら、自信のない人、そんなこと出来ない
でも、面倒かも
「クイズ〇択を南京太郎さんとやりま…たいと、思います。けど…」
やっぱり、面倒
でも、この人が最初に動くなら、僕しかいない
守られてここまで来たなんて、許せない
きっと、そう思ってる
「承りました。ルールの説明をさせていただきます」
モニタに大きく『ルール説明』と映し出される
意味のある演出なのか、疑問を持ってはいけないのかもしれない
考え過ぎた方が負ける場合も、ある
「村田様と南様には、これからプレイヤーとして基本3択のクイズをしていただきます。ですが、残りのお3方にはサポーターとして妨害や援護を行っていただきますので、選択肢の数が増減します」
「なるほど。だから何択か分からないクイズってことだね」
「左様でございます。まずサポーターに問題、解答、5つの選択肢を見ていただきます。そして、どちらのプレイヤーの選択肢を増減させるのか決めていただきます」
「どちらのプレイヤーの選択肢を増減させるのかってことは、問題ごとに違う方をサポートしても良いわけだね」
「はい、問題毎にサポートする側を変えていただいてかまいません。選択肢の増減に必要な額は、一つにつき100万円でございます。正解すれば賭け金が戻ってくるわけではございません」
不思議そうな顔
戸惑いの顔
驚きの顔
楽しそうな顔
ひとりだけ、なんか違う
やっぱり、あの人嫌
「もちろん、もう片方のプレイヤーが不正解であればプレイヤーには賭け金×5、サポーターには賭け金×3をお渡しいたします。ですが、どちらも正解だった場合は、サポートの多かった方の負けとなります」
「サポートのし過ぎも良くないってことだね。覚えておくよ」
「この場合を判定勝負と言います。判定で勝利した場合はプレイヤーは賭け金×3、サポーターは賭け金×2となります」
「どっちも不正解だとどうなるんですか」
「その場合は全ての賭け金を没収とします。更に、サポートの多かった方のプレイヤーが-100万円です」
判定勝負のとき、サポートが邪魔過ぎる
どんな問題かにもよるけど、いらないかも
「選択肢を削除、追加する際に同じ選択肢を選ばれた場合は、ランダムで別の選択肢が選ばれます。また、追加されない選択肢を削除する選択肢として選んだ場合は回答時に変化はありませんが、サポートしたことにはなります」
「でも、これが追加されたら嫌だなって思うときもあると思うんです」
「その場合は削除数、追加数のみ選ぶことが出来るので、そちらをご利用下さい」
「しかし、ランダムなのでその選択肢が出てしまう場合もある、ということですわね」
「左様でございます。プレイヤーの方についてですが、回答する権利を買う、という意味で最低200万円の賭け金を支払っていただきます」
参加費が、1問200万円
一体、どんな問題が出るんだか
「プレイヤーは負けた場合、勝った場合の同額を支払っていただく必要もございます。それから、無回答も出来ますが、その際は相手が間違えていても自分の負け、かつ-100万円させていただきますので、ご了承下さいませ」
「クイズ番組なら、無回答はご法度」
「そういうことです」
楽しそうに、話す
そういうルール、なのかな
彼も、そうだった
「全体の流れとしましては、サポーターにサポートする側を選択し、金額を30秒で決定していただきます。そして、同時にプレイヤーは賭け金を決定していただきます。その10秒後に出題いたします。回答の時間制限は15秒です」
「随分と短いんだね」
「それくらい、簡単な問題?」
「難し過ぎる場合も考えられますけど…」
確かに、そう
難しい問題だと、選択肢を削ってもらわなくちゃ、駄目
でも相手も正解したときの、リスクが大きい
難しい方が、上手く出来てるかも
でもそんなに簡単にいくかは、疑問
「この「クイズ〇択」自体の終了条件は、どちらかの賭け金がなくなるか、10問全ての回答が終わるか。そのどちらかのみになります」
所持金が1,500万円の僕には、最初の方の問題が特に大切
2,200万円以上ない人は、平和条約も結べない
やっぱりお金は、嫌いだ
「ルール説明は以上です。ご質問はございませんか?」
「どの様な問題が出されるのか教えていただきたいですわ。どちらにどの程度賭けてよいものか、判断基準が必要ですわ」
「確かにそうだね。僕を除けばみんな多分高校生だよね。だったら得意科目とか、そういう情報がほしいかな」
「待合室で、テスト受けた」
19科目を、合計で91分
休憩は、好きなタイミングで出来た
だけど、休憩されてばかりだと困る
そんな適当な理由で、10分を2回までって
すぐに頭を切り替えるの、大変だった
「ああ、あれだね…忘れたくて忘れてしまっていたよ」
「あのレベル?」
「そうとは限りません。ある程度参考にしていただくために受けていただきました」
「では点数や正解率を教えていただけるのですわね」
「はい。ですが、それは会場に着いてのお楽しみでございます」
手元のボタンを押す
すぐ近くの壁が上に上がって、廊下が見えた
「どうぞこちらへ」
妙な風が吹いた、気がした
嫌な予感
こういうのは当たるから、考えないようにしよう
ゲームマスターの背中を、見て歩いている
ただそれだけなのに、妙な風が吹き、嫌な予感がまとわりつく
いつからスピリチュアルなことを、考えるようになったんだったかな
北東に行けば、運命の出会いが待ってるって聞いたからかも
確かに、北東に運命の出会いはあった
とても悲しいものだったけど
ううん、まだ終わってない
終わらせない
必ず、生きて帰る
そのとき初めて、北東にある悲しい運命が終わるんだ
「ナスタチウムの決意」「それぞれのマリーゴールド」で描いた「名前当てゲーム」からは「南京太郎」が参加します。
*「それぞれのマリーゴールド」の「ルート⑮」で生き残った流れです