6-7
選択:待たずに疑問をぶつける
どうしようかな
このまま睨む村田新と微笑む久住秀輝を放っておけばなにが起きるかは分かる
だけど、それで良いのかな
ゲームを先に仕掛けると久住秀輝は片付けやすそうだし良いんだけど、村田新と白金美奈都がどう思うか…
残るのはこの2人だから、この2人に良い風に思われる方が良い
中途半端な決意は返り討ちにされるだけ
ということで、村田新の闘争心に火を付ける方向で行こう
「どうしてわざわざ煽るの。本当にこのゲームを楽しもうとしている…とか」
「面白いことをするんだね」
「私は真剣です。生きて帰るために、真剣です」
久住秀輝は私の狙いに気付いたかのような思わせぶりなことを言う
だけど、それは相手にせず目的をしっかりと表明
これで舞台は整うはず
「金井さんにまでいちゃもんをつけて、なにがしたいんですか」
「もうなにも」
「じゃあ死んで下さい」
「そういう意味じゃなかったんだけどね」
「もう関係ないですけど…!」
良いね、良いね
死ぬか殺すしか選択肢がないなら、殺すよね
だって知らない人なんだから
小林鈴夏という危険人物は去った
久住秀輝という和を乱す者を排除すれば、平和になる
そしたら3人で協力して、生きて次へ進むことが出来るよ
「次は自分が久住さんと「クイズ〇択」をやります…!」
久住秀輝が小さく笑って私を見る
「対戦相手は自分ですけど…!」
「そんなにカリカリしなくても」
「させてるのは久住さんですけど…!」
大きくわざとらしい咳払いが響く
「承りましたので、ルールの説明をさせていただきます」
画面に大きく『ルール説明』と映し出される
「村田様と久住様には、これからプレイヤーとして基本3択のクイズをしていただきます。ですが、残りのお2人にはサポーターとして妨害や援護を行っていただきますので、選択肢の数が増減します」
「なるほど。だから何択か分からないクイズってことだね」
「左様でございます。まずサポーターに問題、解答、5つの選択肢を見ていただきます。そして、どちらのプレイヤーの選択肢を増減させるのか決めていただきます」
「どちらのプレイヤーの選択肢を増減させるのか、というのは問題ごとに違う方をサポートしてもよいという意味でしょうか」
「はい、問題毎にサポートする側を変えていただいてかまいません。選択肢の増減に必要な額は、一つにつき100万円でございます。ただし、正解すれば賭け金が戻ってくるわけではございません」
正解することが勝つことじゃないなら一体なにをすれば良いんだろう
「もちろん、もう片方のプレイヤーが不正解であればプレイヤーには賭け金×5、サポーターには賭け金×3をお渡しいたします。ですが、どちらも正解だった場合は、サポートの多かった方の負けとなります」
「サポートのし過ぎも良くないってことだね」
ちらりと白金美奈都を見る
その視線に気付いていながらも、無視をした
私から見れば、少し意外な選択
「この場合を判定勝負と言います。判定で勝利した場合はプレイヤーは賭け金×3、サポーターは賭け金×2となります」
「どっちも不正解だとどうなるんですか」
「その場合は全ての賭け金を没収とします。更に、サポートの多かった方のプレイヤーが-100万円です」
村田新をサポートするであろう白金美奈都との連携が必要になりそう
正直難しいかもしれないなぁ
「選択肢を削除、追加する際に同じ選択肢を選ばれた場合は、ランダムで別の選択肢が選ばれます。また、追加されない選択肢を削除する選択肢として選んだ場合は回答時に変化はありませんが、サポートしたことにはなります」
「ですが、これが追加されたら嫌だと思うときもあると思いますわ。賭けたことを無駄にせず、その選択肢が追加されることを拒否するような仕組みはないのでしょうか」
「その場合は削除数、追加数のみ選ぶことが出来るので、そちらをご利用下さい」
「ランダム故にその選択肢が出てしまう場合もある、ということですわね」
「左様でございます。プレイヤーの方についてですが、回答する権利を買う、という意味で最低200万円の賭け金を支払っていただきます」
白金美奈都が思った以上に積極的に質問する
村田新を必要以上に支援されると困る
もし村田新が負けて久住秀輝が残れば、協力関係は見込めない
「プレイヤーは負けた場合、勝った場合の同額を支払っていただく必要もございます。それから、無回答も出来ますが、その際は相手が間違えていても自分の負け、かつ-100万円させていただきますので、ご了承下さいませ」
「クイズ番組なら無回答はご法度だからかな」
「そういうことです」
久住秀輝を見てにこやかに微笑む
あのテストの結果が良くなかったのかもしれない
「全体の流れとしましては、サポーターにサポートする側を選択し、金額を30秒で決定していただきます。そして、同時にプレイヤーは賭け金を決定していただきます。その10秒後に出題いたします。回答の時間制限は15秒です」
「随分と短いんだね。それくらい簡単な問題なのかな」
「難し過ぎる場合も考えられます」
納得したように頷く久住秀輝を見て、白金美奈都に睨まれる
わざわざ負けさせたい相手に必要な情報を与えるはずない
あのテストを基準にして問題が作られることは明白
中学の頃から授業をろくに受けていない私でも多くの問題を答えることが出来た
つまり、クイズは簡単であるはず
だから久住秀輝には難しい問題だと思ってもらった方が良い
それにどれだけの意味があるかは分からない
だけど、なにもせずにいたって変わらない
「この「クイズ〇択」自体の終了条件は、どちらかの賭け金がなくなるか、10問全ての回答が終わるか。そのどちらかのみになります。ルール説明は以上です。ご質問はございませんか?」
「待合室で受けたテストの結果を教えて下さい」
20科目くらいを1時間半くらいで行った、あのテスト
苦行だった
「ああ、あれだね…忘れたくて忘れてしまっていたよ」
「あのレベルということですの?」
「そうとは限りません。ある程度参考にしていただくために受けていただきました」
「では点数や正解率を教えていただけるのですわね」
「はい。ですが、それは会場に着いてのお楽しみでございます」
廊下に出てすぐ隣の扉を開けると、そこにあった階段を昇る
昇った先にある扉を開けると、また廊下
違うのは、近くにある扉がひとつだということくらい
壁には絵のひとつも飾っていないし、花が生けられた花瓶や彫刻のひとつもない
すぐ近くにある扉開けると、また階段を降りる
降りた先にある廊下の突き当りには重そうな扉がある
その扉のすぐ隣の扉を開ける
「こちらが皆様に「クイズ〇択」をしていただく会場でございます」
随分小さな部屋
奥の壁にさっき言っていたテストの点数が張り出されている
「久住さん、随分と点数が低いですわね」
「誰か高校1年の子がいるね。中学校で習ったことなんて忘れているよ。卒業したのなんて3年も前のことだからね」
誰もなにも言わない
小林鈴夏は高校1年生だったらしい
「それより、村田くんもすごく点数が高いね」
「受験生なのでこれくらいは当然だと思いますけど…」
「金井さんは高校生なのでしょう?随分点数が低いですわね」
「家の都合で中学も高校もほとんど行っていないので独学なんです」
「あら、そうでしたの」
哀れに思っている声色
気に入らないなぁ
私は特別学校に行きたいと思ったことはない
ある程度のことを知っていれば生活することに困りはしない
負け惜しみにしか聞こえないだろうから言わないけど
「村田様と久住様は右側にあります、回答者席にご着席下さい。白金様と金井様は左側にあります、サポーター席にご着席下さい」
テレビで使っていそうなセット
2つあるそれの右の席に座ると白金美奈都が小さく微笑んで左の席に座る
「それでは「クイズ〇択」開催いたします。これよりサポーターに問題をお見せしますので、30秒以内にどちら側をどれだけサポートするのか決めて下さい。その間に回答者は賭け金を決定して下さい。第1問目はこちらです」
3652+5397+2684+8195は?
解答が19928
なにもしなければ出る選択肢が19828、19818
増やせる選択肢が19918、18928、20928
白金美奈都は間違いなく村田新の味方をする
計算しなくても20928が間違いであることはすぐに分かる
村田新のこの選択肢を増やそう
こんな簡単な問題を間違えるはずがない
村田新をサポートすれば村田新の負けになってしまう
「賭け金とサポートが決定いたしました。第1問!」
両者驚いた顔をしている
簡単な問題だからだと思う
「両者回答が揃いました!回答オープン!」
2人とも19928
「村田様のサポートが1、久住様のサポートが1で引き分けです!」
やっぱり村田新をどこまでも援護するつもりだ
援護のし過ぎは良くないとルール説明でも言っていたのに、どういうつもりなんだろう
「第2問目はこちらです」
生類憐みの令を出したのは誰?
解答が第5代将軍徳川綱吉
なにもしなければ出る選択肢が第6代将軍徳川綱吉、第5代将軍徳川家綱
増やせる選択肢が第6代将軍徳川家継、第4代将軍徳川綱吉、第4代将軍徳川家宣
久住秀輝の日本史の点数は70点を下回っていたはず
ここは誤答に導いた方が良い
白金美奈都は村田新の選択肢を削るだろうから今は気にする必要はない
綱吉をこれ以上増やすのは愚策
元々選択肢には第5代と第6代がある
第6代を増やせば2択が2つあることになる
知らなければそうそう当たらない
久住秀輝の選択肢に「第6代将軍徳川家継」を追加
「賭け金とサポートが決定いたしました。第2問!」
村田新はすぐに回答を書き込んだ
予想通り久住秀輝は迷っている
「両者回答が揃いました!回答オープン!」
2人とも5代将軍徳川綱吉…正解だ
「村田様のサポートが2、久住様のサポートが0で久住様の判定勝利です!」
「まさか2択からの2択で当たるとは思わなかったよ。運も実力の内ってやつだね」
「第3問目はこちらです」
この曲の正式名称は?
解答が練習曲作品10-3
なにもしなければ出る選択肢が練習曲作品25-5、練習曲作品10-6
増やせる選択肢が練習曲作品10-12、練習曲作品25-3、第練習曲作品10-1
隣をちらりと見ると、珍しく白金美奈都が迷っている
さっきの久住秀輝の言葉が関係しているのだろうけど、どうしてそこまで迷って――
そういうこと
本当にこの人は学ばないなぁ
可愛い人
白金美奈都に声を
・かける
・かけない




