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オダマキは救えない  作者: ゆうま
1/26

1-1

第2回戦「ギャンブルの塔」開催です

案内されて行った先は真っ暗だった

最初にされたアナウンスのようなものの反響具合からいって、割と広い部屋だろう


「所持金3,500万円!白い服とは裏腹に黒く染まった心!恋に敗れた女の末路とは?!「勝者の黒薔薇」白金美奈都!」


暗がりに響いていた声が名前を言った瞬間、白いゴスロリに身を包んだ女の子がライトで照らされる

可愛いと言って良いのか、綺麗と言って良いのか、よく分からない顔をしている

高めに結んだツインテールの根本やらスカートの裾やらいたるところにフリルがついている


3,500万ということは3人指名に成功しているのか

人は見た目では分からないものだな

そもそも、観客などいなさそうなのに、なんのためにこんな演出をしているのか

そんなことをぼんやり考えていると、再び部屋が暗くなる


「所持金2,500万円!仕掛け人はお前だ!裏切りの罠罠罠!この男の本心を暴ける者はいるのか?!「ハナズオウの王様」久住秀輝!」


今度照らされたのは落ち着いた雰囲気の男性

どうしてだか微笑んでいる

大人ではなさそうだが、大人っぽい

大学生だろうか


「所持金5,500万円!巧みな話術と洞察力で指名成功率100%!可愛い顔の裏に住んでいるのは堕天使か?!悪魔か?!「チューベローズを求めて」小林鈴夏!」


紹介にあった通り、可愛い顔をしている

茉莉よりは少し童顔か

同じ黒髪ストレートロングだが、頬の辺りが短い

あれはなにカットっていうんだったか


服はぱっと見普通だが、所々に動物がいたり雲や気球などファンシーさを連想させる柄がある

自分の見た目の評価を分かっていて、わざとやっているんだろう

―――嫌いだな


「所持金2,500万円!欺かれ、欺き返す。全てが計算?!泣き虫チェリーボーイ!「シレネは愛せない」村田新!」


背が高いからなのか、猫背だ

髪が長くて少しぼさぼさしているため顔は見えない

――ああ、自信がないのか


参加者は5人らしい

次は俺の紹介だな

あまり良い紹介のされ方はしなさそうだ


「所持金2,500万円!騙すため、思い出に嘘を吐いた男!今度はなにに嘘を吐く?!「マリーゴールドは知っている」綾辻信元!」


うわっ、意外と眩しい

他のやつらはよく平気で立っていられたな


騙した側が3人と騙された側が2人

但し、1人は明確に騙したとは紹介されていない

もう1人も裏切ったとは言われていたが、どの程度かは言われていない

俺だけが顔見知りを騙したと言われている

様子を見たいところだが、早く動かないと不利になるかもしれない


会場の照明が一気に全て点く


「皆様改めまして、ようこそギャンブルの塔へ。今回はわたしがゲームマスターを務めさせていただきます。宜しくお願い致します」


軽くお辞儀をするとすぐに顔を上げ、大きなモニターを見た


「こちらに表示されているのはゲームのタイトルです。お好きなゲームと対戦相手を選んで下さい。後にルール説明を致します。必ずお一人様に一度ずつは勝負を仕掛けていただきます。一度行ったゲームは行えません。早い者勝ちです。さぁ、どうぞ!」


どうぞっていきなり言われてもな…

ルールが分からないんじゃ誰を対戦相手に選んで良いのかも分からない

一先ずタイトルを確認して、ゲーム内容を想像するしかないか


イカサマ宝探しゲーム

脱出組替巨大迷路


…本当に賭け事をするんだよな

随分アクティブなタイトルだ

こういう手のものは出来ればやりたくない

体力には自信があるが、協力者が必要だろう

少なくとも今は絶対に出来ない


裏切りジジ抜き

公開ポーカー


ギャンブルっていったらイメージするのはやっぱりカードゲームだよな

ただ、これも協力者が必要そうだ

ギャンブルってそういうのだったのか?


――いや、別に金があるんだから信頼関係なんてなくても良いんだ

そう、それがギャンブルだ

だったら


「はい」


可愛らしい声が会場に響く

声の主は小さく手を挙げていた


「ご質問ですか?小林様」

「違います。行うゲームと対戦相手を決めました」


はやっ

流石指名成功率100%だな

躊躇いがない


「誰も動きそうにありませんから。嫌なことは早く済ませてしまった方が良いかなって思うんです」


さっきよりも声が甘い

というより、少しずつ甘くしている?

敬語が浮いて気持ち悪い


「公開ポーカーを綾辻信元さんと行います」

「俺っ?!」


選ばれると思っていなくて完全に油断していた

待てよ、俺ド庶民で賭け事なんてしたことないんだよ

様子を見させてくれ

それか体力勝負っぽいやつやらせてくれ

なんでポーカーなんだよ

役とか分かんねぇ


「承りました。ルールの説明をさせていただきます」


スクリーンに大きく『ルール説明』と映し出される


「役は通常のポーカー同様です。但し、交換は一度のみ。そしてこの「公開ポーカー」は参加費として200万円以上を1ゲーム毎に支払っていただきます」

「参加費としてってことは、カードが配られる前に支払うってことですよね」

「その通りでございます。手札を見てから、カードを交換してから等、後から上乗せすることは不可能です」

「参加費が賭け金ってことか?」

「左様でございます。金額の小さい方が先攻となります。同じ金額の場合は前のゲームと異なるプレーヤーとします。1ゲーム目で賭け金が同じ場合はわたしが気まぐれで決定いたします」


先攻後攻は大事なところだろ

それを気まぐれって

しかもゲームがひとつ目なんだぞ

様子見で最低額になることくらい分かるだろ


「役によって受け取れる賞金の倍率が異なります。勝った場合は賭け金×倍率を受け取ることが出来ますが、負けると相手の手札の倍率分を支払っていただきます。役による倍率はこちらの数字が大きい方をご覧下さい」


スクリーンには役の名前と手札の例、条件も書いてある

一先ず安心だ

だが、あまり見過ぎると慣れていないとバレてしまう

しかし、それ以前に役が分からないことの方が重要だ


ロイヤルストレートフラッシュは同じマークのAとKとQとJと10で、倍率は20

ストレートフラッシュが連続した数字で同じマークの5枚で、倍率は10

フォーカードは同じランクのカード4枚と1枚のサイドカードで、倍率は8


ランクが多分数字のことだよな

サイドカードは役に関係ないカードってことで良いんだろうか


フルハウスは同じランクのカード3枚とそれとは別の同じランクのカード2枚で、倍率は6

フラッシュは同じマークの5枚のカードで、倍率は4

ストレートは連続した数字の5枚のカードで、倍率は4


例を見るに、フラッシュは数字は全く連続していなくて良いらしい

逆にストレートはマークが関係ないようだ


スリーカードは同じランクのカード3枚とランクの異なる2枚のサイトカードで、倍率は3

ツーペアは同じランクのカード2枚が2組と1枚のサイドカードで、倍率は3

ワンペアは同じランクのカード2枚とランクの異なる3枚のサイトカードで、倍率は2

ノーペアは解説がないが、例を見る限り役がないことだろう

倍率も書かれていていない


「プレイヤーでないお三方は勝つと思われる方に賭けていただきます。そして、こちらがこの「公開ポーカー」の特徴でございます。賭け金200万円毎に自分が賭けた方ではないプレイヤーの手札を見て知らせることが出来ます」

「相手に公開されるから「公開ポーカー」ってことか」

「はい。お三方が賭けられるのは1ゲーム目が始まる前に一度のみです。賭け金の変更や賭けられる方の変更は出来ません。こちらにある倍率の小さい方がお三方の倍率です」

「随分変わるのですわね」

「賭けるのは一度だけだし、もし賭けた方が負けても賭けたお金だけが消えるだけだからってところかな」

「左様でございます。カードを選ぶ際は伏せた状況で選んでいただきますので、公開するカード以外をご覧になることは出来ません」


見て決められるのなら、賭けた人数が多い方が勝つ確率の方が高いだろう

それを防ぐための措置か


「ちなみに、プレイヤーのお二方はノーチェンジで勝利された場合ボーナスで+1,000万円ですので、是非チャレンジして下さいませ。勝負を降りることは可能ですが、相手に200万円を支払う必要があります」


負けるリスクを考えるとそれが一番良いように思えるが、勝負しなければ金が減っていくだけだ

始めからそんなことはしていられない


「カードはジョーカーを除いた52枚で行い、一度使用したカードは使用いたしません。プレイヤーに行き渡る手札がなくなるか、所持金がなくなるまで、この「公開ポーカー」は終わりません。なにかご質問はございませんか?」

「ありますわ。見たカードが他の方と同じだった場合はどうなるのでしょう」

「見たカードのみが通知される形となりますので、見たと分かるだけでございます」

「同じかどうかの通知は誰にもないということですわね」

「はい」

「僕も4つほど良いかな」


小さく頷いて促す


「1,000万を超えて賭けることでなにか特典はあるのかな」

「ございません」

「プレイヤーは相手に公開されたカードがなんなのか、知ることは出来るのかな」

「出来ません」

「相手が交換したカードの枚数は分かるのかな」


分かったところでどうなる

賭け金を増やすことは出来ないんだぞ


「そのときは公表されませんが、カードを配り終えた時点で残り何枚かをお知らせ致します」

「僕ら3人がどちらに賭けたかは全員が分かるのかな。それともプレイヤーに知らされるだけなのかな」

「それを知っているのはご自身だけでございます」

「分かったよ。ありがとう」


疑問に思っていたことは2人が質問してくれたことで分かった

ただ、役のことが非常に心配だ

ギャンブルというものは慣れと勘が必要だとテレビでやっていた

こうなったら勘だけが頼りだ


「ゲーム全体の流れといたしましては、まずお三方に賭ける対象と金額を決めていただきます」


村田さん、白金さん、久住さんの顔をそれぞれ数秒見る


「プレイヤーのお二方に参加費を支払っていただきましたら、カードを配ります。手札を確認後、盤面にセットしていただきます。お三方がどのカードを公開するか選び、そのカードをプレイヤーのお二方に確認していただきます。カードの交換をして勝負!」


急に大きな声を出されて肩をビクリとさせたら小さく笑われた

予期せぬ大音量に驚くなという方が無理だと思う

だが、俺以外は少しも驚いていない

村田さんや、可愛いキャラを作っている小林さんは驚いても良いんじゃないか


「でございます。お金の動きは公表されませんが、ゲーム毎に計算しておりますので、ご安心下さいませ」


小さくお辞儀をする

そんなもの結果が合っていればどうでも良い


「次のゲームのカードが配られた段階で残りのカード枚数をお知らせいたします」


部屋全体と俺たちひとりひとりの顔を見る


「ご質問がなければ、ゲームを始めされていただきます」

「ありません」

「俺もない」


俺の前に来て、じっと目を見られる


「正々堂々戦おうね」


差し出された手を、思わずじっと見てしまった

「ナスタチウムの決意」「それぞれのマリーゴールド」で描いた「名前当てゲーム」からは「綾辻信元」が参加します。

*「それぞれのマリーゴールド」の「ルート⑫」で生き残った流れです

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