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約束を交わした日

作者: 未明

あぁ…まただ。

またやってるよ。


いじめられている奴の名前は江南 翼

今日は上履きがないらしい。

いつもだったら特に興味は示さない。

しかし何故か今日は声をかけてしまった。

「…どうしたんだ。」

「あっ…朝霞くん…えっと…上履きが…」

「待ってろ。」

職員室へいきスリッパを借りてくる。

「ほら。」

「え…?あ、ありがとう…でもなんで…?」

「それはあれか?いつも見て見ぬ振りなのに今日はどうしたってことか?」

「そういうつもりじゃ…」

「…朝からちょっとな。気分が悪い。だから気まぐれだ。」

それから俺達は一緒にいる事が多くなった。

翼へのいじめは減ったがそれでも嫌がらせをしてくる奴はいるもんだ。

そんなある日、

「あ、朝霞くん…」

「どうした。」

「き、今日屋上でご飯食べない…?」

「いいぞ。」

本来は立ち入り禁止だ。

だからこそ、誰もいないし誰にもバレない。

「朝霞くんのお弁当いつも卵焼きはいってたよね。だ、だから好きなのかと思って…作ってきたんだ…食べてもらいたくて…邪魔されたくなかったから屋上で食べようって…」

そんなこと気にしたこともなかった。

大抵弁当に卵焼きは入ってるもんじゃないか?

…まぁ嫌いではないが。

「…ふっ。ありがとな。いただくよ。」

甘めの卵焼きだ。

…うまい。

「ど、どうかな…?」

「うまい。すっごくうまいぞ。」

「…!あ、ありがとう!えへへ…」

「そ、そうだ。朝霞くん。」

「…陽希だ。」

「え、え?」

「名前でよんでくれていい。」

「!は、陽希くん…え、えへへ」

くすぐったそうに笑っている。

なんでこいつが照れてるんだ?

普通呼ばれたほうが照れるんじゃないか?

…まぁいいか。

「それで、なんだ。」

「は、陽希くん。私と約束してほしいの。」

「…何をだ。」

「わ、私の前では笑っててほしいな…」

「…」

「さっき、一瞬笑ったでしょ?陽希くんの笑った時の顔私好きなんだ。ほ、本当はいつも笑っていてほしいけど、大変かもしれないから…」

…確かに笑った顔などあまり人に見せたことはない。

でもこいつになら、心を許せると本能が理解したからさっき不意に笑ってしまったのだろう。

「あぁ。分かった。約束する。いくらなんでもずっとは無理だが、善処はする。」

「あ、ありがとう!は、陽希くんもなにかない?私だけじゃあれだから…」

「俺か…俺は、お前がいてくれればいい。唯一心を開けるお前がいてくれれば。」

「!え、えへへ…わ、分かった!」

そんな約束をした。

あの日はまさかこんな事が起きるとは思ってもいなかった。

約束をした数ヶ月後

彼女は

俺へのメッセージを残して

この世を去った。


『陽希くん。約束まもれなくてごめんね。』



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