寮と学生証
この学園には寮がある。全寮制というわけではないが、セント・リメリア以外からの進学者も多くいるためか、かなり多くの生徒が寮を利用しているらしい。オレも家を借りるのが面倒だったので、とりあえず寮の借用を申請しておいた。
この学園の敷地はとにかく広い。教室棟があるエリアから寮のあるエリアまで、10分ほど歩いた。寮の部屋を貰わないと、ホームレスになってしまう。
寮の建物がいくつかあったが、とりあえず一番新しい建物に入る。入ってすぐに管理人のいる受付があったので話しかける。
「すみません、新入生なのですが、部屋をもらえますか?」
「学生証はありますか?」
学生証? そんなものは貰っていない。
「まだ貰っていないんですが」
「担任の先生が持っていると思うので、貰ってきてください」
「はい、わかりました」
おそらく先生は職員室だろう。職員室は確か教室棟の隣の大きな建物にあった気がする。教室棟のエリアまで戻って、もう1回ここに戻ってこなければならないようだ。歩いていたら約束の時間に間に合わないので走って教室棟のほうへ向かう。
* * *
「失礼します」
職員室を見回し、オーリエとかいう担任の教師を探す。
「オーリエ先生、少しよろしいですか?」
「ん? お前は確か……ローランドだったか。怪我は大丈夫か?」
「ええ、別に問題ありません」
「そうか。しかしバートリー家のやつが相手とは災難だったな」
「ええ、まあ。それより先生、学生証を貰えますか?」
「ああ、そうだった。お前らにはまだ渡してなかったな」
オーリエ先生は引き出しから3枚の学生証を取り出した。
「ほい、これお前の」
その中から1枚の学生証を受け取る。
「それと、あのとき戦ってた女の子2人覚えてるか?」
「ええ、まあ」
リースと、もう1人は確かフランカとかいう名前だったな。
「その2人にこれを渡しておいてくれ」
「ええ? 不味いでしょう。個人情報とか色々ありますし」
「何だ? お前、この2人の個人情報言いふらすつもりか?」
「別にそんな気はないですけど」
「じゃあ問題ないだろ」
「大ありですよ」
「オレはこう見えても忙しいんだ。頼む」
強引にもう2枚の学生証も渡される。
「それじゃ、頼んだ」
「はいはい、わかりました」
まあ、リースのほうはどうにかなるが、問題はもう1人のほうだな。
この後ダッシュで寮へ向かい、学生証を見せ鍵を受け取った。部屋の様子が気になるが、約束の時間に間に合わないので、先に王族の館へ行くことにした。