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初戦闘

 石造りの円形の競技場、周囲には客席があるが今は誰もいない。学生たちは真ん中のフィールドに集合していた。


「よーし、みんな集まったな。今から対戦相手を発表する」


 先生が大きな紙を壁に張り出す。


「私たちの相手はエリックたちのようですね」


 紙を見ると一番上にリース・ローランド VS エリック・フランカと書かれていた。


「マジか」


 相手も順番も最悪だ。エリックに勝ったら目立ってしまう。普通の生徒であれば適当に戦って勝利してもそう問題はないが……


「じゃあ、一番最初の試合の奴ら以外は客席に行け」


 学生たちはフィールドから出ていく。残ったのはオレとリース、さっきのエリックとかいうボンボンにフランカというロングヘアーの少女だ。


「よーし、揃ったな。んじゃあ、適当に距離をとって武器を構えてくれ」


 適当という言葉に引っ掛かりつつも、お互いに反対方向に歩き、3mほど離れた位置で武器を構えた。オレは短杖(ワンド)、リースとフランカは長杖(ロッド)。エリックは剣を腰に下げているが、鞘から抜こうとはしない。


「その剣、使わなくていのか?」


 先生がエリックに尋ねる。


「そこの平民には魔法で十分だ。それに、たとえ練習試合とはいえリース姫に剣を向ける訳にはいかない」


「まあ、好きにすればいい」


「おい平民! 今からお前と遊んでやるよ」


「別にいいが、遊び相手になるかな」


 悪いが遊び相手をするつもりはない。


「お前、さっき言ってたな。水魔法が得意だと」


「盗み聞きとは感心しないな」


「そんなお前に残念なお知らせだ。俺様の得意属性は雷。これが何を意味するかわかるな」


 水属性は雷属性に弱い、セオリーにおいては。


「ひとつ質問していいか?」


「いいだろう」


 エリックは腕を組み、見下すように答える。


「あくまで仮定の話だが、水属性と雷属性、あんたにとってどちらでやられるほうがより嫌だ?」


「そうだな、そんな仮定は万が一にも存在しない。だが、強いて挙げるなら、水属性ほうが嫌だな」


「そうか」


「気は済んだか」


「ああ」


 それはいずれ答えてやるとしよう。お前には釘を刺す必要があるようだからな。


「そこの女、お前はリース姫を丁重にお相手してさしあげろ」


 エリックはフランカに指示をする。


「うちに指図するな」


 向こうのチームワークは最悪のようだ。


「平民、哀れなお前に先制攻撃のチャンスをくれてやる。お前が一手何かするまで俺様は手を出さない」


「ああ、じゃあありがたく貰っておく」


「精々あがくんだな」


「口上はそれくらいでいいか?」


 先生が見かねて口をはさむ。4人の生徒は沈黙を持ってそれに答える。観客の生徒がからの歓声が上がる。リース姫とエリックには多くの声援が集まっているようだ。


「試合の前に、まずは自己紹介がてら1人ずつ名乗ってくれ」


「リース・リメリア・レオーネ・ベリアールです。よろしくお願いいたします」


 緊張した面持ちを見せるが、その美しさは色褪せない。観客からは拍手喝采が起こる。


「オレはローランド・アクギットだ。よろしく頼む」


 オレは適当に名乗る。


「俺様はバートリー家の次男、エリック・バートリー。俺様の強さ、しかとその目で確かめるんだな」


 エリックは余裕の表情で観客へアピールする。


「うちはフランカ・ミリク。よろしく」


 ワインレッドの髪がなびく。


「よーし、4人とも終わったな」


 少しの間沈黙が訪れる。


「それじゃあ、試合開始!」

「ーージオ・マーキング」


 その合図の瞬間、オレはフランカとかいう女に杖を向け呪文を詠唱する。彼女の周りに金属の礫が出現し、制服にまとわりつく。


「なんだこの魔法は、気色悪い」


 フランカは嫌悪感を示すも、反撃はしてこない。


「なるほど、それで俺様の雷魔法を封じようってわけか」


「どういうこと?」


「まとわりついた鉄屑を避雷針代わりにして、俺様に魔法を使わせないようにする。平民にしては頭が回るようだな。いやぁグレイトグレイト」


 エリックは手を叩きながら不敵に笑う。


「だが、その程度の魔法で看破されるほど、バートリーの血は甘くない」


「させるか、メガ・アクア」


 相手が御託を並べている間に、水魔法で一気に攻める。波が2人を襲う。しかし、2人の前で波が止まる。


「何だと」


 オレは思わず言葉を発した。どうやらどちらかに魔法のコントロールを奪われたようだ。


「なんだ、でくの坊かと思ったら、少しはやるじゃないか」


 エリックがフランカを褒める。どうやら犯人はエリックではなく、フランカらしい。

 フランカが杖を掲げる。すると、波がオレ達のほうへ向かってくる。


「よっと、あっぶね」


 オレは跳んで躱すが、リースには当たってしまう。水の渦が全身を包み、一瞬にして氷漬けになってしまった。


「嘘だろ」


 一瞬にしてあの量の水を凍らせられるのか。しかも得意属性が被るとはな。

 

「フレ……」


 氷を解かすために火属性魔法をリースにぶつけるというアイデアが思い浮かぶが、詠唱を途中で止める。


「おい、なんてことするんだ!」


 エリックがフランカに対して怒る。


「これは試合よ」


「試合だとしても、リース姫に手を出すのは許さない。それを防げなかったお前もだ」


 エリックはこちらを睨む。


 「メガライデン・ディスチャージ」


 エリックは両腕を広げ魔法を詠唱する。リースのいる方向以外の全方位に電撃が放たれる。


「武器を使わずにこれほどの魔法とは」


「リース姫のほうにだけ電撃を飛ばさないなんて」


 観客はエリックを称賛する。


「きゃああああ!」


 フランカは電撃により相当苦しんでいるようだ。


 オレは地面に膝をつき、適当に苦しんでいるフリをする。


 さっきのマーキングを無視して複数方向に電撃を放つ。なるほど、確かにこいつのテクニックは素晴らしい。だが、オレにとってはこの程度マッサージ程度にしかならない。


 ここでエリックに反撃して倒すことは簡単だ。しかしここでエリックに勝てば注目を浴び、後々面倒だ。だからオレはここで負ける。


 電撃が止む。リースは氷の彫刻となり。オレとフランカは地面に倒れている。エリックだけがフィールドに立っていた。


「ふっ、平民風情は所詮こんなものか。それよりーー」


 エリックはリース姫に駆け寄る。


「リース姫、大丈夫ですか?」


 他の生徒もリース姫を1番に気にかけているようだった。一応オレとフランカのところにも、人が駆け寄ってくる。とりあえず気絶しているフリをする。


 これでいい。任務を果たすのが最優先だ。



 * * *



「ああ、よく寝た」


 オレはベットから起き上がる。あの後、オレは意識を失っていると思われて医務室に運ばれた。


 保健の先生はオレが大した怪我はしていないことを確認してどこかへ行った。おそらくほかの生徒ところだと思われる。その後オレは暇だったので寝ていた。


「ん、何だこれは?」


 隣の机にオレ宛の封筒が置いてある。


「とりあえず開けてみるか」


 オレはその封筒を開封することにした。




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