突然のクビ宣告
とある学校の敷地内、普通の生徒は立ち入り禁止となっているエリアの一室の前にオレはいた。その部屋に入るため、オレは扉をノックする。
「入れ」
男の声が中から聞こえた。オレは扉を開けて部屋に入る。部屋は薄暗く、中の様子はよくわからない。しかし、目の前に長机と椅子に座る男がいることだけはわかった。
「そろそろ来るころだと思っていた」
男がオレに話しかけてくる。
「あのカフェでラスタードからの手紙を受け取った。それについて聞きたい?」
オレは疑問をその男にぶつける。
「まずは、帝国での諜報活動、ご苦労だった。戻ってきてすぐですまないが、すぐに次のミッションに行ってもらいたい」
少しくらい休暇をくれてもいいんじゃないかと思ったが、心の中にとどめておく。
「別に問題はない。で、内容は?」
「リース姫が魔法学校に入学することは知っているか?」
「ああ、さっき新聞で読んだ」
さっきカフェで読んでいた新聞にも、その記事があった。
「リース姫の入学について、こっちに依頼が来た」
「そうか……で、どっちだ?」
護衛か暗殺の2択が脳裏をよぎる。オレ向きの依頼となれば……後者か。となると非常に面倒だが。
「国王からの直々の依頼だ」
ということは護衛か。世紀の犯罪者にならずに済んでよかった。あの王様は自分の娘の暗殺を依頼するほどイカれたやつじゃないはずだ。
「つまり、オレに姫を護衛しろと?」
一応確認してみる。
「ああ、その通りだ。なんでも帝国からのスパイに狙われているそうだ」
だが、少々疑問が残る。王なら親衛隊をいくらでも動かせるというのに、わざわざギルドの諜報部隊に頼む理由がわからない。だがその点は今考えても仕方がない。
「任務のことは理解した。だが、1つ聞いておきたいことがある」
「なんだ?」
「ここの学籍についてだ」
一応表向きはこの学校、ポルトゥス海洋学院の学生ということになっているのだが、その辺も一応確認しておく。
「ああ、そうだな、表の学籍からは君は抹消される」
「だろうな」
「だが心配するな、裏のリストには残ったままだ。君は重要なエージェントの1人だ」
敵の組織に潜入するときに、意図的にリストから抹消される場合があるが……大体そんな感じのパターンか。
「わかった」
「では、改めて君にミッションを命じる。ローランド・アクギットと名乗りラスタード魔法学園に潜入し、リース姫の護衛をしろ」
「了解。すべておまかせを」
オレはすぐに去ろうとするがーー
「待つんだ、お前にもう1つ言っておきたいことが……」
そう言って男はオレを呼び止めた。