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EE〜革命の風〜  作者: Nicolas kazuhoi
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第5話 「始まりの警音」

その警音は無機質な恐怖を轟かせ、全ての生物は本能的に逃走を図る。

しかしその音は、私に希望を与えたようだ。


警音に道具たちの困惑や焦りが混じり絡まり、響く。

私はその音をかき分け、冷静さを維持する。


道具たちは、避難室であるルームEへ雪崩のように逃げて行く。


彼らも命は惜しいのか。

私はそう思いながら、一人ポツンと椅子に座っていた。



バン!

何者かが扉を勢いよく開けた音がした。


ついに「迎え」が来たか!


しかし私の予想とは裏腹に、目に映ったのは監視官であった。

監視官の手には錆のついた銃があった。


見つかったらまずい気がする。

私はそう思い、機械の下に潜り込みひっそりと身を隠した。


その銃には「1903y」と彫られている。

約30年前の古い火薬式の銃である。


監視官は私には気付いておらず、息を荒げ、血眼になり、銃を構え、出口へと繋がるの扉を凝視する。


トコ  とこ  トコ  とこ  トコ


テンポの遅い足音が聞こえてきた。  

私はこれこそが「迎え」だと確信した。


足音が大きくなっていく度に、緊張も大きくなっていく。

ほんの1分程度なのだろうが、私は1時間や2時間経ったように感じた。


トコ とこ ト……


足音が止まった。


…..


そしてあたりは無音となり、緊張感は今まで以上となった。

監視官の引きがねを引く指が震えていた。


監視官は静止した空気を押し切るように叫んだ!

「つっ立ってないで出てきやがれ!お前の頭を吹き飛ばしやる!」


……


……


……


パァァン!!


深い沈黙に突如銃声が鳴り響く!


バタッ


鈍い人の倒れた音がした。

どちらが撃ったのかは見えない。

しかしその音は、出口へつながる扉から聞こえた。


「……」


「や……」


「やった!」


「やったぞ!!やってやったぞ!ざまあみろ!!」


監視官の緊張は消え、歓喜の声が聞こえてきた。


ヒュンッ


歓喜の声と入れ替わるように、火薬とは違う空気を切るような鋭い音が耳に伝わった。


バタッ


倒れたのは監視官であった。

監視官の黒々とした血が宙を舞い、落ちる。

床には監視官の体が転がり、出口へつながる扉に男の体が挟まっていた。


「おい!大丈夫か!」


男の太く低い声が聞こえてきた。


「チッ、装甲が貫通してやがる。これだから火薬式は困るんだよ」


どうやら監視官に撃たれた男は死んでいたようだ。


トコ とこ トコ とこ

太く低い声の男が近づいてくる音がする。


「ん?誰かいるのか?」


私の存在に気づいたようだ。

男は銃を構え、あたりを見回している。


今不用意に動いたら殺されるかもしれない。

私の心臓の音は機関車の如く鳴り響いていた。


しかし物怖じしても仕方がない。

言わなければ。

ヨシフの言ったように自分を証明しなければ。


モタモタとそう思っていると、右のこめかみに冷たい金属のような感触が伝わった。

恐る恐る目線をやると、そこには外套に身を包んだ太い声の男が立っていた。男の持っている銃の銃口は私のこめかみを指していた。


「おい、お前は誰だ?」


男はゆっくりと言った。


私は両手を挙げ、恐る恐るその男の目を見て言った。


「私はニッコ、ニッコ-ベルクタブだ」


私がそう言うと、男はこめかみから銃口を外した。


「ニッコ?あぁ。君が例の……」


男の声が少し柔らかくなる。


「じゃあ、ついてこい」


男はそう言うと、監視官の入った扉の方へ向かっていった。

その先には道具たちが避難しているルームEがある。


もしや、皆殺しにするつもりか。

止めようとは思ったが、男は銃を持っている。邪魔者だと認知されたら撃ち殺されるかもしれない。


私は、黙って男の背中についていった。


扉を開けると、長い廊下に見えた。

その廊下の壁にも無数の扉が点在する。


奥のルームNから目の前のルームBまである。

男は辺りを見回すと私の方を見た。


「お前の仲間がいる部屋はどれだ?」


私は一瞬ルームEを教えるのを躊躇したが、嘘をついても結局バレる。


「ルームE……」


私はぼそりと言った。


男はルームEへまっすぐと進んだ。

そして扉を開ける。


その扉の先には、壁に背をつけた道具たちがいた。

そして男はそれらに銃口を向け、撃った。


一瞬の迷いもなく。


空気が切れるような音と、道具たちの叫び声が混ざる。

そこに血が絶え間なく跳ね、まさに地獄といった光景だった。


思わず目を瞑る。

しばらくすると叫び声が止み、空気が切れるような音のみになる。

そして、その音も止んだ。


「おい、こいつを連れて行け」


男は相変わらず太く低い声で言ったが、その相手は私ではなかった。

後ろを振り返ると、いつの間にか3人の人間がそこにいた。その中の一人が私に近づき、「来いー」となぜか語尾を伸ばして言った。


声の高さからして女か。


私はその女に従い、ついていった。


いったい何をされるのだろうか?

いったい何者なんだ?

私は殺されるのか?

そういった不安だけが募っていった。


私はうつむきながら女についていき、工場から出て顔をあげると白銀の大地に黒い車があった。

その黒い車はいたるところが擦れていて、ボロボロだった。


「乗りなー」


女は明るい声でやはり語尾を伸ばしてそう言いながら、車のドアを開けた。

しかし私は車には乗らず、立ち止まった。


車に乗る前に聞いておかなければならないことがある。


「質問していいか?」


女は何も言わなかったが、質問した。


「君たちは本当にただの賊なのか?君たちは何者なんだ?」


「……」


女は少し迷った後答えた。


「僕たちはTWR。Those cause Wind of Revolution(革命の風を引き起こす者たち)だよ」


今度は語尾を伸ばさずきっぱりと言った。

〜国際情勢〜

1880y BABY WORKER制度 実施


1913y ニッコ-ベルタルク誕生


1932y 感染病「カミーユ」世界的に流行

J-toltonの工業地帯で工場荒らしが勃発

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