諏訪大社とユダヤ
小さな手が上がった。
「あの・・・少し質問いいですか?」
ラスカル・堀だ。
「どうぞ」
佐藤が促す。
「先ほど、諏訪湖の上に貼った氷の上を神様が歩く御神渡というのがあると聞きましたが、どんな現象なんですか?」
「1月から2月の冬季、諏訪湖全体は凍結するんだ」
「え?諏訪湖全体ですか?北海道でもないのに信じられない」
生徒が応える。
「何言ってるんだ。明治39年、日本で始めてアイススケートのスピード競技が行われたのは諏訪湖なんだよ」
「「へー」」
佐藤の解説が始まる。
「諏訪湖は年によっては氷の厚さが10cm以上になるんだ。零下10℃程度の冷え込みが数日続くと、湖面の氷が大音響と共に山脈のように盛り上がる現象が起こるんだ。これを『御神渡』という」
「なんか凄い現象ですね」
「そして気温の上下で氷が膨張と収縮を繰り返すことによって最高50cm~1mもの高さで湖岸から対岸まで数kmに渡りるまさに『氷の道』ができるんだ」
「さぞかし不思議な光景でしようね」
「この現象には、『諏訪大社上社の男神が下社の女神のもとへと渡る恋の道である』というロマンチックな言い伝えがあり、今も神官が御神渡りかどうかを認定する拝観式が行われる。中居先生、この話もまた何かに似てませんか?」
「ガラリヤ湖のイエスの水上歩行か・・・」
中居が応える。
「中居先生さすがです。聖書にあるイエスの水上歩行ですが、最近の調査ではガラリヤ湖は当時、凍結する時期があったそうです」
「神様が湖を渡る。まるで同じ話だな・・・」
渡辺がつぶやく。