考古学マニア 佐藤
「佐藤さん、考古学に詳しいようですからまずは持論をお聞きしましょうか?」
「ズズズ」
とコーラを飲み干してメグが聞いた。
「わかりました。僕が諏訪大社について今まで調べてきたことをちょっとお伝えしたい。まず日本人はユダヤ人を起源としているように僕は思うんだ」
「いわゆる『日ユ同祖論』だな」
興味があるのか中居がつぶやく。
「そうです。諏訪神社の御神体は背後にある守屋山と言います。またイスラエルの聖地の名前もモリヤです。これは偶然でしょうか?それだけでなく日本の他の神社と違っていろんな珍しいしきたりや祭りがあるんです」
みんな熱心に聞いてくれているので佐藤にエンジンがかかった。
「なるほど、7年に一度行われる御柱祭のことかな?」
中居が促す。
「はい、さすがによくご存知ですね。氏子たちに死人が出るような荒っぽい御柱祭は木に神様が宿る信仰から来ています。一方でユダヤでは木の女神を『アシラ』といいます。『ハシラ』と『アシラ』、似ていませんか?」
「「本当、似てるわね!叔父さん物知りね、見直したわ!」」
あらかた仕事が片付いたのかマイとアミも会話に参加していた。
「さらに、鹿やウサギの首を切って生け贄にする御頭祭という祭りもあります」
首に手を当てて説明する佐藤。
「珍しいお祭りね。たしかに鹿やウサギを生け贄にするような残酷な儀式は日本の慣習とは思えないわね」
摩耶も興味が湧いてきたみたいだ。
「しかも明治以前は、人間の子供が生け贄になり、ナイフを構える神官を別の人が止めて子供の代わりに鹿を備えるというパフォーマンスがあったんです。中居先生、これって何か思い出しませんか?」
「アブラハムと息子のイサクだな」
中居が即答した。
「はい、モリヤの地でアブラハムは息子のイサクを生け贄としてナイフを振り上げたところ、村人が止めて代わりに羊を生け贄にした話です」
「鹿と羊が違うだけで全く同じ話じゃないか!」
他の生徒たちも席を立って会話に参加する。
その中には超自然科学研究部の渡辺、堀、新谷、播磨の顔もあった。
「みんな、今日は考古学好きの佐藤さんが来てくれたから諏訪大社の謎解きができそうだな」
中居が部員たちの顔を見回す。
「「はい、ラッキーです」」
渡辺部長以下の部員たちが返事した。
「さらに、諏訪湖の上に貼った氷の上を神様が歩く御神渡現象があるのです」
佐藤のトークにターボがかかったようだ。
「あの佐藤はんいう人、よう調べてまんな」
「マニアだから目の付け所が違うんだナ」