お化けトンネル
お化けトンネル
影松高校の七不思議の名物「お化けトンネルは」グラウンドのすぐ南隣に位置する。メグたちが食堂を出てわずか1分後にはぽっかりと口を空けたトンネルの入り口に到着していた。
「なんや見るからに古いトンネルでんなー」
「これは幽霊話が出てもおかしくないんだナ」
「何やってんのあんたたち、さっさと入るわよ!」
昭和初期のレトロな雰囲気の狭い階段をずんずんと下りていくメグ、それに従う2人と摩耶とその友人たち。
わずか10数段ほど降りると右に曲がりトンネルの全容が見えた。4車線の国道を横断するので長さは約30mほどであろうか確かに噂どおり狭いし低い。
身長が180cmに近い星や秀は天井に髪の毛が触れるためにすでに45度ほど頭をかしげている。電灯は暗く両側には細い水路が通っていてじめじめした湿気を感じる。
「いいわね」そっと壁に触れるメグが囁く。
「ええ感じやな」
「うんぼくもそう思うんだナ。いい磁場なんだナ」
首をかしげて2人もメグに同意する。
時折すぐ上の国道を車やバスが通るたびに「ゴウン」という振動と通過音がトンネル内に鈍く響くのがさらに不気味さを与える。
メグたちの後に摩耶を先頭とした3人の女生徒たちが続く。
「ねえ摩耶っち、何か感じる?」小動物モードの坂本が摩耶の背後に隠れるようにしてスカートを握りながら聞いた。
「ちょっと待ってね。今集中しているところだから」
両手を開いて目をつぶって上を向いた摩耶が邪魔くさそうに答える。
「別に・・・霊はいないわね。だから彼らの言っていた幽霊話はウソか作り話。ただ・・・」
「ただ?」坂本の目が潤む。
「なんだか空間の歪みみたいなものを感じるの、特にトンネルの真ん中あたり」
「歪みって?」
「うーん、真っ直ぐ歩いて渡れないような雰囲気ね」
「ふーん、私には何も感じないわ!」遠慮なくドシドシ歩く茶畑。
メグたちの後方で会話が続いている。
狭いトンネル内なので内容はよく聞くことができる。
「ほう、摩耶はんよーわかってまんがな」
「現代の人間にしては正確なんだナ」
「まあ私の勾玉の秘密も一発で見抜いた彼女よ。これは期待してよさそうね」
トンネルを渡りきって壁をくまなく触れて調査完了といった顔をした摩耶に
「さー摩耶ちゃん!結論お願い!」
メグの大きな声が狭いトンネル内に響く。
「そうね表現の仕方が難しいけどこのトンネルの中間地点だけが他の地点と違うエネルギーみたいなものを感じるの」
「大正解!ここは磁場を放出している場所なの。本当はこういう場所には神社を建てるのよ」
「え、神社を?」
「そう。詳しくは上に出てコーヒーでも飲みながら話そうか?」
トンネルを渡りきって階段を上がったところに「ウイングバーガー」というこじんまりとしたハンバーガー屋さんがある。
影松高校の生徒の御用達だ。
「カランコローン」メグたちがドアを開けると来客用のベルが鳴る。
「いらっしゃーい!あ、影松高校さんね。いつもありがとうね。あ、そのバッジカラーは新入生さんね、今後ともご贔屓にお願いねー」
影松高校は襟章の色で学年がわかるようになっている。今年の1年生カラーは赤であるのを知っている女性店長は愛想よく笑った。
「あ、どうも。アイスコーヒー6つください!」
「はーい!」
テーブルに腰掛けた6人の前にアイスコーヒーが並んだ。
「あ、神社の説明の続きね。お願い。」摩耶が促す。
「そう磁場と神社の関係・・・かな」坂本も興味深々で身を乗り出す。
「超古代の人たちは地球からのエネルギーの放出する場所が目で見えたの。
そういうエネルギーを発する場所は『神聖な場所』として神社を作って祀ったのよ」
2人組みはアイスコーヒーを掻きませながらひやひやして聞いている。
「全部バラすのかナ?」
「ああ、ヤツならやりよるで」
「え、ということはこの辺りにある住吉神社や弓弦羽神社、綱敷神社もエネルギーがある場所なの?」
「大有りよ!私が選んだんだから太鼓判を押すわ!」
「え、メグが?」
「そう、神功皇后の時にね。ただし綱敷神社は別、あれは菅原道真が京都から太宰府に左遷される途中にこの地に立ち寄って選んだのよ。ちょっとあんたたち菅原道真やった?」
「やってまへん!」
「ぼくはそもそも理系なんだナ」
2人はブルブルと首を横に振る。
「本当にあなたたち3人は聞いてて面白いわね。将来は吉本に行ったら?余裕でM1チャンピオン狙えるわよ!」笑いながら茶畑が茶化す。
「神社がパワースポットというのはわかったけどお寺はどうなの?」
「あ、神社とお寺は時代が別なの。あれは7世紀に入って日本に仏教が入ってからのものだからそんなに磁場エネルギーのことを考えずに建てたの。そんなこと言い出したら808も寺がある京都の街なんかエネルギーだらけでしょう?ただし・・・」
「ただし?」
「高野山や比叡山延暦寺などのように高僧が建てた有名なお寺は磁場のエネルギーのことをちゃんと考えて建てられたケースもたまにあるのよ」
「へーなんでも知ってるのねメグは!」
「はい!何でも聞きなさい!」
このやりとりを聞いていた摩耶が言った
「メグと秀君と星君のことがもっと知りたいの。
私の入るクラブに一緒に入らない?」
「摩耶はんは入るクラブ決まったんか?」
「ええ私は超自然科学研究部に決めたわ」