野原証券 神戸支店
神戸支店 支店長室
10:00
「新谷君、気は確かか?頭は大丈夫か?」
「はい、気は確かです。今日から、いえ今からすぐに「物流」と「電鉄」、「船舶」「空運」「旅行」すべての株を全店で売りに出してください。すでに私の神戸支店の顧客は部下に命令して全部売らせました」
「あのな、君は自分が言ってることがわかっているのか?売りに行こうとしてる上場企業の中には我が社が幹事をやっている会社もあるんだぞ。それを理由もなく真っ向から大量に売り行くと言う事は、今まで培った信用に傷がつことになることぐらい君もわかってるはずだ」
「専務、事はそんな小さな話ではないんです。今から世の中の物流システムが根底から覆る時代になるんです。ですから私の言うことを信じて全て売りに転じてください。仮に幹事証券で売れなければ子会社の証券会社に売らせましょう!」
「君は自分の立場を理解してるのか?神戸支店長という立場はゆくゆくは取締役になり、場合によってはわが社の経営を舵取りをする立場になる人間のはずだ」
「ですからそのわが社の舵取りを今やってるんです。こうやって話してる時間がもったいないです。早く全店に売りの大号令をかけてください」
「わかった、そこまで言う理由はなんだ?」
「私は見たんだ。息子の学友が実際に瞬間移動をする光景を」
「夢でも見たのではないか?」
「夢ではありません。彼女と一緒に何人もの人間が瞬間移動したのです」
「本当かそれは?」
「たしかユーチューバーも来ていましたからネットでご確認下さい。何より現場にいたのが私なので他社よりも優位にあります!早く売ってください。一刻を争います」
「ちょっと待て、今ユーチューブを見ているところだ・・・本当だ、君が写っているな。何?トンネル内を女子高生が歩いて消えた・・・そしてまた出現した」
「消えたんではありません。彼女たちは5キロほど離れた山麓に瞬間移動したのです。これでわかってもらえましたか?」
「わかった!すぐに全店に売りの指令を出す。貴重な情報ありがとう」
電話を置いた野原証券本社の専務取締役は150店舗ある全国の支店に「売り」の大号令をかけた。
「全店の営業マンに次ぐ!理由は聞かずに今から顧客の保有する『陸運』『海運』『空運』『電鉄』『旅行』関連の全ての株を直ちに売却するように。売値は考えるな!全て『成行売り』だ!」
こんな大号令は100年の創業を誇る野原証券でも初めての出来事であった。




