メグの嬉しい誤算
メグの読みは甘かった。
昨日、部員のみんなに「最低10人に伝えてね」と言ったのがおそらく先輩たちはSNSや各自いろいろな方法を使ってかなりの人数に拡散したのであろう。
デジタルによる拡散の効果をメグは過小評価していた。
明朝、メグの登校時間にはすでにお化けトンネルは入りきれないほどの黒山の人で賑わっていた。
「ほえー、こりゃまた凄い人数が集まってまんな」
「ほんとなんだナ。今の時代のデジタル拡散は思いもよらないほどの効果があるんだナ」
メグの後から追いついた2人がトンネルに入り切れない黒山の人だかりを見て話しかけた。
「そうね、この分だと私たちの計画はもっと前倒しにできるかもしれないよね。これはむしろうれしい誤算よ」
トンネル出口にある「ウイング」もトンネルに入れない人のための待機場所として超満員であった。
「この様子やと、マイはんも大喜びやろな。商売繁盛でええこっちゃ」
「間違いなく僕たちがウイングの売り上げに貢献しているんだナ」
いつもは「不気味だから」といってそこを通らない通学生たちも今朝は敢えてお化けトンネルを通って写真や動画などを撮って彼らのSNSに掲載していた。
「どんどん拡散していくわね。嬉しい限りだわ」
そんな会話してる途中に黒山の人だかりから歓声が上がった。
「えー、これで奇跡の御影国道2号線トンネルからのライブを終了します。以上タマ袋でした!」
「おー、タマ袋だ!」
「何?本当か?」
「本人だ、間違いない!」
「一緒に写真撮ってもらおう」
しかも「タマ袋」などというカリスマYou tuberなどの登場も全くの計算外であった。
「あのタマ袋って有名人でっか?」
秀がスマホを構えるクラスメートに尋ねた。
「何言ってるの!秀くん。あんた、タマ袋知らないの?」
「けったいな名前やなー、タマ袋やて。他にええ名前思いつかへんかったんかいな?」
「ぼくは男らしくていい名前だと思うんだナ」
おそらく1日目から軽く100万人以上の日本人がこの事実を知ったことであろう。
「さぁ私たちは授業にいきましょう。次のステージが待っているわ」
※
物理の時間
「さぁ勉強始めまっせー、今朝はなんやら2号線のトンネルのほうが騒がしいようやけどが何やおましたんか?」
相変わらずでかいガタイのジャミラのような高井先生が教室のドアを潜るように入ってきた。
「はい、なんか瞬間移送装置ができたみたいですよ」
スマホを見せながら桐山が答えた。
「瞬間移送?そんなアホな装置なんかあるわけおまへん、ほな始めまっせ」
「あ、タマ袋のユーチューブで摩耶ちゃんが出てる」
「本当だ」
「マシか!」
「そう言えば今日はまだ来てないな」
教室内が騒がしい。
「はいはい!スマホしもうて、授業に集中してや!今日の授業やけど、前回時間切れになった保倉はんが言うた重力制御の話に興味がおます。保倉はんちょっと先週の続きを説明してくれへんか!」
「エラい気に入られようやな。ホンマはワイが大阪弁でかましたいところやけど星に任すわ」
秀が囃す。
「人類への最終講義ね。星頑張って!」
メグが星に励ます。




