中居剛三
同じく新谷が父親と相談しているころ。
「お父さん、申し訳ありません。少し話しがあります」
神戸市北区の自宅から実家の神楽寺に帰った中居は住職の父親に話しかけた。
「ああ、お前か。そろそろ来ると思っていたよ」
木魚を叩くのを辞めて剛三は振り返った。
「そうですね、流石はお父さんですね。全てお見通しですか・・・」
「例の3人の新入生の話じやろう?わかっておったわい。そろそろ6500年が経つからのう・・・」
まだ一度も3人のことは話をしていないにもかかわらず中居の父親の剛三はそう言い切った。
「はい、信じられないことですが彼らの正体はお父さんが昔から言ってたカタカムナ人で現代人に瞬間移送を教えに来ました」
「そうか・・・もうそろそろ物質文明の終わりの時期だ。彼らが言うように精神文明が始まる用意をしていたほうがいいな」
「それでは、お父さんは全部わかってたんですが?」
「当たり前じゃ。ワシはカタカムナの末裔アシアトウアンの直系だ。丁重に彼らを向かえ入れなければならない」
「彼らは現在、高校生ですがお父さんがそこまでへり下らないといけない連中なんですか?」
遠くの森でふくろうであろうか、「ホウホウ」という声が聞こえる。
「当たり前だ!久しぶりに全知全能の神界が来られたのだぞ。この意味がお前にわかるか?」
ゆっくり剛三は腰を上げた。
「全知全能の神・・・わかりません」
「今の日本を取り巻く社会は未だに不動産や金などの物質に目が向いている。その時代は長らく続いたが今がその時代の終わりじゃ」
「という事は、お父さんはあの3人を真摯な気持ちで迎え入れるつもりですか?」
「当たり前じゃ。彼らが来たと言う事は宇宙の意志で今までの価値観が全部変化すると言うことじや」
「そんな・・・」
「おそらく彼らもそろそろ近日中にワシと会うことをイメージしている。それはこの数日の波動でお互いわかっておる」
「そうなんですか?」
「だからお前はワシの息子で彼らの高校の教師をしている。これは偶然ではなく全て必然なんじや」
「わかりました。それでは明日の夕方、時間をとって下さい。彼らとミーティングの設定をしたいと思います」
「ミーティングのう・・・誠に恐れ多いことじゃ。ワシにとってはな、ただ長い期間待った甲斐があったと言うのが正直な気持ちじゃ」
「お父さんがそこまで言うのは初めて聞きました」
「ただし今からは我々は茨の道だぞ」
「茨とは?」
「茨とは今の現政府や企業がほっとかないと言う事じや」
「それは、わかります」
「カタカムナの彼らにとってはこんな事は過去何回も経験したことであろうから多分大した事ではないと思う。おそらくいつも100年から200年の計で物事を考えているからな」
「わかりました明後日の放課後5時に影松高校にきていていただけませんか?正式に彼らを紹介します」
「そうか・・・ワシが生まれて初めて緊張というものを経験するかもしれんな」
「お父さんがそこまで言う相手なんですか?」
「舐めたらいかんぞ。当たり前じゃ、しかし明日はワシにとっては非常に嬉しい会合になると思う」
「わかりました」
中居はそこで退席をした。