素粒子 理論
放課後いつもの部室にて。
階段を上がって3人組と摩耶がドアを開けた。
「ガラガラガラッ」
そこに4人を待っていたかのようにゴジラ先輩を中心とした4人の先輩が立ちはだかる。
「メグ!今日は瞬間物質移送が体験できるんだろう?」
と鼻息荒く迫ってきた。
「俺なんて昨日から興奮して寝られなかったぜ」
新谷が興奮を隠し切れずにはしゃぐ。
頭がピカピカしている。
「はい、ゴジラ先輩、新谷先輩大丈夫よ。約束はちゃんと守りますから」
「あんたたち、早速先輩たちを渦森山までご案内してきて」
振り返ってめぐは胸ポケットから水晶を取り出して秀に手渡した。
「了解なんだナ」
「よっしゃ!先輩方、ほな行きまっか?」
その言葉にゾロゾロと階段を降りて秀と星についていく4人の先輩たち。
「おまえたち、本当に瞬間移送できんのかよー?」
「騙したら承知しないぞー」
先輩たちの大きな声が次第に遠ざかりいきなり部室内が静かになった。
時折ブラスバンド部の音程を外したトロンボーンの音が聞こえる。
「さあ摩耶ちゃん、二人っきりになったね。今日から摩耶ちゃんには特別に色々な事を教えたいの」
「色々な事って?」
「まず霊能力者のあなたに一番最初にミスマルノタマをまとって欲しいの。多分あなただったら簡単にできると思うわ」
「ミスマルノタマをまとったら私も瞬間移動装置を使えるのかしら」
「そうよ、あなたは特に家が渦森山だからもうこれからはバスに乗って通う必要はなくなるわよ。よかったわね」
「ホント?それは便利だわ。頑張ってミスマルノタマを纏えるように練習するわ」
「ガラッ」っと戸が開いて中井先生が部室に入ってきた。
「あーやってるようだね。今先輩たちと下ですれ違ったところだ。例のお化けトンネル
発 渦森山行きだな?」
「あ、先生。是非、先生にもミスマルノタマをまとって欲しいのですが」
「ミスマルノタマは例の移送に必要な起動装置だな」
「そうよ、お二人が現代において初めて移送装置を使える人になってほしいの」
「しかしそう簡単にできるものなのか?」
「お二人の考え方と意識次第です」
「私は頑張るわ!だから最後まで教えてね」
「俺も子供のころから親父のような超能力者になりたいと思っていたんだ」
「了解です!では最初から話をします」
とメグはホワイトボードの前に立ってペンを取った。
「物質と精神」
と大きく書いた。
「幸い今は科学が発達して量子力学と言う分野にやっとメスが入ったわ」
「量子力学?確かに聞いたことある言葉だわ」
「いい?ここに書いた物質と精神っていうのは本来は水と油のように決して交わることがなかった分野なの。分かりやすく言うと科学と宗教の関係ね」
「そうだな確かに科学と宗教っていうのは全く逆の分野だな。対立することはあっても交わることはない」
「いい?物質を細かく刻んでいけば最後には原子とその周りを回る電子に行き着くわよね」
メグが原子の周りを回る電子の絵を描いた。
「そのとおりだ」
「物理で習ったわ」
「でもその原子をさらに細かく切り刻んだらどうなるかしら?」
「そんなことができるの?」
「素粒子・・・か?」
「そう、それが素粒子という概念ね。この素粒子というのは原子の元になってるいるのですが実はその一粒一粒が精神を持っています」
「何?物質が精神を持っている?」
「まさか?」
「本当です。例えばこういう話を聞いたことありませんか?」
「2つのスリットを通す素粒子実験」
とメグはさらにペンで書いた。
「一枚の紙に1つのスリットを入れます。その用紙を真ん中に置いて素粒子を当てます。すると後ろのスクリーンには1つのスリットの影ができます。これはイメージ出来るわね」
「そうだな穴の空いた紙に光を当てて後ろのスクリーンをイメージすればいいんだな」
「そうです。でも今度は別の紙に2つのスリットを開けて同じ実験をしたらどうなるか分かりますか?」
「当然2つの影が後ろのスクリーンできるのではないのか?」
「私もそう思うわ」
「ね、そう思うでしょ?しかし意に反して素粒子を2つのスリットに当てた場合は後ろのスクリーンに映るのは2本の影ではなくなんとデタラメな波状の模様が出来上がるのよ」
「なんでだ?普通は2本のスリットが映るはずだろうが」
「おかしいわね」
「しかも、しかもよ。この実験を人間が観察したらどういうわけか素粒子は反応して慌てて2本のスリットに戻るのよ。あたかも自分が誰かに見られているのを意識したように」
「そんなばかなことがあるのか?」
「まるで生きてるみたいね」
「そう、この実験からわかるように素粒子は意思を持ってるの。結論から言うとこの世の物質は全部原子核と電子でできてます。さらにその原子核とは意思を持った素粒子の集まりであると考えることができます」
「なるほどな・・・」
「なんとなく理解するわ」
「これが私たちカタカムナ文明の基本的な考え方です。これをまず理解してください!」