播磨の提案
「なるほど、所有の概念を無くせば良いのね」
ラスカル・堀がつぶやく。
「俺も自慢のイチモツを全校女子生徒と共有しようかな?」
渡辺が笑いながら股間を指差す。
「まーた!渡辺部長、品格が下がります!」
バンと渡辺の背中を叩く堀。
品の無い部長を持つと副部長も大変だ。
「しかし今の世の中は金の亡者が多過ぎるよな。俺の親父の証券会社もこのたびの株の大暴落で大儲けしたと騒いでいる」
頭を光らせながら新谷が続けた。
「そうだな、一方で大暴落で損をしたと投資家が騒いでいるな」
佐藤が捕捉する。
「でも共有なら損も得も無いのよ。そもそもがゼロサムなんだから」
「なんか考えさせられるな。我々教師も、生徒たちをいい大学に行かせていい企業に就職させて、結局は儲けて『富の占有』を強要しているようなものだからな」
腕を組んで中居がつぶやく。
「あのー、摩耶さん。少しお願いがあるんだけど・・・いい儲け話だ」
ネズミ男が摩耶の席に近づいた。
このタイミングで「儲け話」をする神経がよくわからない。
「何?播磨先輩」
めんどくさそうに振り向く摩耶。
「前回言ってた、うちの会社の新企画で『出雲ツアー』っていうのがあったの覚えているよな」
「ええ、覚えているわ」
「実は企画課長の願望で、『2泊3日鹿島・伊勢・出雲・霧島神社お参りツアー』を企画したんだ。この4箇所の瞬間移動は可能かな?」
「4つとも相当離れてるんだナ」
「そうなんだ。実は企画課長が言うには長い距離を移動したほうが儲かる・・いやお客様がたいそう喜ぶらしい」
「せやけど、なんや忙しい旅になりそうでんな」
「鹿島神社は茨城県、伊勢神社は三重県、出雲大社は島根県、霧島神社は宮崎県だぞ。そんな無茶な行程が2泊3日で組めるのか?」
ホテル業務が本業の佐藤が驚く。
「だけど、いかに遠距離でも瞬間移動なので一瞬で行けるから大丈夫だよな」
播磨が念を押すように聞いた。
「メグちゃん大丈夫?」
不安そうにメグに問う摩耶。
「星、今言った4箇所行きの水晶はある?」
「大丈夫。全部メジャーな神社だから当然あるんだナ」
「じゃあ大丈夫よ。摩耶ちゃん。何人のツアーなの?」
「50名のツアーだ。出発は来週の土曜日の8:00だけれど、なんとか頼むよ」
手を合わせて哀願するネズミ。
「摩耶ちゃん、播磨先輩を助けると思っていってらっしゃいよ。いい宣伝にもなるし」
「了解。播磨先輩、そういうことでOKよ」
「よかった。これで親父にいい顔ができる。ありがとう摩耶さん、恩にきる」
土下座せんばかりのネズミは発展して貧乏神に変化した。
「でもね、播磨先輩。先輩も私のミスマルノタマ教室に参加しているのだから早くまとえるようになってね。私が手伝うのは、あくまでもそれまでのつなぎですからね」
「わかりました。摩耶大先生」
「さぁ、みんな今日は長い時間話したからそろそろお開きにしよう」
中居が提案した。
「そうね、時間も遅いから皆さんの家の近くの神社を教えて。秀と星が皆さんを瞬間移動で送るから」
「え?ワイが?」
「人使いが荒いんだナ」
「マイさんアミさんはどちらだったっけ」
「三宮神社よ。佐藤叔父さんも一緒に帰りましょうね」
「はい、じゃあ秀。三宮神社行きね。すぐに帰ってくるのよ、後がつかえてるから」
「へいへい」
このようにして各自が解散となった。