表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想で小説を書く妄想  作者: うぉーたーめろン
7/20

八月(1) 誰が為にキミは泣く(前)

今回は短くなってしまいました。

蒸し暑い空気に目が覚める。

枕元の時計に目を向ける。一〇時二四分。良く寝たな。

堕落した自分の生活への呆れと、長時間寝たことへの謎の達成感とを同時に抱く。

二度寝しようかと試みたが、暑さに邪魔されて全然リラックスできない。

仕方なくベッドから起き上がると、顔を洗ってパンを囓る。熱くなった身体に冷たい牛乳が心地よい。


一一時三三分。自室のエアコンを点け、自分の机の前の椅子に腰掛ける。

……さて、何をしようか。

先週、田村たちと遊んでからというものの、予定は一切ない。暇だ。

カレンダーを見つめ、夏休みの残り日数を数えてみる。

どうしたものか。とりあえず、読みかけの小説を開いて、続きを読み始めた。


ヂヂヂヂヂヂヂ……。

窓を閉め切った部屋の中にもセミの声が響く。

セミ、セミ、セミ……。

――セミといえば、あの大人のセミは二~三週間しか生きられず儚いというイメージを持たれやすいが、実際は幼虫の時期に五年も十年も生きるので長寿だ、と聞いたことがある。

つまり人とは、自分の目に見える部分ででしか判断出来ず、土の中で目に見えない部分は考慮しない、そういう生き物なんだ。

というようなことを、セミを題材に書けば良い評価を貰えたりしないだろうか。

文化祭の部誌に載せて、それがどっかの編集者の目にとまって。学校に「これを書いたのは誰ですか」と連絡があって、部活中に顧問の先生が作者を尋ねに来て「あっ、それ僕です」と答えて――

そう上手くはいかない。そうは甘くない。分かっているんだ。けれど。


読んでいる本を閉じて、椅子から立ち上がり、窓を開ける。ムッとする暑気が僕に襲いかかってきた。

ちょっと後悔しながらも窓から顔を出すと、セミの鳴き声の立体音響が耳に入る。いや、立体音響という言葉は不適切かもしれないが、とにかく四方八方から、立体的に、セミの鳴き声が響いてきた。

騒がしい。だけども不快ではない。変わった音だ。

何のためにこんな大声を出すのか、不思議に思う。

もちろん図鑑的な意味では知っている。オスが鳴くのはメスをおびき寄せるためだ。

オスはメスをおびき寄せて交尾して子孫を後の世に残す、そのために鳴くんだ。

……後の世に残す、か。

それってそんなに大声を出したりするほどのものなのだろうか。


暑さで集中できない意識にセミの鳴き声が混入してくる。

まあ、厄介なことを考えるのはひとまずよそう。いろいろと考える前に、とりあえず夏の宿題を片付けてしまおう。

再び窓を閉め、机の前に戻る。カバンの中から夏の宿題の問題集とノートを取り出す。あまりの量におののきながらも、僕は夏休みの課題を片付けるべく立ち向かい始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ