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妄想で小説を書く妄想  作者: うぉーたーめろン
16/20

九月(8) 祭りの後(1)

教室内に、動揺が走る。

野口さんが転校……?

そんな中、川崎先生が続ける。

「引っ越すのは九月末とのことです。あまり時間もありませんが、野口さんにメールでも連絡入れてあげると、喜ぶと思います」

そう言って、朝のホームルームは波乱のうちに終わった。

先生が出て行った後、みんなの視線が須山さんに集まったのだろうか。

「しっ、知らないよ、そんなの」

と否定する須山さんの声が広がる。

僕は、前から回ってきた原稿用紙を机の上に広げたまま、うつむいて黙り込んでいた。


こんな文化祭で、一体、何を書けって言うんだ。

女子達の糾弾?いやそれはそれでよろしくない。でも他に書くことなんて。

僕は授業中も、何時間も悩んでいた。

文化祭明けということに配慮してか、先生は文化祭前の復習から授業を始める。

退屈な僕は、いつもの癖で外を眺めた。

しかし空席を通じて外を眺められるという事実が、僕の心を悲しくさせた。


「どーしたんだよ、野田あ。浮かない顔して。文化祭ロスか?」

昼休み、田村。小宅たちが話しかけてくる。彼らは僕の隣の空席に寄りかかる。

「ま、大方野口さんの件だろ」

「……野口さんの件っちゃそうだな。……もっといろいろと語ってほしかった」

「そうなのか?」

「まあ、文芸部の中でもかなり上の方、センスある人だったし」

「ま、確かに突然の別れだもんな。せめてもう一度、何か伝えられる機会でもあればいいんだろうけど」

「…………」

「書かないの?」

僕は突然、顔を隣の席の方に向ける。野口さんの声が聞こえた気がして。

でもそこには、少し驚いた小宅と田村の顔があるだけだった。

「ど、どうした!?」

「い、いや……なんでもない」

「ま、いいや。ところでさあ、昨日ゲームやってたんだけど」

「突然話が変わるな、田村」

「まあいいよ」

そうして僕らはいつも通り、くだらない話をして昼休みを終えた。


「朝言い忘れましたが、文化祭の作文の締切りは今月いっぱいです。忘れないうちに書いて下さい」

川崎先生はそう言い残して、ホームルームは終わった。

締切りは今月いっぱいか。今月いっぱい…………ん?

僕はカバンを持って、教室の外へ川崎先生を追いかける。

「先生!文集の期限、もう少し前にできませんか!?」

「え……遅くしてくれ、じゃなくて前倒ししてくれなんて、どうした野田?」

困惑気味に、先生は答える。

「いえ……その……。……せめてこのクラスの分だけでも、野口さんに渡しておきたいなと思いまして。僕たちの、クラスメイトですから」

「……なるほど。わかった。じゃあ明日みんなに伝えよう」

いいこと考えたな、と先生はニヤリと笑う。

「はい!よろしくお願いします」

僕は深々と頭を下げると、そのまま部活の活動部屋へと歩いていった。

……とはいったものの、何を書けば良いんだろう??

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