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♯13 半端者


 ヒビキは自分の家まで歩かされた。イーグル号はイーグルミーティアの中にある。いつも通る坂道が妙に辛く感じた。背筋に当たる銃口の冷たさのせいだろう。ヨシノは兵隊によって治療を受けていた。銃弾が貫通しているかどうかを調べ、貫通していたので包帯を巻いただけの大雑把なものだったことを思い出す。まるで人形にでも触れているかのような冷淡さだった。

 家に着くと、道場があったはずの場所から天に向かって何かが伸びていることに気づいた。それは鉄骨のように見えた。学校で読んだ本の中に会った電車のレールのようにも見える。斜めに突き上がったレールが道場を根こそぎ剥ぎ取っていた。幸いにして母屋は残っていたのでヒビキは母屋の居間に通された。ちゃぶ台がぽつりと中央にあり、兵隊に促されてヒビキは座った。酷く居心地が悪かった。

「あんたら、何なんだ?」

 ヒビキは訊いていた。無知は罪だとあの女は言っていた。ならば知ればどうにかなるのだろうか。隕石獣のことも、自分たちのことも、突然この村を占拠した連中の思惑も。ヒビキの問いかけに、兵隊たちは顔を見合わせた。

 嘲るような笑い声を上げている。ヒビキは頭の後ろに手を組みながら、「答えろよ」と強い口調で言った。

 兵隊たちの笑い声がやみ、代わりのように水を打ったような静寂が場を包んだ。兵隊の一人がヒビキへと歩み寄って、「一つ教えてやる」と言った。ヒビキが顔を向けると、突然靴底が視界に大写しになった。

 直後にはヒビキの頭は兵隊に踏みつけられていた。それを見たもう一人の兵隊が、「やりすぎるなよ」と宥める。しかし、明らかに状況を楽しんでいる声だった。

「お前ら侵略者が人間と同じ扱いを受けると思うな。こんな村でM2も知らずに暮らしやがって。さぞいい気分だろうなぁ」

 靴底から醜悪な臭いが立ち上る。頭を踏み躙られヒビキは思考が白熱化していくのを感じた。奥歯を噛んで必死に怒りを押し留める。

「……てめぇら、何なんだよ。侵略者はそっちだろうが」

「あーあ、分かってないでやんの」

 兵隊がやれやれとでも言うように肩を竦めた。他の兵隊たちを目配せし合い、笑い声を上げる。耳障りな声だった。

「自分たちがロードって言う異星人だって理解してないのかね。俺らとは違うだろ、ここだよ、ここ」

 兵隊はガスマスクを外して指先で額を示す。ヒビキは刺青のことを言われているのだと気づいた。

「これは、じィちゃんがあって当たり前だって」

「そんなわけないだろうが。人間モドキなんだよ、お前ら」

 ヒビキの頭がボールのように蹴りつけられる。畳の上を転がり、兵隊たちが肩を揺らした。ヒビキは頭の後ろで組んでいた手を解いた。

「てめぇら!」

「おっと、動くなよ」

 アサルトライフルの銃口が眼前に掲げられる。ヒビキは拳を止めた。自分が拳を放つより先に、銃弾が放たれることは直感で分かった。

 歯噛みして拳を震わせていると、銃身で頭を殴りつけられた。畳に叩きつけられる。ヒビキが立ち上がる前に、こめかみに銃口が突きつけられた。

「こいつ殺せばどうなる?」

 兵隊たちが笑い声を上げる。相乗した笑い声が鼓膜を掻き毟られているかのようだった。

「俺ら殺人か? でも、異星人殺したんだから英雄だよな」

「そうそう、英雄。こいつの父親と同じようにな」

「親父、だと……?」

 ヒビキが発した声に兵隊たちが顔を見合わせた後、「知らないのか」と尋ねた。

「お前の父親、諸星ダンは俺たち人類の英雄なんだよ。最初のM2襲来時にミーティアを動かした奇跡の男さ」

 初めて聞く武勇伝に、ヒビキは目を慄かせた。そんなことは祖父から一度も聞いていなかった。

「親父が、英雄……。人類の……」

「そ。でもお前は違う」

 兵隊が額を指差す。

「その刺青はロードの証。お前はロードだ。崇高な父親を持ちながら、可哀想な奴だよ」

 ヒビキは先ほどイーグルミーティアの膜の内側にあった写真を思い返す。咄嗟にポケットに入れてしまっていたが、あれはまさか――。

 その思考を遮るように、「何をやっている!」と怒声が飛んだ。その声に兵隊たちが即座に振り返る。ヒビキも目を向けた。そこには先ほどの女と見知った顔があった。

「じィちゃん」

 ヒビキが呼ぶと祖父は少しだけ顔を伏せたように見えた。女が手を振り翳して兵隊たちを散らせる。

「このロードは傷つけるな。唯一ミーティアを動かせるロードだぞ」

 女の声に兵隊たちは敬礼をして佇まいを正した。

「承知しております。ただ、あまりにも何も分かっていない様子なので教育してやっていただけです」

「教育だと。そんなものは必要ない。ロードの長を連れてきた。これから彼は否応なく知ることになる」

 縁側から女と祖父が踏み込んでくる。女は靴を脱いだ。祖父も同様だった。女はヒビキを見やり、「少し悪いことをした」と言った。

「だが、謝罪はしない。彼らの心境も私には分かるからだ」

 ヒビキは意味も分からずに女の顔を見ていると、肩を掴まれた。祖父だった。厳しい眼差しがヒビキをいつもの状態に戻した。昂っていた神経が凪いでいく。

「じィ、ちゃん」

「ヒビキ。すまない」

「何で謝るんだよ」

「最初に謝らなくては、ワシはお前に顔向けできん」

 女が兵隊たちを外へと追い出し、祖父の隣に座った。ちゃぶ台を挟んで、女と祖父の視線がヒビキを見やる。ヒビキは少し小さくなる心地がした。

 何が行われるのだろう。ヒビキは先に口火を切ることにした。

「なぁ、じィちゃん。あれ、何なんだ。イーグルミーティアって俺には理解できた。どうしてだか分からない。イーグル号が変形したのはどうしてだ? 宇宙に出てわけ分かんないままに隕石獣とかいう化け物と戦わされた。どういうことなんだ? じィちゃん、答えてくれよ」

 言い出すと収まりのつかない疑問ばかりだった。祖父は瞑目した後、「因縁だ」と呟いた。

「因縁?」

「これはお前の親父と我々の一族の因縁なのだ。ヒビキ、もう察しているかもしれないが、ワシらはこの惑星の人間ではない」

 どくん、と鼓動が跳ねたのを感じた。兵隊たちが言っていた。ロードだと。異星人だと。兵隊たちに言われる分には全く動揺しなかったのに、祖父の口から言われると身体が瓦解しそうなほどの衝撃に襲われた。

「ワシらは遠い外宇宙からやってきた人間に似た生命体、ロードだ。ロードは額に刺青がある」

 祖父が額を示す。ヒビキは覚えず額に手をやっていた。逆三角形の刺青。それこそが異星人の証だったとでもいうのか。

「ロードは今から四十年前。地球へと第一種接近遭遇を行った」

 女が補足する。ヒビキは、「あんたは」と口にしていた。

「失礼。まだ名乗っていなかったな。私は日本政府軍直属R機関の諜報員、天月レイカ少尉だ」

「天月……」とヒビキはその名を口にした。レイカは一瞬眉をひそめたが、すぐに平静の表情を取り戻した。

「ロードは四十年前に日本政府へとまず亡命をした。自分たちの母星は壊滅し、移住先の惑星を探していると。世界が躍起になってロードの亡命先を探した。彼らは長命ゆえに繁殖力が低く、ほとんど絶対数もなかったためにどこかの国の一機関がかくまうという結論に達しかけた。当然、その案件には大国であるアメリカが幅を利かせようとしていたのだが……」

 レイカが言葉を濁す。そこから先を祖父が引き継いだ。

「アメリカに亡命先が決まる直前、我々は隠していた情報を開示した。我々ロードには天敵がいたのだ」

「天敵、だって?」

 ヒビキが聞き返すとレイカが頷いた。

「それが隕石獣、今はM2と呼ばれている。貴様が倒した化け物だ」

 ヒビキはイーグルミーティアの膜の中から見た隕石獣の赤い眼を思い出す。今にして思えば、あれは自分の眼にそっくりだった。

 レイカは黒色の虹彩を向けてヒビキへと言葉を発する。

「M2はロードに引かれる。これは食物連鎖と同じだ。M2はロードを目印にして、惑星を襲い、残骸を捕食する生命体だ」

 ヒビキは祖父へと目を向けた。俄かには信じられない話だった。しかし、祖父は訂正の言葉を挟もうともしない。

「ヒビキ。隕石獣はかつて、ワシらの母なる星を破壊した。ワシらの同類も多くの犠牲を払い、外宇宙へと進出することを余儀なくされた。長い旅の末に、ようやく見つけた母星と同じ環境を持っていたのが、この地球だったのだ」

「じィちゃん、俺らが異星人だって言うのか」

 ヒビキは思わず立ち上がり、大仰な仕草で両手を振るった。

「見ろよ、手もある足もある、指も五本だ。タコみたいな火星人とか、のっぽな月の人間だとか、そんなんじゃない。顔だってあれだろ、黄色人種なんだろ? どう考えたって人間じゃないか」

「人類と似たような環境だったのだろう。それだけ貴様らの母星が地球に近かったと言える」

 レイカの冷たい声音にヒビキは二の句を継げなくなった。その場に座り込み、「嘘だろ……」と熱に浮かされたように呟く。祖父は首を横に振った。

「事実だ。ワシらはこの星の人類ではない」

「そんな」とヒビキは身体から力が抜けていくのを感じた。顔を拭って息を整えようとするが、掌にはびっしょりと汗を掻いていた。

「話を、続けさせてもらおう」

 レイカの声にヒビキは何も言い返さなかった。

「四十年前、アメリカは受け入れ態勢を取っていたが、M2とロードの因果関係が明らかになったことによって直前でそれを拒否した。当然、他の大国も拒否。消去法として、アメリカに擦り付けられる形で日本政府が受け入れることとなった。最初にコンタクトを取ったというのも大きかったのだろう。日本政府はM2に対してロードに対処法はないのかと尋ねた。ロードは一つだけあると答えた。それが対M2兵器ミーティア。貴様が搭乗した機体のことだ」

「ワシらは古くよりそれを星の剣と呼んでいた。隕石獣に対抗する唯一の剣。しかし、問題があったのだ」

「問題って」

「ロードには扱えん、という問題だ」

 祖父が苦々しく口にする。ヒビキは目を見開いた。

「どういう意味だよ。だってロードが伝えてきたんだろ」

 その矛盾に声を上げると、レイカが応じた。

「ロードは技術面では人類の数世紀先を行っていたが、遺伝子情報や医学面に関してはまるで原始人に等しかった。古くにあったミーティアの技術は進化の途上で失われた遺伝子が影響していた。今のロードにはその遺伝子を復活させる技術はなかった」

「ミッシングリンクとも呼ばれるその遺伝子の欠落情報こそが、ミーティアを動かす鍵だった。ロードでは無理だ。今さら退化などできない。しかし……」

 祖父は言葉を濁す。顔を伏せた。まるで恥じ入るかのように。代わりにレイカが顔を上げてヒビキを見据えた。

「人類の遺伝子ならばミーティアを扱えることが判明した。鍵たる遺伝子情報を持っているのは人類だった」

 ヒビキは頭が揺れているような感覚に襲われた。視界がぐらぐらしてふらつく。

「人類とロードは手を組むこととなった。いずれ来る滅びの時を免れるために。人類の技術とロードの技術の結晶として、ミーティア建造プロジェクトが発足した。二十五年の月日を経て、ミーティアの開発に成功。トップパーツ、貴様らがイーグルミーティアと呼ぶ側にロードの技術を多く取り入れ、ボトムパーツに人類の技術を多く取り入れた。ミーティアのパイロットには遺伝子情報の影響で人類が選ばれた。あらゆる適正を携え、ロードと人類の架け橋になろうとしたその人類こそが――」

 やめろ、聞きたくない。口でそう言おうとしたが声にならなかった。ヒビキは頭を抱えた。

「貴様の父親、諸星ダンだ。彼はミーティアに乗り、M2と戦った。その戦いの結果としてM2は破壊。ミーティアはボトムパーツを破壊され中破、イーグルミーティアのみが地球に戻ってきた」

 ヒビキは聞こえてくる情報全てが奇妙に浮いて聞こえていた。これは真実なのか、本当に自分はこの場にいて話を聞いているのか疑わしくなってくる。しかし、レイカの声は容赦がなかった。

「その頃には既に日本国内でもロードに対する排斥運動が活発になっていた。イーグルミーティアはその混乱に乗じてロードが封印。人類にはその技術は結局解明できず、今日に至るまでイーグルミーティアとロードがどこにいるのかすら分からなかった」

 それが分かったから、兵隊たちはやってきたのだろう。レイカはその長のようだった。どうして分かったのか、それは語られない。しかし、ヒビキの中ではある疑念が鎌首をもたげていた。

「じィちゃんたちは、俺ら子供には黙っていたのか」

 その言葉に祖父は何も返さなかった。ヒビキは言葉を続ける。

「ロードのことも、隕石獣のことも、地球の人類のことも。……親父のことも黙っていたのか」

 社で見つけた御神体のことを思い返す。あれもこの村の秘密の一つだったのだろう。イーグルミーティアから望んだ景色もそうだ。この村は欺瞞に溢れていた。

「まだ言う時ではないと思っていた」

 祖父の言葉は短く、それゆえにヒビキの心を打った。

「それだけかよ、理由ってのは」

「それだけだ」

 祖父の言葉に迷いはない。それは十五年も過ごしていれば分かっていて当然だった。ヒビキは顔を伏せる。膝の上に置いた拳に視線を落としていると、不意に疑問が浮かび上がる。自分はロードだと聞いた。しかし、父親は人類だとも聞いた。どういうことなのか。

「俺は、何だ? 人類にしかミーティアは動かせないんだろ。俺の頭の中にミーティアの動かし方が直接入ってきた。あれはロードのせいなのか」

「記憶の共有だ。ロードは特定の知識を子孫に残すことができる。ミーティアの動かし方はロードならば誰でも知っている」

「じゃあ、俺はロードなのか?」

 問いかけた声に、祖父は渋い顔を返した。レイカが代わりのように冷たく言い放つ。

「貴様は混血だ」

「混血、って」

「ロードと人間の間に生まれた子供だ。ゆえに遺伝子情報上では人類だが、ロードの特徴も併せもっている。イーグルミーティアに搭乗できる唯一の人間、諸星ダンの血が流れている。ミーティアはお前をどう認識した? 恐らくは諸星ダンとして認識したのではないか?」

 ヒビキはイーグルミーティアの中で聞いた声を思い出す。諸星ダン、と確かにそう言った。沈黙を返していると、レイカが言葉を継いだ。

「人類はミーティアを、隕石獣を倒すという目的のために存在する唯一無二の兵器として開発した。人類同士の諍いに利用されないために遺伝子情報は固定されている。諸星ダンの血を引く者にしかあれは動かせない」

 ヒビキはくらくらする頭を抱えた。片手で顔を覆い、「何だよ、それ……」とか細い声を出す。

「俺は、それなら何なんだ。人間でもなく、ロードでもないってことかよ」

 呻いた声に返事はなかった。ちゃぶ台一つの距離なのに、祖父もレイカも遠い存在に思えた。片や人類、片やロードだ。自分はどちらにも与していない。この地球上で絶対の孤独。

 レイカがぽつりと口を開いた。

「私は、できうることならばミーティアを再び人類のために使って欲しい。そのためにこの星園村をM2迎撃の拠点とする」

 レイカの言葉にヒビキは顔を上げた。握り締めた拳を震わせる。

「何言ってんだよ。勝手に決めんなよ! 人類のためならこの星園村がどうなってもいいってのかよ!」

「無論だ」

 短く断固として放たれた声にヒビキは拳を振り上げた。レイカの顔に向けて振るわれた一撃は、その顔に届く前に横合いから現れた手が遮った。

「……じィちゃん、どうして」

 ヒビキの拳を止めたのは祖父だった。祖父は鋭い眼光を湛えたまま、ヒビキの拳を押さえ込む。

「退けろよ、じィちゃん」

「ならん」

「そいつのせいだろ。俺たちが平和な日常を奪われるのって。だったら――」

「これはロードの業でもある。一概に人類のせいにはできない」

「でも、そいつらさえ来なけりゃよかったんじゃねぇか」

「その論法が有効ならば、人類のロードさえ来なければという論法も同じように可能だ。異端は我らのほうだ、ヒビキ」

「でもよ、俺は……」

「そう。貴様は人類でもある」

 冷たく発せられた声にヒビキは表情を凍りつかせた。あと数センチで届く拳に恐れをなした様子もなく、レイカは冷淡に告げる。

「ミーティアを動かし、人類に貢献しろ。英雄の息子たる貴様にはその義務がある」

 ヒビキは顔を伏せた。拳から力を抜いてだらりと下げる。祖父が押さえる手を緩めた。ヒビキはその場にへたり込んで、「だから、どうしてそうなるんだよ……」と消え入りそうな声を出した。

「ロードじゃないんだろ。だからって人類でもない。けど親父の、諸星ダンの息子だってだけでミーティアを動かさなきゃならない。何だよ、何なんだよ」

 自嘲の笑みを浮かべながらヒビキは口にした。結局、誰のために戦えばいいのだ。人類でもなく、ロードでもない自分には守りたい対象などない。しかし、英雄の息子であるというだけで戦う義務が生じる。戦わなければ、人類どころかロードも滅びる。地球が終わる。

 その宿命は十五歳の双肩には重たかった。半端者の自分に何が救えるというのだ。

「わけ分かんねぇよ」

 そう言うのが精一杯だった。伝えられた真実の十字架は重く、この身を押し潰しそうだ。ヒビキは呼吸困難に陥ったように荒い息をついた。自分の家だというのに一瞬にして知らない場所にすり替わってしまったかのようだった。

「分かってくれ、とは言わん。だがいつかは伝えねばならないと感じていたことだ。お前の親父のこと、お前の出生のことを」

 ヒビキは庭でぽつりぽつりと音がしたのを聞いた。雨が降り出し始めていた。朝から立ち込めていた暗雲が、遂に堪えきれなくなったようにすぐさま激しい雨粒となった。石畳を叩きつける雨音が響く。

 ヒビキは何も言えなかった。祖父とレイカにしてもそれ以上の言葉はないようだった。沈黙の中、雨だけが等間隔に時を刻んだ。


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