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酒好き下級竜人危機一髪?

炉から炎がこぼれ落ちる。

私はほぉっとため息をついた。


「炎から武器が生まれる様は落ち着きます」

親方(マイスター)が打ち込む金床から火花が散る。

「しかし、ミディちゃんがイル家の令嬢とはねぇ」

親方(マイスター)が剣を水に浸して冷やした。

もうもうと煙が漂う。

「落ちこぼれの末っ子です、御大層なものじゃありません」

「それでも白本家のヘルスチア様の婚約者なんだろう? 」

「気のせいです」

うん、あれは偽装だもんね。

注文書通りの形に剣が作られていく……どこの武人が使うのかな……


「気のせいってミディちゃーん、天下の白本家の若様の婚約者だぞ」

親方(マイスター)がため息をついた。

「この間の人の事ですかいな? 」

ドサっと薪を下に落としてアルギリュウスさんがびっくりした顔をしていた。


ヘルスチア兄様の事好きだっていってたもんね。


「うん、アルギリュウス、ミディちゃんは白本家ヘルスチア様の婚約者」

「ちが……」

「そうなんや……」

少し顔色悪くアルギリュウスさんは工房を出ていった。


そんなにヘルスチア兄様のことが好きなんかな?


まあ、私にはどうにもならないから仕事して酒飲みにいこっと。


ヘルスチア兄様と私は幼なじみだ。

正確にはヘルスチア兄様がエリカスーシャ姉様の従兄で少し年上なのだけど。


私の『初恋のおにいちゃま』なのは確かなんだけど昔から男女問わずモテモテでヘルスチア兄様もあそんでたみたいだ。


それにいずれ白地方のために政略結婚するかもしれない人だ。


だから恋してもどうにもならない。


高位魔族の当主は最低二人の伴侶を娶る。


一人は種族の特徴を完璧に継がせるための下級人型魔族の側室、もう一人は他種族からの政略結婚の正伴侶ということになる。


側室から生まれた種族特徴がしっかり残った子は跡取りとなる。


正伴侶から生まれた子はまた政略結婚として他家に入る可能性も高い。


正伴侶から生まれたヘルスチア兄様は……政略結婚の対象でいずれ出ていってしまうのだろう。


ああ、ため息が出る。


「さてと仕事しよっと」

私は重い腰を上げた。


ヘルスチア兄様の本当の婚約者になる令嬢はどんな人なんだろうと思いながら。


だから油断したのかな?



「ふーんこの珍クシャがあの男の大事な花嫁かよ」

高位の炎の魔神族の男性が青い目をギラギラさせて私をみた。

「イゼリアン様、ミディちゃんに危害を加えない約束でっせ」

アルギリュウスさんが慌てて私の前に立ってかばった。

「ふん、黒家のリーン嬢に比べて珍クシャな女興味はない」

炎の魔神、赤い髪が燃えてるみたいな男が目をそらした。


私は現在白地方の山の断崖絶壁近くのとある小屋でとらわれています


弱いので縛られてないけど高位魔族の威圧感に身体が思うように動きません。


今日の帰り道に何故かアルギリュウスさんにおそわれて袋に入れられて出されたらこの小屋にいて閉じ込められてるのです。


「ご計画がつつがのう終わったら」

「赤地方都に戻れるようにしよう」

アルギリュウスさんが苦しそうな顔で胸に手を当てると炎の魔神がニヤリと笑った。


私は無事に帰れるのかな?

ふうっとため息をついて小屋の破れた屋根から空を見上げると何か見えた。


「ヘルスチア兄様……」

ポロポロと涙がこぼれる。

怖い……怖いよ。

「ミディちゃんごめんな」

アルギリュウスさんが布で涙をふいてくれたので座らされてた床から見上げると炎の魔神と目があった。


「稀なる翡翠の目……珍クシャだと思ったが……」

「い、いや、何? 」

「翠家の血を引くというのは嘘でないということか? 」

炎の魔神がしゃがみこんで私の顎をもって顔を上げさせた。

怖くてあとからあとからなみだがでてくる、アルギリュウスさんが布で拭いてくれながら炎の魔神を睨みつけた。

「イゼリアン様、ミディちゃんに手を出さへん約束やで」

「そんな約束はしらん」

炎の魔神がわらって私を引き寄せようとした。

アルギリュウスさんが一瞬ためらって炎の魔神にを突き飛ばした炎の魔神がよろめく。

「ミディちゃん逃げ」

「この木っ端鍛冶屋が!! 」

いまいましそうに炎の魔神がアルギリュウスさんをつかんで投げ飛ばした。

「アルギリュウスさーん」

壁を突き破ってアルギリュウスさんはそのまま動かなくなる。


ま、まさか……


「ふん、赤地方都で上官の奥方ごときに横恋慕した程度の小悪党が」

炎の魔神が忌々しそうにアルギリュウスさんをにらんだあと私を獲物を見るように見た。

「あの白蛇野郎がくるまで楽しめそうだ」

炎の魔神が私の頬を舐めた。


熱くて気を失いそうになった。

下級竜人に炎の魔神の熱波を防ぐすべはない。


「冷たいな……」

温めてやろう。 眉をひそめて炎の魔神がつぶやいた。

接触しているところの温度が熱い……熱い、熱くてたまらないシールドを張れない下級竜人の私は……


も……会えない……それなら……告白……す


かすむ目が何かをとらえた……み……ず?


「なんだ!! 」

多量の冷水が小屋の天井から降り注いだ。

そのままうずまいて炎の魔神を押し流した。

私も流される。


水で生きかえったけど崖の下に落ちたら死ぬなぁと漠然と思ったところで誰かに支えられた。

冷たい気持ちいい鱗の感触……


「大丈夫かい? 」

「ヘルスチア兄様……」

ヘルスチア兄様が私を抱きしめてた。


「テメェ、よくもやりやがったな!! 」

崖の方から炎がメラメラと上がり水を蒸発させながら全身に炎をまとわりつかせた巨人が登っていた。

「仕掛けたのはあなたのほうだよ、イゼリオン殿」

ヘルスチア兄様が巨大化した炎の魔神を睨みつけた。


私を後ろに回してオルフェートさんにチラッっと目で合図した。


オルフェートさんが私を受け取って剣をぬいた。


「だいたいテメェさえいなければ黒の淑女も花の魔女も幻の乙女も落とせたんだ!! 」

炎の魔神が業火を腕を振るって飛ばした。

「どんな妄想だい? 」

ヘルスチア兄様が水の壁を作って防ぐ。

炎と水がぶつかって水蒸気がもうもうと上がる。

「うるさい、この小ざかしい蛇男! 」

「黒家の令嬢は相手がいたし、花分家彼女はビジネス関係だったと思うけど?」

炎の魔神が繰り出す火球を水の盾で防ぎながらヘルスチア兄様が笑った。


こぼれたぶんはオルフェートさんが切り伏せていく。


「幻議員は餌扱いされてたって聞いたけど? 白分家(うち)天才軍師(丸龍軍師)に」

「一族と共々俺の純情を〜」

炎の魔神が全身の炎を乱舞させた。


崖の草が燃え上がる。

オルフェートさんがシールドを張ったけど熱波にやられそうだ。


「ヘルスチア兄様〜」

ヘルスチア兄様が炎の包まれた。

し、シールド張ってるよね?


ヘルスチア兄様が焼けちゃったら……


丸龍軍師ってエリカスーシャ姉様のことだよね。

情報命(こんなところ)だけヘルスチア兄様と同じなのさ〜。


「燃えろ燃えろ、すべて燃えつくせ」

狂ったような笑いと共に炎の魔神の声が聞こえる。


炎がシールドをジリジリと溶かし始めた。


「くっ、これまでか? 」

オルフェートさんがそれでも私をかばおうとおいい被さった。


「ヘルスチア兄様」

私は絶望に目をつぶった。


炎がシールドを破る……その瞬間水の壁が間に入って水蒸気が上がった。


何メートルもありそうな巨大な白い大蛇が立ち上がり尻尾で炎の魔神を攻撃した。

そのまま水竜巻を炎の魔神を空高く巻き上げて飛ばした。


大きな音とともに炎の魔神は崖下に落ちていった。


生きてるようですね残念。

白い大蛇は崖の下を覗いてつぶやいた。


炎の魔神、さすが高位魔族だよ。


「我が君」

オルフェートさんが白い大蛇の前にひざまずいた。

「オルフェート、ご苦労だったね」

ヘルスチア兄様の声が白い大蛇からした。


「ヘルスチア兄様? 」

「うん? ミディは本性であったことが無かったね」

白い大蛇がみるみるうちに小さくなってヘルスチア兄様に変わった。


「私の因縁で迷惑かけたね」

ヘルスチア兄様がちかづいてきて私を抱きしめた。

「怖かったの」

私は涙があふれてきてこらえきれずに泣き出した。

「こんなところに火傷が」

ヘルスチア兄様が私の頬を2つにわかれた舌でなめた。

「す、すぐ……治るもん」

「うん、わかってるよ、でも私のために傷ついた」

だからお嫁さんになってほしい。

ヘルスチア兄様が甘い声で耳元で囁いた。


「別に……責任……感じなくてもいいの」

「私の腕の中においておかないと取られてしまうかもしれないからね」

「……兄様、私のこと」

「大事な大事な小竜さん、私のお嫁さんになって? 」

甘くヘルスチア兄様が私の耳をアマガミした。


私は真っ赤になった。


お酒……お酒飲ませてくれるならなる。

あと仕事辞めたくない。


私はボソリとつぶやいた。


「うん、世界中の銘酒、おつまみ食べつくそうね」

ヘルスチア兄様が私を抱き上げて歩きだした。


「あー……わい、喧嘩売る相手間違えたかもしれへん」

崖からやっと登ってきてフラフラのアルギリュウスさんがつぶやいてるのをオルフェートさんとあとからやってきた警護士がつかまえてるのがみえた。


甘すぎる〜ミディちゃん幸せになれよーと警護士のおっちゃんたちがアルギリュウスさんを拘束しながら叫んだ。


ミディちゃんごめんなとアルギリュウスさんがうなだれてるのが見えた。


今は許せないけどいつかまた笑ってはなせるといいな。


後で聞いた話だとアルギリュウスさんは赤地方の軍の専属の鍛冶屋で赤地方軍の将軍の嫁にたぶらかされて結局ばれて嫁に無理矢理とか嘘をつかれて赤地方追放になったらしい。


殺されなかったのは炎の魔神がヘルスチア兄様に復讐するために一応忍び込ませたからなんだよね。


赤地方も世知辛いらしいね。


崖の下の炎の魔神をなんとかしようと何人か降りたみたいだ。


捕まえても高位魔族だから賠償金くらいなんだろうなぁと思ってるとヘルスチア兄様がにっこりと微笑んだ。


後日、赤本家の炎の魔神イゼリアン様はいぢめられるのが好きな変態いう噂が出回ったそうだけど……まさかヘルスチア兄様が何か……恐ろしい……ヘルスチア兄様は敵に回しちゃいけない気がする。


炎の魔神はその手が趣味の高位魔族に迫られまくったらしい。


幻本家加虐の貴公子とかきいたけど……ヘルスチア兄様のい、従兄だよね?


アルギリュウスさんは白地方追放になるところをなんとイル家の子飼いの職人として低賃金で働いてる。


父様とカーラファーシャ姉様がアルギリュウスさんの鍛冶の腕前に惚れ込み強引に引き取ったらしい。


「さあ、うちに帰ろう」

ヘルスチア兄様が私に甘く微笑んだ。

うんってうなずいたけど……そっちは下宿ともイル家の方でもないですよ?


私はその日から白本家のヘルスチア兄様の別邸に住むことになった。

し、仕事させてくださーい。


麗しい蛇の貴公子に甘く巻き込まれました、嬉しいけど助けてくださーい。

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