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酒好き下級竜人は平常運転中? 1

相変わらずでかいなぁ……

私は白本家の建つ敷地を見上げた。


白本家はひときわ高い岩山全体が広大なお屋敷で周りは白分家と鱗家が取り巻いている。


鱗家っていうのは白分家までいかないけど多少なりとも白家の血を引くか固い忠誠を誓う上級から中級竜人のうちの事だ。


ちなみに白本家は白い蛇神族の家系で大蛇の姿が本性だけど、普段は上半身が人型で下半身が蛇の形だ、分家でも血の濃いものは蛇神型になることもあるけど分家はだいたい龍で普段は枝分かれした二本角としっぽがある人型をとっている、鱗家の上級竜人は皮膜の羽根と皮膜状の耳と尻尾とまがった二本角がある全身に鱗がある人型の姿のみで主に戦闘狂(バトルジャンキー)が多い、私は竜人でも下級だし実は羽根がないし角もすごくちっちゃいししっぽも短いんだ、だから虚弱と思われてて……そのせいでよけいに……ため息でるよ。


実家(イル)も白分家の中でひときわ目の引く大きさと敷地だけど白本家に比べれば小さい。


あそこに帰りたくない……

そう思いながら隣のヘルスチア兄様を見上げた。


約束通り店に迎えに来てくれたおかげで酒がのめなかった。


立派なお屋敷の門の前にたたずんで思った。


夕食に酒が出るといいなぁ。

期待を込めて見つめると視線を感じたのかヘルスチア兄様こちらを見て微笑んだ。


わーお色気はいらないからお酒ください。


「開門」

オルフェートさんが一言言うと魔法陣が展開されて気がつくと白本家のお屋敷のエントランスホールについていた。


すごいなぁ……入り口が転移門になってるんだぁ。

山登りしなくてすんでよかったよ。


ほら、羽根ないから実家帰るとき徒歩なんですよ……だから帰りたくないのもあるんだよね……それだけじゃないけれど……ため息しかでないや。


「ヘルスチアおかえりなさい〜ミディちゃんいらっしゃい〜」

白本家ご当主チズレイア様が旦那様たちを引き連れてわざわざ出迎えてくれた。

旦那様たちは上級淫魔のヘーリセント様と下級人型魔族のライセ様だ。

「お約束通り婚約者を連れてまいりました」

「良かったね〜」

私を前に出して見せたヘルスチア兄様におっとりと小首をかしげてライセ様が反応した。


極上の下級人型魔族ってこう言う人のこと言うんだね。

穏やかでのんびりとおしとやかで高位魔族に庇護される存在……


私はカリン母様を思い出してため息をついた。


チズレイア様とヘーリセント様がうっとりとその可愛い仕草に癒やされた顔をした。


「ありがとうございます、皆さんおそろいですか? 」

「ああ……それにしてもミディリーシャ君とは……」

ヘーリセント様が私を見て笑った。

まあ、平々凡々で美貌のヘルスチア兄様にあいませんよね、偽装だからいいんです。


チズレイア様の正夫ヘーリセント様は上級淫魔、幻本家(ゲンほんけ)出身でヘルスチア兄様の実の父親だ。


つまり他種族の血を引くヘルスチア兄様は白本家の跡取りでなく他家に正夫として婿入りしてお家を繁栄させるのが普通の高位上級魔族の常識なんだよね。


白本家の跡取りは下級人型魔族のライセ様の血をひいて蛇神族そのままの特徴のライノエリ様が慣例通りなってるし……


でも……いつでも仲がよくてうらやましかったなぁ……


「よろしくね、ミディちゃん」

チズレイア様がライセ様をヘーリセント様と一緒に抱きしめながら微笑んだ。


ちなみにライノエリ(次代当主)様とウルヒフェルシア(婚約者)さんは人界に婚前旅行らしい……キョウトの時代劇ぱあくに行ってるそうだ。



あまり入ることのない白本家の豪奢な廊下にキョロキョロしながら案内された居間に人影があった。


あれは……あの人たちは……


「……カリン母様、カーラファーシャ姉様」

無意識につぶやいた。


「ミディリーシャ、久しぶりですね」

黒い髪と緑の目の美人な下級人型魔族……カリン母様が私を見て眉をひそめた。

ちなみに下級人型魔族の美人はおうとつのない身体と大き過ぎない顔パーツが原則だ。


「相変わらず貧相だ」

白地方軍上級士官の正装をした黒銀の短い髪と目筋肉質な身体のいっけん男と見紛う黒銀の鱗の女性はカーラファーシャ姉様で私を見て苦々しい顔で腕組みした。


私は身長が普通サイズなだけです。


思わずヘルスチア兄様の後ろに隠れてしがみついた。

震えが止まらない。


別にいじめられたわけじゃないけど怖いものは怖い。

カーラファーシャ姉様はますます顔をしかめた。


ヘルスチア兄様が私の肩を撫でて優しく笑ってから二人に向き直った。


「私の婚約者を怯えさせないでほしいな、イルの嫡子殿とその母殿」

イル当主とアリスベラ叔母上ではないのですか? と続けて言外に二人では力不足という嫌味を優雅に含ませてヘルスチア兄様が笑った。


カーラファーシャ姉様が顔をしかめたのが見えて震えが止まらない、誰か酒を……酒をください。


「我が不肖の妹がヘルスチア様の婚約者になるという情報を得たので止めに参りました」

「まあ、無駄足ですわね」

カーラファーシャ姉様の嘘くさい微笑みにご当主様が微笑んだ。


なんかものすごく酒を飲んで下宿でベッドに引きこもりたくなってきた。


「そうですね」

ヘルスチア兄様が私をうながしてソファーに座らせた。


カリン母様とカーラファーシャ姉様が私を睨みつけた。

偽装婚約者ってばれたら嘲笑われるんだろうな……


そんなことを思いながら注がれたお茶を手にとった。


ああ、このまま帰りたい。

酒飲みに行きたいなぁ。

高級酒じゃなくてもいいから飲んでストレスを忘れたいなぁ。


私は白分家で武門の名家イル家の三女だ。

魔界の名門貴族だと大体政略結婚的な他種族の正妻と家の種族の特徴をつがせる下級人型魔族の妻を娶るのが普通で下級人型魔族を身籠らせる場合出産まで夫は力を繊細にそそがないと流れてしまうので大体一人だ。


でも私は下級人型魔族のカリン母様の二番目の娘……父様が作ろうとして作ったのでなく戦闘があったあとの力発散のようにカリン母様とむつみあったらしい。


もちろんできるはずないのに……問題はカリン母様が上級人型魔族(翠家の血)を少し引いてたせいで出産までこぎつけたみたいだ。


当時は魔王陛下の代替わり魔界も荒れていてたびたび起こる戦闘で何回もむつみあって力の発散をしていたせいもあったみたいだけど……。


しっかり注がれない力のせいで私は下級竜人として生まれた。


他の地域ではいざ知らず下級竜人は白地方にはほとんどいない、そして私は弱い下級竜人だから父様はエリカスーシャ姉様が丸くて軍人としては落ちこぼれ(でも天才軍師なんだけどね)で軍人としては弱いよりもすごく困って私をイル家の屋敷の中に閉じ込めたんだ……壊れ物でも扱う勢いでオロオロ動揺してたってアリスベラ母様が笑ってた。


成人した時アリスベラ母様とエリカスーシャ姉様が父様を説得してくれなければまだイルのあの奥で訓練してるカーラファーシャ姉様を見ながら外に出たいって思いながら暮らしていたかもしれない。


「我が妹ながら脆弱で意志薄弱でヘルスチア様にふさわしくありません」

カーラファーシャ姉様の声が聞こえて顔を上げた。

「ミディリーシャは本当に表に出せない子ですの」

カリン母様がハンカチで涙を拭うふりをした。


カリン母様とカーラファーシャ姉様は私の評価は低い、今でも屋敷の奥に閉じ込めておきたいんだよね。

カーラファーシャ姉様は私の婿候補だった魔界軍人のアウスレーゼ中将や魔王陛下護衛官ティインシスさんが別の女性とくっついたのは私がいたらないからだとあざ笑ってたのに婚約者としてヘルスチア兄様のことが上がって慌てているかもしれない。


カーラファーシャ姉様はまだ婚約者がいないからね……父様のおメガネにかなう人をご丁寧にも倒して行くから……自分より強い人と……もう一つ条件があるらしいけど……それはわかんないなぁ。


「カーラちゃんとカリンさんは本当にミディちゃんが大事なんだね」

ライセ様がニコニコとくまちゃんせんべいを食べて笑った。

隣のヘーリセント様がそうだねとライセ様の頭をなでた。

「ライセがそう言うならそうなのかしら」

当主様がライセ様の頬についたせんべいカスをとって笑った。


ライセ様の両隣に当主様とヘーリセント様で本当に仲がいい。


「今度、エリサウス殿を訪ねようか、イル家の当主殿にも挨拶しないとね」

ヘルスチア兄様がニコニコと私の肩を抱いた。


父様は……本気で嫌がるかも……第一偽装ですよね。

ビール飲みたい大ジョッキ……いやピッチャーから……コップ一杯でもいい。


ああ、どうしよう離れに軟禁されるの嫌だよ。

カリン母様が嫌がるから酒飲めないもん。

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