誓い
2、誓い
「護衛・・・?」
パニックってこんな状態のことを言うんだな、って思った。
矢継ぎ早に起きた出来事に頭がついていけなかった。
「ああ、間違いなくあんたの護衛だ、和泉善。」
「な、なんで知って・・・」
訳がわからなかった。こいつらは俺の護衛って言ってるけど、味方なのか?
あんたら何なんだ?
そう聞こうと思った、次の瞬間。
窓ガラスが割れ、何かの笑い声が響き渡った。
フィンドールが笑い声のした方を凝視し、叫んだ。
「伏せろ!!!!!」
同時に轟音が耳に飛び込んでくる。
隣のクラスから、そしてその隣からも、上の階からも悲鳴が聞こえてくる。
『見つけた・・・見つけた・・・やっと!!!』
「っああああ!!!!」
思わず俺は耳を塞いだ。
酷い声だ。いや、声といって良いのかすら分からない。
耳を塞いでも、その声は頭の中に響いてくる。
「全員顔を上げるな!石になって死ぬぞ!!」
フィンドールの声がやけに小さく聞こえる。
その後に、レアンドラの囁く声がした。
「目を上げて、善。あれの声が聞こえたなら大丈夫よ」
思わず顔を上げた。
すると俺の目に、俺に寄り添うレアンドラと、背を向けているフィンドール、それから、
動かない数人の生徒の姿が飛び込んできた。
「そいつらは遅すぎた」
背を向けたままフィンドールが喋る。
フィンドールの目線の先には、異形の姿があった。
「レ・・・レアンドラ・・・」
俺はその先を口にすることが出来なかったが、レアンドラはその先の台詞が分かったようだった。
「メドゥーサよ。ゴーゴン三姉妹の三女・・・己の髪の美しさを鼓舞したばかりに怪物になってしまった乙女の、成れの果て。」
「メドゥーサ・・・・・!?」
空想上の怪物じゃなかったのか・・・!?
「済まない、メドゥーサ・・・主を護るためだ、許せ。」
フィンドールが腰の刀を抜いた。
刹那、メドゥーサは断末魔の叫びを上げ倒れた。
「え?」
・・・速すぎて見えなかった・・・
刀の血を拭き取り、鞘に収めるフィンドール。
その青灰色の瞳をこちらに向けた、と思ったら目の前に立っていた。
はっや!!!!!!
「行くぞ」
「え?」
「行くよ、善。」
「行くって、何処に・・・それに、」
石になっちまった奴らを、と言いかけたら、レアンドラに手で制された。
「あの子達はもう助からない。残った子達を助けたいのなら、今すぐここから離れないといけない。」
「・・・なんで?」
「あの化け物どもは、お前を狙って近付いてくるからだ。これ以上ここに留まったら、お前の友人達は全員死ぬぞ。」
「っ・・・・!」
俺の脳裏に、木全のあの真っ白な顔が甦る。
受け入れがたい。でも。
俺はフィンドールとレアンドラに向かう。
「よろしくお願いします・・・俺を、俺の友達を、護ってくれ。」
二人は顔を見合わせ、笑った。
「「承知しました、主よ。この身に代えても、」」
ゆっくりとレアンドラが歩み寄る。
「「貴方をお護りすることを誓約いたします。」」
レアンドラとフィンドールは、言い終えるとまた笑って言った。
「「こちらこそ、よろしく!!」」