襲撃
1、襲撃
俺の名前は和泉 善。ごく普通の高校生。
同じクラスの木全 妃華里のことが実は好きだ。
・・・自己紹介って苦手なんだよな。これくらいでいいかな?
今は数学の授業中。ここ進学校だから授業についていくの結構大変なんだよ・・
「じゃあ、問4を・・・和泉ー」
げっ。さっそく当てられた。
「はい」
幸い、簡単な問題だったので答えを口にする。
「X=、」
3ルート5です。と答えるのと同時にドアが開いた。
無意識にそちらを見る。
そこには、仮面を被ったやつらが数人立っていた。
教室の空気が固まる。
その時、俺はそいつらのうちの一人が何かをーーいや、誰かを掴んでいるのが見えた。
「木全・・・!?」
そいつが掴んでいたのは、ぐったりとした・・・木全だった。
「よく聞け」
真っ赤な仮面を着けた奴が口を開いた。
「この中に、」
そいつが言い終わる前に、俺の前を何かが横切った。
「お前らは誰だ。とりあえず妃華里さんを離しなさい」
数学教師の中川が、仮面の奴らの前に立って言った次の瞬間、赤仮面が手を伸ばした。
「がはっ・・・」
中川は血を吐いて倒れた。
「っせ・・」
「先生!!」
「動くな!!」
駆け寄ろうとした生徒に向かって赤仮面が叫ぶ。
「それの様に成りたくないのならな。」
教室が静まり返る。誰かの啜り泣く声がやたらに大きく響く。
「さて、」
赤仮面が俺たちを見回して言った。
「聞いているか、キルレイズよ。」
ドクン!!!!!!
はっと我に返った。脂汗が滴り落ちる。
何だ今の・・・心臓が早鐘のように打つ。
「この中にいることは分かっている。出てこい。千年前の決着をつけに来た。」
「バカじゃないの・・・?」
「・・・!」
「何よ、キルレイズって・・・何の因縁があるのか知らないけど、あんたらのバカな妄想に巻き込まないでよ・・・!」
「木全っ!?」
「ほう・・・大した度胸だ、女。だがお前はキルレイズでは無いようだ・・消えろ」
木全の前に、赤仮面が手をかざす。
背筋がぞわり、とする。
気づいたら駆け出していた。
木全の所に俺が駆け寄るのと、木全が倒れるのが同じくらいだった。
全てがスローモーションだった。
固く閉じられた瞳と、真っ白な顔を目の当たりにした俺の中で何かが外れた。
「てめぇ・・・!!」
赤仮面が目を見開いた。
「お前は・・・・・・っ!!!」
俺が今にも赤仮面に飛びかかろうとしたとき、能天気そうな声が響いた。目をやると、窓から男女の二人組が入ってきていた。
「あっぶなーい。間に合ったみたいだねえ」
「お前がノロノロしてっからだぞ・・・はぁ」
赤仮面が一歩後ずさる。
「貴様らは・・・!!!」
仮面をしていてもわかるくらいに顔面が蒼白になっていく。
そして突然、他の仮面の奴らと一緒に消えた。
「っあ・・・!!」
「追うな」
とっさに追いかけようとした俺を、男のほうが手で制する。
「お前らは・・・・?」
誰?という言葉が出てくる前に、女がニコッと笑う。
「私はレアンドラ、あっちはフィンドール。貴方の護衛として参りました」