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第十九話

長らく間が開いて申し訳ありません。


 真樹人さんが来てくれた!


 はやる心にせき立てられるように玄関に走った。真樹人さんに会いたい。その一心で。

 けれど、玄関の鍵に手を伸ばした瞬間、ふと頭をよぎるものがあった。



 ちょっとまって。

 私、今、会社から疑われている立場だよ?

 もちろん、私は天地神明に誓って悪いことは一切してないつもり。少なくとも、あのSDカードについては私は身に覚えのないことだ。

 けれど、まだそれを証明できていない。ということは、言い方は悪いけど今の私は容疑者な訳で。


 そんな立場の私の部屋に来るってことは、真樹人さんも疑われるんじゃないだろうか?共犯者だ、って。




 だめ。

 それは絶対ダメ。

 誤解だったとしても、真樹人さんが……私の一番大好きな人が私のせいで疑われるなんて、絶対だめだ。





 玄関ドアの鍵に触れる直前で手を止め、ぎゅっと手を握りしめる。それから、わざと大きな明るい声で返事をした。


「真樹人さん!ごめんなさい、会えません」

「南美?」

「今日は、ひとりでいろいろ考えたいんです。帰ってもらえますか?それで、できれば……できれば」


 くじけちゃだめだ。ちゃんと言わないと。

 声が震えそうになるのを押さえようとするけど、ちょっと難しい。押し殺すように大きく息を吐いて、上を向いた。


「できれば、しばらくここには来ないでください。私は大丈夫ですから」 

「南美、待って。とにかく顔出して。長崎から聞いたんだ」

「やです。とにかく、会いません……から……」


 やば、涙声になってきた。もう話せないかも。


「南美!!」


 ガン!!


 玄関ドアが外から大きな音を立てて叩かれた。


「大丈夫じゃあないだろ!泣いてるじゃないか!!とにかく、ここ開けて」

「やだって……言ってる……」


 お願い、もう帰って。

 

「南美!」

「だから!帰って!も・・・・・・会えない・・・・・・」


 今は会っちゃダメだし、もし会ったとしても、こんな顔見られたくない。こんな涙でぐちゃぐちゃになった顔なんて。


 そのまま玄関を離れてベッドまで走った。枕に涙を吸わせるままにして、耳を塞いだ。

 しばらく玄関をノックする音が続いていたけど、しばらくして静かになった。

 静かになって、また余計に涙が出た。


 真樹人さん。真樹人さん、真樹人さん。


 会いたいよ。











 そのまま寝ちゃったらしい。


 はれぼったい目と顔をこすりながら起き上がると、時計は夜中の3時ちょっと前だ。スマホには電話とメールの着信を知らせるランプがついてて、開くと見たこともない量の着信履歴とメールが出てきた。

 そのほとんどは彼だったけど、最後のメールは違ってた。


「優……?」


 優からのメールだった。

 それを開くと、優らしい柔らかい言葉で心配している様子がつづられていた。




<高木さんから連絡もらったよ。高木さん、すごく南美のこと心配してた。高木さんに会えないなら、私なら会える?大丈夫だったら、真夜中でもいいから連絡ちょうだいね>





 真樹人さん、優に連絡したんだ。

 それだけ心配してくれたんだ。

 ごめんね。心配かけて。




 優に今すぐ連絡しようか?真夜中だけど、心配してるかもしれないし……

 ずいぶん悩んで、メールだけ打っておくことにした。


<大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。ちょっといろいろあって、今真樹人さんにあうわけにいかないんだ>


 そんなことを書いて送信した。

 まあ、詳しいことを話すわけにはいかないからね。会社の中の話だし。


 はあ、なんだか目が覚めちゃった。




 スマホを消して窓を開けた。とたんに冷たい風がうわっと入ってきて、ぶるりと身震いする。大きく深呼吸して夜空を見上げると、ぽつりぽつりと星が瞬いていた。

 星って、恒星と惑星があるって昔習ったっけ。太陽みたいに自分で燃えて光を出してる恒星と、その恒星の光を反射して光る惑星と。

 私にとって真樹人さんはまぶしすぎる恒星みたいだ。

 けれど、私はただその光を受けて光ってるだけの星にはなりたくない。だって、それじゃ恒星にとってはいてもいなくても変わらないんじゃないの?

 だから、私も自分で光る星になりたい。真樹人さんの隣で、小さくてもいい、自分で輝く恒星に。




 くしゅん!とくしゃみが出た。寒い寒い!かっこつけてないで窓を閉めよう。

 思いっきり泣いて、寝て、夜空を見上げて、頭がすっきりした。こうなったら、これからどうするか考えよう。

 私は部屋の電気をつけて、熱い紅茶を淹れるためにキッチンに立った。



 ティーバッグで熱い紅茶を淹れてミルクを多めに足し、お砂糖を少し。それに、以前買ってお菓子作りに一度使ったことがあるだけのコアントローのミニミニボトルを開けてほんの2、3滴たらす。ミルクティーにふわっとオレンジとアルコールの香りが立ち昇って、ふっと緊張がほぐれるような安心感が巡った。







 あのSDカードを、データを盗む目的で持っていたとするよ?

 動機はお金、かなあ……?

 でも、いつ撮影したんだろ。昼は私がいたし。夜、みんなが帰ってからかなあ。だって、業務時間中に撮影なんてしてたら、怪しすぎて見つかっちゃうよ。


 あと、問題はどうやってパスワード解除したかだよね。

 基本的にパスワードは課の人間が知っている。他にもいたっけ?


 ……いないな。


 て、ことは?課のなかに犯人がいるってこと?






 あ、ちょっと待って?


 たしか、企画書として上層部に提出したデータもあるはずだよね?出所はうちの課とは限らないんじゃないの?

 じゃ、あの室戸さんって人は、ひっかけて犯人をあぶり出そうとしてるのかな?


「はあ、頭がぐちゃぐちゃしてきた」


 そもそも2時間推理ドラマでもなかなか犯人を当てられない私に探偵まがいの推理なんてありえないんだけどね。助けて!コ○ンくん!


 しばらく唸りながら考えていたけど全くいい考えは浮かばなくて、ついに頭が疲れてきた。結局甘い香りのミルクティを飲んで、もう一度布団に入ることにした。


 データ。

 どんな画像がSDカードに入っていたんだろう……?

 そんな考えが、眠りに落ちる直前に頭をよぎった。









 朝、普通に起きて出かける支度をした。

 え?もちろん、会社に行く支度だよ!だって、私は悪いこと何もしてないのにこそこそすることないし。

 昨日の今日だけど、もちろん休むって選択肢はなかった。


 朝ご飯のお皿を台所に下げてたら、スマホが鳴った。優だ。


<ごめん!寝ててメール気がつかなかった!!ああもう、私が真夜中でもいいからって言ったのに!>


 すごく申し訳なさそうな声。あ~、優って真面目だから気に病んじゃうタイプだよねぇ……やっぱり、朝になってからメールすればよかった。



「やだな、気にしないでよ。私は大丈夫だから。ごめんね、夜中にメールして」

<そんなこと!>


 なんか逆に私が慰めてない?


<それでもやっぱり心配だよ。ね、今日、仕事終わったら会えない?>

「今日の夜?」


 手帳を開いて予定を確認すると、特になにもない。そうだね、気晴らしさせてもらおうかな。


「うん、大丈夫だよ。ごはんでも食べに行こうよ」


 そう返事して、待ち合わせを決めてから電話を切った。




 *****




「おはようございます!!」


 元気よくオフィスに入ると、先に来ていた課長や長崎さんがほっとした顔をした。


「おはよう、モモちゃん」

「よく出てきたな」

「当然です!後ろ暗いところなんてありませんからね!」


 できるだけ元気な笑顔で返事をした。

 うん、こういう声出して笑顔にしてると、負けないぞって気になってくるから不思議だね!


「おう、それじゃ早速で悪いけど、昼までにこの資料を……」


 課長に呼ばれて指示を仰いでいるとき、急に課長が苦い顔をした。と、思ったら。


「おはようございます」


 後ろから声がした。






 室戸さんだった。

亀更新で申し訳ありません。。

ちょっとずつですが書き続けていますので、間は開くかもしれませんがちゃんと続きます。


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