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黄金の月の蛇姫様  作者: みつきなんとか
第6章 力を求めて
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第50話 天才の実力

各話にサブタイトルをつけてみました。

かなり適当につけたので、後から少し変わるかもしれません。

 


Q,私、女なんですが、

  男を魅了して骨抜きにするため厄介と言われるサキュバスは、

  女が相手だと実は無力だったりするのでしょうか?


A,まず、その認識自体が間違っています。

  彼女達は非常に強い魔物なので、相手が女でも危険な事には変わりありません。

  もし彼女達に出会ったら、性別に関係なく即座に逃げましょう。









 闇色の羽をゆらりとはためかせ、アイラは宙へと浮かび上がった。




 サキュバスという種族は、様々な個体差が見られる2本の角。

 先端に特徴的な形状を持つ、悪魔種特有の細長い尻尾。

 そして蝙蝠の羽のような形状をした、1対の羽を持っていた。


 当然その羽は飾り物ではなく、彼女達は易々と宙を飛ぶことが出来るのだ。

 彼女達が空を飛ぶメカニズムは、鳥等の空気を使って揚力を得るものとは異なり、

 羽という飛行器官に魔力を流すことで、物理法則に直接干渉して浮力を得ていた。


 そして、この部分が魔物とそうでないものを分ける、最も大きな違いでもあった。

 魔物とは、いわば魔力を使って活動する者達の総称と言って良い。

 人間や動物で言う所の体力が、魔物の場合は魔力に置き換わるのだ。

 ゆえに、魔力が枯渇した魔物は、当然その活動を止める事となる。


 魔物達は、様々な方法でその魔力を回復させる術を持っていた。

 例えば、睡眠と自然回復に任せる者。

 他の生物と同じく、食物から得たエネルギーを、体内器官により魔力に変換する者。

 大気中のマナや瘴気を取り込み、自らの魔力に変換する者。

 地脈に流れるエネルギーを直接食らう者。

 他者から奪ったエネルギーを、そのまま魔力に変換する者、等など。

 これらの行動を総称して、『魔物の食事』と呼ばれていた。


 ちなみにルナルナの場合、睡眠と食物によりその魔力を回復させていた。

 ラミアという種族には、実はもっと効率的な回復手段があるのだが、

 人間だった頃の習慣もあるためか、ルナルナは敢えてその手段を避けていた。


 サキュバスの『食事』は、他者の『快楽』を自らの魔力に還元するものである。

 これは俗に『淫魔体質』と呼ばれるものであった。

 サキュバスは、主に人間の男を『食事』の対象に選んで進化してきた種族である。

 彼女達が、外見やプロポーションに優れているのも、すべてはその為であった。

 結果として、人間の男を誘惑する魔物というイメージが強く定着したのだ。


 また、サキュバスは他の魔物に比べ、魔力の制御に優れている傾向があった。

 これは彼女達が、生まれつき魔力制御を必要とする羽を持つところが大きい。

 彼女達は空を飛ぶだけで、自然に魔力を制御する術を身につけることが出来るのだ。


 飛行能力と高い魔力制御能力。

 この2つの能力は、戦いの場において計り知れないアドバンテージをもたらすのだ。




 中空まで浮かび上がったアイラは、既にルナルナの手足が届く範囲に存在しない。

 彼女に攻撃を当てるには、飛び道具でもない限り、跳ぶか飛行するしかないだろう。


 しかし安易に飛び上がってしまえば、相手は空中を自由に動き回ることが出来るのだ。

 もし攻撃を避けられてしまうと、当然空中で盛大な隙を晒すことになるだろう。


 そしてルナルナは、ラミアの姿でも人化状態でも飛行能力を持っていなかった。

 人化の応用を使えば、翼を生やして無理矢理飛行能力を得ることも可能ではあった。

 だが、そんな事をしてしまえば、ルナルナの魔力はたちまち尽きてしまうだろう。


 ルナルナがラミアの状態で上に伸び上がれば(・・・・・・)、なんとか届く範囲か。

 そんな事をすれば、仮に攻撃が届いたとしても力を乗せることは出来ないだろうが。


 ルナルナは、アイラが戦う所を見たことはなかった。

 だから、この状況から彼女がどのような攻撃を仕掛けてくるか予測できなかった。

 その飛行能力を生かし、ヒットアンドアウェイを繰り返すつもりなのか。

 それとも飛び道具的な物を放ってくるのか。

 はたまたルナルナの隙を窺い、一気に大技で勝負をかけてくるのか。


 ルナルナは、頭上で滞空する幼馴染の放つ魔力が、

 自分の魔力を大きく上回ってるのではないか、と感じていた。

 いや、それはありえないはず、とルナルナは首を振る。

 多少の増減はあれど、基本的に魔力容量は変わらないのである。

 いくら天才とはいえ、魔王より魔力の多いルナルナを凌駕することは無いはずなのだ。

 そこでルナルナは、自分がすっかり萎縮してしまっていることを認識した。

 ルナルナは自分に活を入れなおし、改めて頭上アイラを睨みつけた。


「うふふ、来ないんですかぁ?」


 視線の先のアイラは、ルナルナに向けてふわりと片手を掲げていた。


「お嬢様が来ないならぁ~、こっちからいきますねぇ♪」


 その雰囲気にそぐわない、のんびりとした声と共に、

 ルナルナの足元に複雑な光の魔方陣が組み上がる。


「んなっ、魔術だと!?」


 魔方陣が完成する寸前、ルナルナは慌ててその範囲から脱出する。


「あれぇ、避けられちゃいました。

 せっかく気持ちよ~く眠ってもらおうと思ってましたのにぃ」

「あ、危ねぇ…今のは睡眠(スリープ)か!いつの間に魔術なんて覚えたんだ!?」


 ルナルナの知る限り、つい数ヶ月前まで彼女は魔術を使えなかったはずであった。

 というのも、アイラの教師役であるエルドの前には、一緒にルナルナもいたのだ。


「さぁ~、いつでしたっけねぇ」


 ルナルナの問いに、アイラは唇に人差し指を当て、小首を傾げてとぼけた返事をする。

 恐らく本人は、その仕草を子供らしい可愛い仕草のつもりで振舞ったのだろう。

 だが彼女の表情と威圧感のせいで、その仕草は小悪魔的な印象の方が強かった。

 彼女の子供っぽいヒラヒラの服は、もはやただのハリボテと化していた。


「うふふ、でもいいんですかぁお嬢様?そんなことに気を取られてても。

 戦いはもう始まってるんですからぁ、ちゃんと集中してなきゃダメですよ~」


 アイラがそう言うや否や、ルナルナの足元に再び魔力の紋様が走る。


「くっ、この程度なら!」


 ルナルナは、再び寸でのところでアイラの魔術を完成前に回避した。

 どうやらアイラの魔術制御は、まだディードリッヒやヴァーミリアに及ばないようで、

 ルナルナの危険察知と反射速度があれば、見てから回避が間に合う程度であった。


「ふえ~、お嬢様ってすっごく反応が早いのです」

「いや、普通魔術なんて覚えたてで実戦投入できるものじゃないだろ。

 むしろここまでのスピードで『組める』アイラが異常なんだが、

 とはいえこの程度なら、まだ魔術自体はそんなに脅威じゃないな」

「はぅ、言いましたね~」


 アイラはルナルナの挑発に口を尖らると、次々に魔術を展開し、発動させていく。

 ルナルナはそれを難なくかわし続け、その程度かと不適に笑った。



 ルナルナはアイラと幼馴染なだけあり、彼女の性格を良く知っていた。

 彼女は気分屋で、嵌った事にはとことんのめり込むタイプである。

 恐らく現在彼女は、覚えたばかりの魔術に相当嵌っているのだろう。

 だからこうして魔術をよけられ続けても、彼女は魔術を使う事にこだわり続けるのだ。


 仮にこの展開が続いても、恐らくルナルナが彼女の魔術でやられる事はないだろう。

 だが、この展開がルナルナに有利をもたらすかと言えば、実はそんなこともなかった。

 これだけ魔術を放っているにもかかわらず、アイラに魔力切れの兆候は見られない。

 このまま彼女の魔力切れを待つにしても、それがいつになるかは予想出来なかった。

 そして、彼女は常にルナルナの攻撃範囲外から魔術を放っているのである。

 ルナルナに攻撃手段が無い限り、間違いが起こるとすればそれはルナルナ側なのだ。

 この状況を打破するには、アイラからルナルナの攻撃範囲に入ってもらうしかない。

 その為に、ルナルナはアイラを挑発しているのだ。


「ふ。そんなへなちょこ魔術しか使えないんじゃ、どうやらアイラが四天王最弱だな」

「あぅ、へなちょこは酷いのです。男の子なお嬢様は口が悪すぎるのですよ!」


 もー怒ったという具合に、アイラは頬を膨らませた。


「お嬢様はとっても酷いからぁ、私のとっておきを見せてあげるのです」


 やっとアイラの直接攻撃が来ると身構えたルナルナは、すぐ裏切られることとなる。

 アイラが放ったのは、またしても何の変哲も無い魔術だったのだ。

 ルナルナは内心ため息をつき、未完成の魔方陣から身をかわした。


「あは、ひっかかりましたねぇ♪」


 何を?と思う間もなく、ルナルナの体をビリッとした衝撃が走る。

 魔術をかわしたはずのルナルナの足は、今正に完成した魔方陣を踏んでいたのだ。


「なっ!魔術の多重行使だと!?」


 ルナルナが踏んだ魔術は、恐らく『麻痺』の魔術だろう。

 ラミアは『麻痺』や『毒』に耐性がある為、直撃しても一瞬硬直する程度で済んだ。


「っ……だが魔術の選択を間違えたな。『麻痺』は俺にはほとんど効かないんだよ」

「くすくす、これだけ隙が出来ればぁ~、それで十分なのですよ」


 背後からかかった甘ったるい吐息に、ルナルナは強烈な悪寒に襲われる。

 次の瞬間には、ルナルナは先ほどの魔術と比べ物にならない、強い衝撃を受けていた。




 ルナルナの耳元で轟々と音が流れ、視界は強いフラッシュが何度も明滅する。

 全身の感覚も無く、上から下まで麻痺したように動かすことが出来ない。

 状況を分析しようにも、彼女は頭までもが麻痺したかのように思考は纏まらなかった。


 徐々にフラッシュは治まり、白く巨大な物体が接近してくるのをルナルナは察知する。

 それはあまりにも巨大で、身をよじろうが何しようが、かわす事は不可能であった。

 程なくしてルナルナの体は、その白い何かに激突する。

 2度、3度と、再び衝撃がルナルナを突きぬけ、白い何かに何度も全身を蹂躙された。

 天地が定まると、ルナルナはそれが白い大地であったことにようやく気がついた。


「くっ…痛ってぇ……」


 体勢が落ち着くと、遅れてきた痛みがじわじわとルナルナを侵食していく。

 着地の際、背中や足、頭を庇った腕に何度か衝撃を受けていたが、

 地面を覆う雪のおかげか、着地自体のダメージは思ったよりも少なかったようだ。

 だが直接攻撃を受けた背中はそうもいかず、鈍重な痛みが強く残っていた。

 即戦闘不能になる程の痛みではないが、積み重なれば今度こそ戦闘不能に陥るだろう。


 痛みと衝撃でバラバラになっていたルナルナの思考が、少しずつ落ち着いてくる。

 それと同時に、彼女はアイラに一体何をされたのか、ようやく理解出来てきた。

 きっとルナルナは、硬直した隙を突かれて木っ端の如く弾き飛ばされたのだろう。

 アイラにカウンターを取るどころか、無防備に背後を取られる程してやられたのだ。



 アイラが使ったのは魔術の多重行使。

 それはセンスと熟練の双方を必要とする、非常に高等な技術であった。

 ディードリッヒなどは、いとも容易く使いこなしていたように見えるが、

 それは彼が『息をするように』転移魔術を使えたから出来る芸当であった。

 本来ならいくら天才のアイラでも、覚えてすぐに出来る技術ではないはずなのだ。

 何かからくりがあるのだろうが、今それを究明することは恐らく出来ないだろう。


 そしてもっと恐るべきは、2つ目の魔方陣の設置位置とタイミングである。

 彼女の魔術には、必ず発動までに一定のタイムラグが存在する。

 しかしルナルナがおとり(・・・)をかわし、着地した瞬間に2つ目の魔術は発動した。

 それは、ルナルナがどのタイミングでどうかわすのか彼女には判っていた事になる。

 恐らくはここまでルナルナを冷静に観察し、癖をつかんだ上で罠を張ったのだろう。

 闇雲に思えた魔術の連発も、実際はこの攻撃を成功させる為の伏線だったのだ。

 普段のふわふわした彼女からは想像もつかない、恐るべき戦闘センスであった。



 しかし、今の攻撃のタネはルナルナも理解した。

 もし次に同じ手段に来ても、魔術の発動自体にラグがあることには変わりないのだ。

 2つ目の魔方陣を『見てから』避ければ良いだけのことである。

 今のやり取りでは一本取られたが、まだルナルナが負けたわけではない。

 ルナルナは這いつくばった体勢のまま、アイラに意識を向けた。


 アイラは先ほどまでルナルナの居た場所に佇み、

 はたはたと羽を動かしながら、倒れたまま動かないルナルナを眺めている。


「はれれ、もしかしてもう終わりなのですか?

 やっぱりぃ、お嬢様は大人しく守られてた方が良いんじゃないですかぁ」


 少し退屈げにそう告げるアイラに、ルナルナはもう一つのことに気付いていた。

 それは、ルナルナが彼女に舐められているという事実であった。


 そもそも魔術をレジスト出来ないルナルナに、『麻痺』という魔術を使う必要は無い。

 それこそ『睡眠(スリープ)』一発で決着がつくはずなのだ。

 そしてルナルナが倒れ伏しただけで、追撃を行わないどころか、

 ルナルナに対して絶対的優位を築ける滞空状態すら、自ら捨てているのだ。


 普段なら舐められているという事実に、ルナルナは少し憤慨していたかもしれない。

 だが今はそれが彼女にとって歓迎すべき、非常に好ましい状況だと捉える事が出来た。

 何せ、先ほどまでとは違って、アイラはルナルナの手の届く範囲に居るのだ。

 その程度でチャンスが掴めるのなら、いくら侮られても良かった。


 当然、ルナルナから先ほどのダメージが抜けることは、しばらく無いだろう。

 しかし鈍く残るダメージを正しく量れる程度には、彼女の感覚も戻ってきた。

 再び起き上がってアイラと対峙しようと思えば、それは容易に叶うだろう。

 だが、ルナルナは貰ったチャンスを確実に生かす為、うつ伏せの状態のまま機を窺う。

 ルナルナの、人化を利用した姿勢変更を使えば、

 この状態からでも一瞬にして最高速で飛び掛ることが出来るのだ。


 ルナルナは視線を上げず、少々離れても認識できるアイラの巨大な気配を探る。

 同時にルナルナは、先ほどと同じく『飛び掛る直前のラミアの自分』を想像する。

 直後、横たわっていたルナルナは褐色の砲弾となり、アイラ目掛けて吹っ飛んでいた。


「あはぁ。やっぱりそう来なくてはぁ、面白くないですよね♪」


 刹那の瞬間。

 ルナルナの眼前に見えたのは、にんまりと笑うアイラの顔であった。

 不意をついて抱きつき、彼女を拘束するつもりだったルナルナは、

 しかし何の手応えを感じることもなく、アイラの体を突き抜けて(・・・・・)いた。


 かわされた!


 瞬時にそう理解したルナルナだが、最高速に乗った軽い体は急に止まれない。

 いかに人化で『姿勢』を変更できても、『慣性』までは消すことが出来ないのだ。

 だが、ルナルナは躊躇なくラミアの姿に戻り、蛇の胴体を接地させる。

 ラミアのしなやかで重い体は、その身に残る慣性を摩擦と熱に転じ、減速させてゆく。

 荒野に積もった雪を広範囲にわたり削り取り、ルナルナの体はようやく停止した。

 再び人化したルナルナがアイラの気配を探ると、彼女は既に中空に舞い上がっていた。



「くすくす、不意打ちするならちゃんと意は消さないとダメですよお嬢様。

 ただでさえお嬢様ってば、わかりやすい性格してるんですからぁ」


 ルナルナの攻撃範囲外に滞空したアイラは、もう一度片手をルナルナの方へと掲げる。


「ちっ、また魔術かよ。だがさっきの手はもう食わないからな」

「本当ですかぁ?じゃあ……これは避けきれますかぁ?」


 再びルナルナの眼前に、アイラの魔術が展開される。


「なぁ!?」


 それは正しくありえない光景だった。

 先ほどは2つだった魔方陣が、今度は視界を埋め尽くすが如く無数に展開されたのだ。

 その数はディードリッヒの転移魔法を越えており、もはや足の踏み場もない程である。

 更には、魔方陣の完成する速度までもが格段に速くなっていたのだ。

 そのあまりの事態に、ルナルナは避ける間もなく魔方陣に巻き込まれてしまった。


「っ!!!」


 完成した魔方陣に触れたルナルナは、来るべき魔術に体を強張らせる。


「……あれ、何だ…これ?」


 魔術を食らうと覚悟したルナルナに、発動した魔術が何なのかわからなかった。

 そう。発動を意味する発光を踏んでも、ルナルナの身には何も起こらなかったのだ。


「ぷ、あっははは!よかったですねぇお嬢様。その魔方陣はハズレだったようですよ」


 頭上でお腹を押さえて笑うアイラから、ついに子供っぽい口調までもが消えていた。

 恐らくは、あれが彼女の素の状態なのだろう。そう、ルナルナは確信する。

 不自然な子供っぽさが抜けた彼女は、悪戯を成功させた子供の様に無邪気に笑った。



 同時にルナルナは、自分の踏んだ魔方陣がハズレだったわけではないと気付いていた。

 今しがたアイラが展開した魔方陣は、すべて(・・・)フェイクだったのだと。

 理由は簡単である。

 あの速度で魔術が組めるのであれば、彼女が最初からそうしない理由がないのだ。

 彼女の放つ魔術の完成速度は、最初に放ったものが本物なのだろう。

 そして今彼女が放ったのは、魔術から作用を抜いた魔術もどきとでも言うべきか。

 アイラの持つ遠距離攻撃は、この魔術とフェイクの2種類があったのだ。

 もしかしたら、今まで避け続けた魔術の中にもフェイクが含まれていたかもしれない。


 そこまで考えた所で、ルナルナはある事に気付き、愕然とする。

 いくらなんでも、アイラにはそれら2つを同時に使うことはできないはずである。

 2種類の魔術の制御は、1種類の時に比べて更に難易度が上がるからだ。

 しかし彼女は、これら二つを同時に発動させる手段を持っているのだ。

 そしてそれは、少し考えれば誰にでも考え付くことであった。


「あれれぇ、顔色が優れませんよお嬢様。もしかして…気付いちゃいましたか?」


 ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべ、アイラは再びルナルナに向かって手をかざす。


 アイラの効果付きの魔術にはタイムラグがあり、フェイクの方はそれが存在しない。

 それは両者を時間差で使うことで、擬似的に同時発動が出来ることを意味していた。


「うふふふふ。さぁて、一体どれが本物なんでしょうね?」


 再びルナルナの視界が、無数の魔方陣で埋め尽くされた。

 当然ルナルナにはそのほぼ全てがフェイクであることはわかっている。

 しかし、ルナルナにはそれを無視することは許されなくなったのだ。

 恐らくこの数え切れないフェイクの中に、ただ一つだけ本物が紛れているのだ。


「ちっ、あいつの本性どんだけえげつねぇんだよ!」


 ランダムに明滅する魔方陣の中を、勘に任せて動き回るルナルナだった。

 しかし…


「ざぁんねん。ソレ(・・)がアタリなんですよ、お嬢様」


 アタリと言われた魔方陣を踏んだ瞬間、ルナルナの体にビリッと衝撃が走る。

 耐性が強いとはいえ、レジスト出来ないルナルナは『麻痺』の効果で硬直した。

 その一瞬の間に、片足を振りかぶったアイラが、突如ルナルナの眼前に現れる。


「え~い♪」



 先ほどの激しい衝撃の正体をくらい、ルナルナの体は再び夜空に吹っ飛ばされた。





たまには俺TUEEEしたいのに、思った以上にボコボコです。おかしいな(笑)

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