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黄金の月の蛇姫様  作者: みつきなんとか
第4章 北へ
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第30話 現状の報告

 

「しかし、何だってエルドがこんな所の『ボス』やってたんだ?」




 ガルタンの話では、人里に近いこの棲みかに一月前からこんな化け物がいたのだ。

 ルナルナの疑問に、エルドはやれやれと言った様子で肩をすくめる。


「仕方がないでしょう。

 ここの『ボス』が『犯罪』を犯したので、大急ぎで代わりを探してる所ですわ」

「そんなのすぐに見つかるんじゃないのか?」

「それがここ最近急に『犯罪』を犯す者が増えてね、ちょっと今人事が滞ってるの」

「そんなに増えてるのか?」

「ええ、ここ数ヶ月で5倍ほどになってますわ」


 エルドが言うには、世界各地で急に人間に手を出す『ボス』が急増しているらしい。

 魔王ヴァーミリアはそれを取り締まるべく、今まで以上に飛び回り、

 そしてエルドや上層の者が、不在となった各地のボスを兼任しているということだ。

 エルドは現在、ここ以外にも10数箇所のボスを兼任している状態らしい。


 そしてその話にはルナルナにも心当たりがあった。

 ルナルナはウエストダウンとオーウェルシティでの出来事をエルドに報告した。


「魔王に従わぬ者達に『新天地』。裏で誰かが手を引いている可能性が高いですわね」


 ルナルナの報告を受け、エルドはそんな言葉を漏らした。

 そしてそれはルナルナも感じていたことでもあった。

 事はすでに偶然で済まされるレベルではなくなっていた。

 しかし、ここでエルドはルナルナにぴしゃりと言い放った。


「この件にお嬢様は首を突っ込まなくてもいいですわ。

 魔物達の不始末はこっちで片付けます。

 その身に火の粉が降りかかったら、四天王に何とかしてもらうといいでしょう」

「う、本当にあいつ等を呼ぶのか?」

「当然でしょう、この子がモノになるまでは彼らについてもらいます」

「はぁ…きついなぁ」


 ルナルナはため息と共に頭を押さえる。

 彼女にとっては、彼らと顔を合わせるだけでも疲れるのだ。

 これから行動を共にしなければならないとなると、一体どれだけの心労がかかるか、

 ルナルナは既に憂鬱な気分になっていた。




「そういえばお嬢様の方こそ、こんな場所に何の用だったのかしら?」


 エルドの言葉に、当初の目的を忘れていた事をルナルナは思い出した。


「そうだ、北を回る為に火竜の鱗が必要なんだ。悪いけど1枚もらえないか?」

「ああ、お嬢様は変温体質ですものね、それは私も失念していましたわ」


 エルドはそう言ってルナルナに背を向け、ごそごそし始める。


「はい、これでいいのかしら」

「ありがとう……って多くないか?」


 ルナルナが手渡されたのは、色とりどりに輝く8枚の鱗であった。

 それぞれの鱗には、それぞれ違った属性が宿っていた。


 火竜を想定してやって来たルナルナ達だったが、エルドは正確には火竜ではなかった。

 彼女は火だけでなく、全ての属性を操ることの出来るドラゴンなのだ。

 ちなみにそんな事が出来るドラゴンを、ルナルナはエルド以外に知らなかった。

 何から何まで規格外な彼女であった。


「持っていってくださいな。何かの素材に使ってもいいし、

 売ってお金に換えてもかまいませんわ。おそらくそこそこの価値になるでしょう」


 そこそこどころか、これだけで家が建つだろう。

 エルドの高すぎるお駄賃を、ルナルナは有難く受け取った。




「じゃあ俺はそろそろ戻るかな」

「うう、お姉ちゃん…」


 笑顔のエルドに首根っこを掴まれたディードリッヒは、寂しそうな声を漏らした。


「あー…ディードリッヒも、多分これから死ぬほど大変だろうけどがんばってな」

「ボク絶対もっと強くなって、すぐに戻ってくるからね!」

「あら頼もしい。では私も張り切ってスペシャルなメニューを組んであげましょう」

「…お手柔らかにしてやってくれよ、本当に死にかねないからさ」


 これから千尋の谷より更に深い場所へ叩き込まれるであろう魔人の少年に、

 ルナルナは心から同情した。




「お嬢様、ずっと気になってたのだけど、その荒い口調は元に戻せないのかしら(・・・・・・・・・・)?」


 白い部屋からルナルナが出ようとした時、エルドに背後から声を掛けられた。


「俺はこっちのほうが素なんだよ。エルドだって知ってるだろ」

「それは知ってますけど、お嬢様はこれから人間のお偉方にも会うのでしょう。

 まさかその時にもそんな口調で通すつもりじゃないでしょうね」

「そのつもりだけど、何か問題でもあるのか?」

「大アリですわ、何を考えてますの!」


 突然、強い語調でルナルナは(たしな)められた。


「あなたは魔界の代表として人間と会うのですよ。言葉遣いはその第一印象。

 それをこんな粗野なもので通すだなんて以ての外ですわ」

「フ、フランクに接したほうが親しみが持てるかもしれないじゃないか」

「それが通用するのはそれを望む者だけですわ。皆が皆そうとは限らないの。

 ちゃんと相手を見て、ちゃんと対応なさい。

 それともお嬢様はその魔眼の力で、全てを篭絡するつもり(・・・・・・・)なのかしら?」

「う、そんなつもりは無いけど…」


 鋭い剣幕でまくし立てるエルドにルナルナはたじたじになる。

 その空気は、ルナルナが小さな頃から繰り返されてきたものにすっかり戻っていた。


「わかってるならちゃんとしましょう。当然出来るわよね、ルナルナ殿下(・・・・・・)

「……はい」



 この世で最も苦手な笑顔を浮かべるエルドに、ルナルナは力なく頷いた。



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