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黄金の月の蛇姫様  作者: みつきなんとか
第4章 北へ
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第25話 致命の弱点

 

 北へ行こうランララン♪


 ――と意気揚々と北に進路をとり、快調に馬車を進ませていたルナルナ達一行は、

 現在絶賛南下中であった。




 ルナルナの定めた次の目的地は、北の巨大国家であるセレンズ連邦だった。

 ここもオーウェルシティとは別の意味で、勇者に名残の深い土地であった。

 その国は伝説の勇者、すなわち魔王ヴァーミリアの初恋の人が生まれ育ち、

 そして最後に行方を眩ませた土地でもあった。


 その道程はかなり過酷で、整備はされているものの険しい山道を、

 それこそ何日もかけて踏破しなければ辿り着けない天険の地であった。

 冬であれば封鎖され、一般人は通れなくなる険しい山道である。

 今は暖かい季節だったので、通行自体は可能だったのだが…




「キャー!誰か、お姉様が目を覚まさないの!」

「あーこれはやばいね、お姉ちゃんってそういう体質(・・・・・・)だったんだ」

「どうしよう、お姉様の体がまるで死体みたいに冷たいわ。誰か!誰かー!」


 ある一定の気温を下回ったところで急にルナルナはその活動を止め、

 そのまま死んだように眠り始めたのだ。


 そう、それはまるで――冬眠するかのように。




 ラミアはもともと南の暖かい地域にしか生息していない。

 彼女達は暑さに相当強い体をしているのだが、逆に寒さには極端に弱かった。

 いわゆる自力で体温を調節する機能が備わっていない為である。

 それでも魔術などで自身の周りを暖めれば何とか活動は可能なはずなのだが、

 残念な事にルナルナは魔力を操る能力も備えていなかった。

 その結果、彼女の体は生命保持の為に冬眠を始めてしまったのだ。


 ルナルナの様子を受け、御者であるポールはすぐさま馬首を返し、

 一路暖かい南の方向へと引き返していた。

 山を下った所でルナルナは再び目を覚ましたが、いつもの調子と程遠いその様子に、

 大事を取って山の麓から程近い集落で一泊する事となった。




「ねぇお姉様、本当に大丈夫?」


「んー…だいじょぶー……」


 重ね着しすぎて雪だるま化したルナルナのその眠そうな声に、

 アリスとディードリッヒは同時に首を横に振った。


「まさかお姉様がここまで寒さに弱いとは思わなかったわ。南の人って皆そうなの?」

「いやーそんな事はないはずなんだけどね、

 そこはルナルナ姉ちゃんの種族がちょっと特殊なだけだと思うよ」

「そういえばあの暑い中でもずっと厚着してたもんね。随分と極端な種族なのね。

 て事は、ここより北に行くにはお姉様を暖めながら進まないといけないってこと?」

「まあそういうことだね」

「あんたは、そういうは魔術使えないの?」

「うーん、そんな魔術は覚えてないし、使えたとしても道中暖め続けるなんて無理だよ。

 お姉ちゃんならともかく、ボクの容量じゃ途中で魔力が空になっちゃう」

「ふん、使えないわね」


 そこで二人はしばし睨み合いを始めるが、先にディードリッヒがため息をつく。


「とにかくこのままじゃ先には進めないね。

 ここで一旦解決策を探すか、それとも北を諦めるか…」


 冷静に状況を分析するディードリッヒに、まぶたの重そうなルナルナが抗議の声を上げた。


「やらー、おれは北にいくのー。こんなのなんともないのらー…」


 言い終わるかどうかの所でルナルナの座らない首はカクンと落ちる。

 彼女はどうやらまだ寝ぼけている状態のようだ。

 聞き様によっては甘えるような彼女の声色に、二人はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「わ、私…このままでもいいかもしれない」

「こんなお姉ちゃんも…って、ダメだろ!今は解決策考えなきゃさ」

「何よ良い子ぶっちゃって、じゃあこの状況をスパッと解決できる案を出しなさいよ」

「出ないから今こうやって悩んでるんじゃないか!」

「ふん、使えないわね」

「なにおぅ!」


 二人はそこから、再び口論を始める。

 結局その日は、これといった解決策は出てこなかった。




「お姉様、何とかなるかもしれないわ!」


 次の日、買出しから戻ったアリスが開口一番そう告げた。


「ガルタン=ギルスって武器職人がこの村に住んでたの。聞いたことない?」

「あのガルタン!?どこかの王家御用達って聞いてたけど何でこんな所に」


 アリスの言葉にディードリッヒが反応する。

 どうやら結構な有名人らしい。


 その武器職人は特殊な武器や防具を作る事で有名だった。

 さまざまな素材を組み合わせて、まるで魔法のような効果を生み出すのだ。

 術師の魔術の威力を増幅させる杖。

 驚くほど速く動けるようになる装束。

 岩をも容易く真っ二つに出来る斧。

 そのすべてがオーダーメイドで、

 持ち主にしか効果を得られない不思議な道具の数々をこの世に生み出していた。


「なるほど、彼の作る物なら確かにお姉ちゃんの問題も解決できるかもしれないね」


 これなら何とかなるかもしれないと、ディードリッヒも大きく頷いていた。

 善は急げと、3人は早速その武器職人の元を訪れる事にした。




「ここで本当に合ってるの?」

「間違いないはずよ」


 ディードリッヒの訝しげな声に、アリスは自信満々に応える。

 彼が疑問に思うのも無理はなかった。

 それほどにその店はみすぼらしかったのだ。

 一見ただの民家である。

 表札のように武器のマークと小さくガルタンと書かれてるだけの看板が扉にかかっていた。

 どう見ても伝説の武器職人が居るような店には見えなかった。


「ごめんくださーい」


 アリスが先導してその扉をノックする。

 しばらくの沈黙の後、ドタドタと慌しい足音が中から響き、勢いよくその扉が開かれた。

 中から現れたのは小柄でずんぐりむっくりとした体系の中年の男性だった。

 ぼさぼさの黒髪に大きなぶつぶつの鼻。

 立派と言うよりは無造作に伸びた口髭。

 酒でも飲んでいたのだろうか、顔は全体的に赤かった。

 身長はルナルナより少し高いくらいなので、男性としては相当小さな部類になるだろう。


「あの、すみませんガルタンさんのお店で間違いないですよね?」

「……」


 恐る恐るたずねるアリスに、彼は彼女の顔をまるで見定めるかのように凝視している。

 突然彼はため息を吐き、片手を挙げてクイっと親指と人差し指を入れ替える動作をする。


「チェンジで」




 次の瞬間、アリスは赤ら顔の中年親父を殴り飛ばしていた。



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