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黄金の月の蛇姫様  作者: みつきなんとか
第3章 吸血鬼の街
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幕間 - 追憶の情景4

本日は2話更新です。

「幕間 - 追憶の情景3」を未読の方はそちらからお読みください。

 

「で、どうかなルナルナちゃん。結構カッコイイの選りすぐったんだけど」


 俺はうず高く積み上げられた肖像画を前に頭を抱えていた。





 俺が魔王の娘として産まれて約2年半の歳月が流れていた。

 つい最近子供も儲けられるようになり、魔物としてはもう成人という事になったらしい。

 実際未だ成長を続ける胸部の脂肪の塊がそろそろ邪魔でしょうがない。

 そのうちお母様のような自重の欠片もない体型になってしまうのだろうか?

 …なるんだろうなぁ。この体はお母様のクローンみたいな物って言ってたし。

 困るなぁ…


 そして魔物として成人した事により、俺の魔界での扱いは変わったらしい。

 それは子供から一人の女性として見られるようになったという事だ。

 その結果が目の前に積み上げられた見合いの申し込みである。




 身体能力は鍛える事でいくらでも伸ばす事が出来るが、魔力は別である。

 これは人間にも魔物にも共通していることだった。

 魔力を扱う能力は鍛える事で伸びるが、魔力総量は産まれた時点である程度決まっていた。

 そしてそれが遺伝によって決まるということは、もはや誰もが知っていることだった。


 もともと魔力というもの自体、魔物の物だったらしい。

 魔力を持つ人間ということは、その体に魔物の血が流れているという事と同義なのだ。

 つまり生まれつき莫大な魔力を保有する自分は、

 魔物人間問わず喉から手が出るほど欲しい優良物件なのだそうだ。



「ルナルナちゃんってばどこからもモテモテね、お母さんちょっと妬けちゃうわ」

「何言ってんだよ、お母様にだって来てるだろそういう話。それこそこれと同じくらい。

 大体いつまで待ち続けてんだよ痛々しい、いいかげんにもう諦めろよ。

 俺は新しくパパが出来ようが妹が出来ようが別に気にしないからさ」

「ッ!…わっ、私の話はいいのよ、今はルナルナちゃんの事のほうが大事なんだから!」


 俺の言葉に彼女はビクンと体を震わせ硬直するが、一瞬で切り替えて話を戻す。

 最近存外に彼女は強いという事を知ったので、この程度の軽口は叩くようになった。



「やっぱりあれかしら、男の子と付き合うのは嫌?ルナルナちゃんの前世は男の子だもんね」

「ああ、正直嫌悪感しかないね」


 実際男を見ても、異性として魅力を感じる事も欲情する事もない。

 だからと言って女の子に欲情するかと言えば、この体になった影響なのかNOなんだが。


 …あれ、このままだと俺は誰とも恋愛できない?



「うーん困ったわね、このままじゃ親娘(おやこ)揃って行き遅れとか言われちゃうわ」


 世間体かよ!


「冗談はともかく、親としてはルナルナちゃんには幸せになって欲しいわけなんだけど」

「別に結婚する事だけが幸せってわけでもないだろ?」


 俺の言葉が聞こえてるのかどうか、お母様は「んー」とか「うーん」と唸っている。


「お母さんも結婚の幸せは想像でしかわからないけど、

 でもね、ルナルナちゃんがお腹にいる時は、それはもうすっごく幸せだったわ。

 せっかく女の子に産まれたのに、それを知らないのはとってももったいないと思うの」

「そんなの想像出来ないし、したくもない!俺は一生独り身でいいんだ!」


 なんというか言っててかなり寂しくなる台詞だと思いつつも、俺は断言する。

 そして再びお母様はうんうん唸りだす。


「いっそのこと無理やり魔力を枯渇させて…

 いやいやそれで出来たとしてもルナルナちゃんに嫌われちゃったら、私立ち直れないし」

「ん、何か言った?」

「え?いやなんでもないわオホホホホ」


 わたわたと頭を振り、再びぶつぶつと独り言を呟くお母様であった。

 魔力がどうのとか聞こえたが、今この話とどう関係あるのだろうか?



「そうだ、ルナルナちゃんも転生の秘術覚えてみる?」

「はぁ!?」


 突然彼女は名案とばかりに手を打ち、顔を上げた。


「魂を扱うからちょっとコツがいるけど、きっとルナルナちゃんなら問題なく覚えられるわ」

「いやだから、覚えられるとかそういう話じゃなくって」

「だって独り身だとこの方法しかないじゃない」

「だから俺は子供が欲しいなんて一言も言ってないじゃないか!」


 俺の言葉に彼女は口を尖らせて不満そうな声を上げる。


「嫌よ、私だって孫の顔が見たいもの!」

「それこそお母様がもう一人産んで、その子になんとかしてもらえばいいじゃないか!」


 いつの間にかどっちが子供を産むかという話になっていた。

 なんだこれ?



「ねえ覚えましょうよ~、ほら先っちょだけでいいから」

「なんだよ先っちょって…」



 両手をワキワキとさせ迫ってくる母親に、俺は再び頭を抱えた。



今日は魔王分多めです。

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