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黄金の月の蛇姫様  作者: みつきなんとか
第2章 サライ王国
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第8話 暗殺の目的

 

「大事件じゃないか」


「まあまあ、こうやって無事だったんだから大した事ないよ」




 サウザンブルグ城の一室に通されたルナルナは、

 後から入ってきた青年に向け、呆れたように言い放った。


 国王暗殺未遂という大事件である。当然城内は各所大変な事になっていた。

 「すぐに行くから」と言われてからルウィンが現れたのは2時間後。

 まだまだ執務は山積みだったようだが、体調面の不安を理由に切り上げてきたらしい。

 実際先ほどまで死にかけていたのだから、こんな所に来ている場合なのかと問うルナルナに、

 ルウィンは笑って応えた。


「君は同盟国である『魔界』の姫君、本来国賓級の人物だよ。

 それに今回は私の命の恩人でもあるからね、ないがしろになんて出来るわけないでしょ。

 …とは言っても、そこのじぃや(・・・)は良い顔はしなかったけどね」


 ルウィンの後ろに佇む白髪に白い髭を伸ばした初老の男が、そのじぃやとやらなのだろう。

 彼はルウィンの言葉にピクリと眉を動かした。


「ルウィン様のわがままに振り回されるのは慣れてますがね、

 あなたは一国の国王なのですから、もう少し思慮と節度と品位の伴った行動をですね」

「はいはいわかってるって、有難い忠言は後でゆっくりと聞くからさ」


 ルウィンはその話は聞き飽きたとばかりに片手で制して言葉を遮る。

 彼も相当苦労してそうだと、ルナルナは心の中でじぃやに同情した。



 現在この室内に居るのはルナルナとルウィン、そしてじぃやと呼ばれた男3人のみである。

 アリスには別室で待機してもらっている。

 ルウィンは別に居てもらってもかまわないと言っていたが、

 ルナルナの方から外してもらうように頼んだのだ。


 おそらくここでの話は、ルナルナが魔物であるという事にも当然及ぶだろう。

 ずっと隠し通すつもりはないが、今はまだその事実を明かす時ではないとルナルナは考えていた。



「では改めて歓迎しようルナルナ姫。君の事は母君から聞いているよ」

「その姫ってのやめてくれないか?俺の事はルナルナでいい」

「そう?じゃあお言葉に甘えて」


 ルウィンがにこっと笑うと同時に、後ろのじぃやは渋い顔になる。

 しかしルナルナは前世では何の身分も持たなかった身の上である。

 魔王の娘として生を受けてからも、それ程時間が経過しているわけでもない。

 ただ、一応彼女もそういった教育は一通り受けている。

 実はルナルナ自身、魔界の姫として相応の演技(・・)をすることも可能なのだが、

 そういうものが嫌になって旅に出たと言う側面もある。

 出来うる限りはそういった堅っ苦しい案件から逃れたいと考えているルナルナであった。



「まずはもう一度礼を言わせてもらおう。危ない所、君達のおかげで助かったよ」

「俺は大した事はやってない。礼なら適切な処置をしたアリスに言ってくれ」

「ベレス家のお嬢さんか。そうだね、彼女には後で何か褒美を与えないとね」

「しかし暗殺なんて穏やかじゃないな。何か狙われるような心当たりはあるのか?」


 一国の国王の暗殺である。

 国王にまでなると色々狙われる理由があるのかもしれないが。

 例えば利害を違える他国か、はたまた悪政に窮した民衆の差し金か。

 ルナルナがいくつか予想を並べていると、ルウィンは少し困ったように笑って答える。


「心当たりは実際いくつかあるけどね、おそらく本命は君の母君との密約の件かな」

「お母様との密約って…ああ、あれか」


 ヴァーミリアをトップとする魔界とルウィンの治めるサライ王国との間には、

 非公式の密約が交わされていた。

 それはヴァーミリア自ら魔物を管理して人間に手を出させないかわりに、

 死罪にあたる人間の身柄を魔界に譲り、その裁量をヴァーミリアに委ねるというものだった。

 魔王との取引などまだまだ公には出来ない為、当然この密約は一般人には公開されていない。

 ということは、暗殺を企てた人間はこの国の機密を知る人間ということになる。


「それって、俺がここにいるとまずい事にならないか?」

「うん、だから君がここにいるということは、公はおろか内部にも伏せることになる」

「うわぁ、別に歓迎されたかったわけじゃないけど、これは色々前途多難を感じるね」

「上層部を纏められていない私の不手際だ。

 魔界との融和の先駆けとなるべき国の国王としては恥ずかしい限りだよ」

「いやいや、お母様の突拍子のない話を一番最初に飲んだ時点で大したものだと思うよ」


 ヴァーミリアが魔王になってから進められて来た、人間との講和政策。

 その話に一番最初に乗ってきたのが、このサライ王国であった。

 本来ならばこの国が魔物であるルナルナにとって一番近しい国のはずだ。

 だが現状は内部にすらその繋がりを認めさせることが出来ない。

 歩み寄りは魔界側から行われたにもかかわらず、である。

 その現実にルウィンは苦い顔をし、ルナルナは先の苦労を考えると思わず溜息をついてしまう。

 ルナルナがこれから回る予定の先は、当然この国だけではないのだ。


「ルナルナには護衛をつけるつもりだけど、下手な事を考える人間がいるかもしれない。

 十分注意して欲しい」

「ああわかった。気をつけることにするよ」


 何しろ今回の下手人は、国王の護衛を突破するような腕前の持ち主である。

 決して護衛がいると言って油断できるような状況ではないと、ルナルナは気を引き締める。




「しかし、ルナルナは本当に母君にそっくりなんだね。初めて見たときは驚いたよ」

「ああ、俺は生まれ方が少し特殊でね、実際この体はお母様のクローンに近いんだ」


 いくつか他愛のない話の後、ルウィンがルナルナの見た目について触れる。

 ルナルナはヴァーミリアの転生の秘術により誕生した。

 それは一般の生殖のプロセスとは異なり、母体と他者の魂のみで行われる。

 ゆえに生まれてくる子供の外見は、ほぼ例外なく母体と瓜二つに育つらしい。


「もしかして…転生の秘術かい?」

「あれ、知ってたんだ」

「魔王に配偶者がいないという話は聞いていたからね、

 君の話を聞いて、色々可能性を調べてみたのさ」

「へー、暇なもんだね」

「私にとっては少し重要なことだったからね」

「ふーん」


 それまでどこか余裕のある雰囲気だったルウィンの様子が、少し浮ついたものに変わる。

 そのルウィンの様子にルナルナは「ん?」と思う。


 素顔を晒した時、外見に反応したもののルナルナ自身には特に反応しなかったこと。

 魔界から講和の話があった時、この国が1も2もなく飛びついたらしいこと。

 ルウィンがまだ未婚であること。


 と、そこまで思考を巡らせた所で、ルナルナは考えを打ち切る。

 どう考えても碌な答えが出てきそうにない。



 目の前で嬉々として『お母様』の事について聞いてくるこの国のトップに、

 ルナルナは軽く溜息をついた。


昨日更新できなかったので、今日はあともう1話くらい投稿しようと思ってます。

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