笛の音
なんだかすごく怒っていたような気がする
いや…怒っていたというよりあれは絶望に近い。
足が重くもう何も出来ない状態…
ハッとなって目を開けると広い草原に立っていた
周りには送電塔がこちらを見下ろしていた
気が付いたら遠くまで引っ張られていたのか…
袖をみるとまだ何かに掴まれていた
よく見るとそれは人間であり小さな中年男性であった
キョロキョロと辺りを見渡している
「もう大丈夫ですよ」
手を離し、中年男性は顔をあげてそう言った
帽子の下から温厚そうな顔が覗いた
「あーどうも…先ほどはなんと言うか…」
頭を掻きながら男性にお辞儀をした
それにしてもさっきのはなんなんだったのだろう…
「あのすみません、ここってどこなんですか?」
なんだか迷子みたいで聞くのが恥ずかしかったが、聞かない事には始まらない
それになんだが早く帰らねばならない気がした
「ああ、ここですか?」
男性は草原の真ん中に立ち、懐から何かを取り出した
「ここはですね」
手に持っていたのは体育の時間に使うような小さい笛
それを口にくわえ、ピーっと鳴らした
草原に笛の音が広がる
地面から不思議な音がし、目を向けると
「……!」
地面から和風の建物が次々と生えてきた
屋根に乗っていた土が私の頭を上に落ちてきた
目に入らないよう慌てて振り払った
「なっなんなんだこれ!」
男性の方を見ると何事も無いように家に入る
玄関には表札がかかっていた
「……フドウさんの家…?」
「はい、私の家です」