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そんなんだから好きな子に拗ねられるんだよ、バカ

次回、完結です。



「もうあんなやつのことなんか、知るもんですか。」


わたしはハンナに向かって言った。

「そのことはもういいわ。ねえ、ハンナはなぜこちらまで足を伸ばしたの?」


ハンナはぱちぱちと眼を(またた)いた。

「兄さんが忘れものをしたから、大学まで届けに行ったの。近ごろは何やら研究で忙しいらしいみたいね。」


ああ、そうか。

ハンナはわたしより二つ上で、大学に行っているお兄さんがいる。

開けっぴろげで、とっても親しみやすい人よ。

会うたびに肩車をせがむわたしを嫌な顔一つせず肩に乗せて家の中をあちこち連れまわしてくれてた。


「ねえ、これから空いている?良ければ一緒に帰りましょう。」

「もちろん!ハンナと帰れるなんて、すっごく素敵。」


ハンナは、頭も良くて、やさしくて、すっごく綺麗な人。

わたしの従姉妹なのだけれど、こちらに越してきたのはつい最近なの。

これまでよりも頻繁に憧れの人に会えて、このごろはとても幸せ。


「ねえ、ハンナはこのワンピース、どう思う?」


どきどきしながら返答を待つ。


「とても似合ってる。かわいいじゃない。」


目の前で光が弾けた気がした。


「ほんと?」

「もちろん。いつもよりちょっと丈が長いのね。大人っぽいわ。」


ハンナはころころ笑った。


「最近ね、知り合いに『妹さん、貴女に似ていらっしゃいますね』って言われることがあるの。でも、私に妹はいないから、初めてのときは怪訝に思って、『そんなはずないですよ』とお伝えしたの。で相手の方が仰ったのは、『いや、ケイシー・ストリングスさんですよ。笑ったときの目元なんかそっくりだ。』ですって。」


「ファミリーネームが同じだからって、みなさん間違えてしまうのね。」


それからいろんな話をしたの。

家族のこと、趣味のこと。

ハンナの家で飼っている犬のペイジと猫のキャメルの喧嘩がこのあいだとうとう59勝0敗に達したこと。

ペイジの全勝だったのですって。

60勝まで行ったら、お祝いにペイジのためにステーキを焼いてやろうって料理人が言ったそうよ。


「ジェレミーと喧嘩をしたの?」

どきっとした。


「…ええ、まあ。」


「いったいどうしたの。」


「ジェレミーったら、ひどいのよ。わたしが何を言っても『うん』か『ああ』しか言わないの。このワンピースも、似合ってるかきいたのに、何も言ってくれない。わたしのことなんかきっと嫌いなのよ。」


ハンナは黙って聴いてくれている。


「それで、そのことを咎めたら口げんかになってしまって。わたしもかっとなって言い過ぎてしまったのは認めるわ。でも、あのひと、『婚約破棄だ!』って言ったの。そこまで言う必要ある?わたし、本当に悲しかった。」


胸のうちを吐き出したら、じんわりと胸に落ちる悲しみだけが残ってしまった。


ハンナは目を細めて言った。


「まあ、一回ジェレミーと落ち着いて話してごらんなさいな。嫌いって直接言われたわけではないのでしょう?」

「ええ。」

「かっ、となって思ってもないことを相手に伝えてしまうのは、悲しいけれど、よくあることよ。私もいまだにやってしまう。」


「ほんとう?」


驚いた。

ハンナのような人は、他人を傷つけるようなことは絶対にしないに違いないと思ってたのに。


「もちろん。私も彼と喧嘩することなんて、よくあるわ。」


ハンナは、ずっとお付き合いしていた人と、次の春に結婚するの。

お相手には何回か会ったことがあるわ。穏やかで礼儀正しい人。

きっと、仲の良い素敵な夫婦になるに違いないって、思ってる。


でも、ハンナでさえ、そうならば。

もしかするとジェレミーも、そうだったのかもしれない。


わたしの帰り道とハンナの帰り道が別れるところに差し掛かると、ハンナはくるりとこちらを向いた。


「とにかく、ちゃんと話してみなさいね。落ち着いて、我を忘れそうになったら、深く息を吸ってみて。」


そう言い残して、ハンナは去っていった。



新連載開始いたします。

「叔父が遺したガラクタだらけの古道具屋、実はダンジョンだった件」

毎週木曜17:00更新です。

是非ともご覧ください。


↓以下、あらすじです。


叔父が死んだ。

叔父が遺したものは、値も二束三文しかつかないようながらくたの詰まった古道具屋。

駅まで徒歩1時間、周りは寂れたシャッター街。こんな物件持っててもしょうがない。しかし、いかんせんガラクタが多すぎて、これを片付けないことには売り払おうにも、それもできない。

仕方がないので、出張で海外に住む両親に代わり、大学生の俺が古道具屋の掃除をすることになった。

ところが、この古道具屋は異界に繋がるダンジョンだったのだ!この物件を売却するには、ダンジョンを攻略して、異界との扉を閉じる必要があるらしい。

やたらとへこへこ擦り寄ってくる小役人臭いキジトラ、やたらと口説いてくるヘビ(年齢不詳)、やたらとダンジョンを攻略させたがるお偉いさん(服のセンスが壊滅的)、エトセトラエトセトラ。しかも、ずっと気になっていた同じ学科の赤羽さんが何故かダンジョンに落ちてたんだがどうすれば良い…?

成り行きで巻き込まれた一般人の俺が、魔物と戦い、悪徳業者を成敗し、偉い人にぺこぺこ頭を下げる。


果たして俺はダンジョンを無事攻略し、物件を売れる状態まで持っていくことができるのか!?

奇想天外抱腹絶倒の物語、いざ開幕!!!


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