この腑抜け!!!!
結論から言うと、スイーツカフェは最高だった。
大好きなアイスが大量に載ったパフェ。
いい香りのコーヒー。
店を出てしばらく経ったたいまも、正直言って余韻が抜けない。
「珍しいね。ジェレミーと一緒じゃないの。」
思わぬ声に振り返る。
「ハンナ!」
抑えようとしても声が弾んでしまう。
「ジェレミーったら酷いのよ。今日ね、新しいワンピースをおろしたから、どうかって訊いたの。」
「それで?」
「そしたら、『あー、』とか『えー』とかずっと言ってるの。」
そう。
とにかく酷かったのだ。
わたしはノックに応えてひょっこり顔を出した。
玄関には、上着のポケットに手を突っ込んだジェレミーが立ってる。
「おはよう」
「ああ」
「ずいぶん早いのね。約束の時間までまだ15分もあるじゃない。」
「別に」
いきましょう。そう言ってわたしはジェレミーの腕を取った。
黙って歩く。
どきどきしながらさっきから気になってたことを問いかける。
「ねえ、このワンピースこないだ買ってもらったの。変じゃない?」
いつもは膝丈だった裾が、くるぶしまである。
小さな花を一面に散らした生地も大人っぽくてお気に入りだった。
もう15歳になったんだから、そろそろ長い裾も着てみたいの。ねえお願い。お願いったら。
ママに頼み込んで買ってもらった。
ジェレミーはあさってのほうを向きながら言った。
「別に」
「似合ってない?」
「いや」
「本当に思ってる?」
「ああ」
とてもそうは見えない。
「なによ。思ってもないこと言わないでちょうだい。」
ジェレミーは驚いたように刮目した。
「思ってないってなんだよ。」
「ほんとは似合わないって思ってるんでしょ。」
「そんなことない」
「うそつき」
「なんでだよ」
「いいわ、どうせわたしはかわいい服は似合わないのよ」
「悪かった」
「悪かった?それも本心じゃないんでしょ。どうせあなたはわたしのことなんか嫌いなんでしょ。親に決められた婚約で、いやいやお付き合いしているんだものね。」
「ふざけんな。さっきから好き勝手に言いやがって。お前なんか婚約破棄だ!」
彼の言葉を後ろに残して、わたしは走り去った。
ええそうね、そうでしょうとも。
どうせ貴方が好きなのはきゅるんきゅるんの眼で上目遣いに見上げてくる女の子でしょうとも!
この間うちに来た取引先のお客さまが、「女はかわいげがあって大人しいのがいい。こちらがいうことに黙って従うようなのが最高だ。」って言ってたもの。
男の人ってきっとみんなそのような女性が好きなのね。
わたし知ってるのよ、斜向かいのお家のデイジー・プリンストンがあなたのことちらちら気にしてるの。
他のお友達の前ではたくさん喋るあなたが、わたしの前ではぜんぜん喋らなくなったこと。
気づいてるんだから。




