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三年後



頬に寒風が当たる。


ちらちらと舞う粉雪は、クリスマスらしさを演出するのに一役買っていた。


駅のホームには、クリスマスに帰って来る家族を待ち侘びる人々で溢れている。


わたしはマフラーに手をやって、崩れていたのを整えた。


とても長いこと待っていたような気もするし、そうでもなかった気もする。


遠くのほうから汽車の音が聞こえてくると、待っている人々の雰囲気がぱっと華やぐのがわかった。


やがて黒々とした車体が、小さな点であったのがだんだんと大きくはっきりと見えるようになり、しゅうぅと音を立てて留まる。


客を載せた車両へ群がる人々の波をかき分けて、わたしは愛しい人の姿を探した。


黒のハットにグレーのトレンチコートをあわせた、見覚えのある後ろ姿を見つけてわたしは叫んだ。


「J!」


ジェレミーは振り返るとわたしに向かって手を挙げ、こちらへ歩いてきた。


「やあ、ケイシー。会いたかった。」


「わたしもよ。」


わたしたちは、横並びで駅の外へ歩く。


「ジェレミー、大学はどう?」


「ああ、相変わらずだ。」


ジェレミーはにやりと意地悪く笑った。

「恋人を欲しがってるやつか、できても長続きしないやつが結構多くてね。僕に筆まめでしっかり者の奥さんがいることを話すとやつらにすごく羨ましがられるんだ。」


「あら、いやだ。でも、あなたのお友だちならわたしもお会いしてみたいわ。こんどの夏の長期休暇にでも、つれていらっしゃいよ。」


「そうかい。君がそう言うなら連れてこよう。僕としてはあまり気が進まないが。」


「まあ、どうして。」


「君はこんなに綺麗なんだぞ。横恋慕してくる者がいないとも限らないじゃないか。」


呆れて声も出ない。


「考えすぎよ。とにかく、一度うちに連れていらっしゃい。あなたがお世話になっているのだから、わたしもお礼を言いたいの。」


ジェレミーは両手を上げて降参の意を示した。

「そうかい。わかったよ。今度連れてこよう。」

そして、ふと思い出したように続けた。

「そういえば、大学の繋がりで女性の地位向上を目指す運動をしている方と知り合ったんだ。」


「初めて聞く話だわ。おひとりでなさっているの?」


「いや、数十人のグループで活動しているらしい。うちは妻が夫と共同で商家を経営する慣習があるだろう。そのことをお話ししたら、とても興味を持たれたようで。君を取材したいと仰るんだ。」


「構わないわ。」


「ありがとう。伝えておくよ。」


「知り合いをわたしに合わせたくないのではなかったの?」

すこしからかってみる。


ジェレミーは澄まして言った。


「その人は女性なんだよ。大恋愛の末に十歳年上の貴族の夫と結婚して、現在第四子を子育て中だ。」


なんとまあ。

たしかにそれならわたしが会って、相手がわたしに惚れる心配は万にひとつもないだろう。


「なあ、今日の夕食はなんなんだい。」


「ご馳走よ。せっかくのクリスマスイヴだもの。おじさまやおばさまも今年はうちで食べるのよ。あなたに会いたいのですって。」


「両親には久しく会っていなかったな。楽しみだ。」


さっきまでの雪はすっかり止んで、午後のあたたかな陽光が二人を照らす。

二人が並んで歩くさまはとても似つかわしく見えた。



明日は、この連載はお休みして、「叔父の遺した古道具屋、実はダンジョンだった件」を更新します。

17:00更新。

ぜひチェックしてみてください。

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