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第二章:匿名での脅迫と、知性の誤算
引っ越しから数週間後。
修が出張で不在の夜、マンションのポストに、匿名の封筒が投函されていた。
中には、一枚のUSBメモリと、簡潔なメッセージ。
USBメモリには、修と瑠美が以前のアパートの寝室で愛し合う様子の、鮮明な動画が収められていた。
その盗撮の巧妙なアングルから、犯人が彼らの生活を長期にわたり監視し、隠しカメラを設置していたことが明らかだった。
瑠美は、すぐに状況を理解した。
これは、二人の秘密を人質にした脅迫だ。
メッセージには、こう書かれていた。
『アキヤマ部長の秘密、美しい血縁の愛。この動画を、小春ちゃんの幼稚園、部長の会社に公開されたくなければ、指示を待て。君の「知性」が、最善の選択をすることを願う。匿名より』
瑠美は、修に相談することをためらった。
修の仕事に影響を与えたくない、という思いからだ。
(犯人は、修の出世を妬む社内の人間か、アパートの管理関係者か?康夫さんになら相談できる?)
瑠美は、ここで致命的な誤算を犯していたのだ。
彼女は、脅迫者と救済者(康夫)を完全に分離して認識したのだ。




