第4話 雲みたいな
目が開いた。私は神界から見ていた時に雲とどれくらい違うのかと気になっていたふわふわベッドの上で横になっていて、周りにはあまり見たことのない雲のような白いふわふわの布がかかっている。
思わずそれに向けて手を伸ばすと突然その雲の間から大きな手が出てきて、優しく腕を支えられ、腕を元の位置に戻された。
「起きたか。」
左を見ると雲を押し除けながらあの真っ赤な瞳の優しい男の人がこちらに声をかけて近くに座った。
「どうした、腕を伸ばして。」
不思議そうな声で私に問いかける。
「あ、あの、あれ…雲、みたいな…」
まさか質問をされると思っていなかったので慌ててまた腕をあげてあの雲の方に指を指す。
また無言で私があげた腕をそっと元の位置に戻してから、上を見上げる。
「あぁ、これか。…触ってみるか?」
そう言って男の人は私の手にその薄い雲を差し出す。
雲のようにふわふわしているわけではないけれど、サラサラで触り心地が良く、落ち着く感じ。
「すごい…」
「あぁ。そうだな。」
先程までずっと無表情だったのに、急に微笑む彼に私はなぜか一瞬胸がきゅうっと苦しくなった。
「…?」
思わず胸を押さえる。するとまた、この男の人は私の腕を元あった位置に寝かせて、こちらをまっすぐ見る。
さっきから、腕を動かすと毎回元の位置に戻されるんだけれど、なんでなんだろう。
「君の体は本当に壊れかけている。例えば、君の腕は、少し無理をして腕を動かすだけでこれから一生腕が使えなくなってしまうほどギリギリの状態だ。今は鎮痛剤と手術で抜けきっていない麻酔のおかげで、痛みを感じないんだろうが。」
だから…と続けながら男の人は私の手に優しく手を置いた。この人の真っ赤な目と同じくらい暖かくてとても大きな手。
「どうか、安静にしていて欲しい。」
そう言って心配そうに見つめる彼は、私の目の上にそっと手を置いた。目の前が真っ暗になる。けれどもあの小さな部屋にいた時のように怖くはない。
「…分かった。」
「良い子だ。…君の名前はなんと言う?」
「リヴェリア」
「……リヴェリア。良い名前だ。私の名前は、アデル。アデル・ヴァレス、だ。」――――




