第13話 合法ロリ…という訳ですね…!by使用人一同
あまりに精疲力尽としていたので、大丈夫ですか?と声をかけ、周りの人たちの制止の声も聞かずアデル様に近づいた。ひどく辛そうだったのでちゃんとベッドで横になるよう提案したが、精神攻撃だけで肉体に支障はない、それに言わなければならないことがある、とまた立ち上がって、シェリーさん率いる家の人達の方をまっすぐ見つめる。
「シェリーとその他大勢…言いたいことはわかった…。俺は確かに無口・無表情・無愛想だ…もう25の…お、お、おっさんであることも認めよう。だが、彼女はおそらく私とほぼ同年齢だ。……おい。そこ。そんな腐ったゴミを見るような目で私の方を見るな。事実だ。そもそも考えてみろ。この私が数ヶ月前に連れてきたばかりの幼子に一目惚れして求婚すると、本気で思ってるのか?」
「「「「「(この旦那様なら、数ヶ月前に連れてきたばかりの幼子に一目惚れして求婚するかもしれないと)思ってました」」」」」
アデル様の口角がヒクヒクしている。口角が上がっているけれども、全く笑っているようには見えない。
解雇…とか言う言葉を呟いた気がするけれど、気のせいだと思うことにした。
「……お前らな…これは本当だ。10年前に終わったあの戦争。あの時懸命に祈りを捧げる彼女に出会った。その純粋な美しさと優しさに15才、15才!だった私は心を奪われた。あの時彼女はすでに8〜10才にはなっていた。それから体が大きくなっていないようだが…」
チラリと私の方を見る。それから少し間を空けて
「それは大方彼女の世界…家庭環境のせいであろう。」
そうみんなに説明した。
シェリーさん達が顔を見合わせる。そして勢いよく私の方を向いて言った。
「リヴェリア様、失礼ですが、お年は…?」
「正確にはわかりませんが…私の生まれた日は、リヴィアルです。」
部屋中にざわめきが聞こえた。いつも冷静なシェリーさんさえも真剣そうな表情で数を数えている。
私が‘癒しを司るもの’として生まれた日は、そろそろヴァレス王国が春を迎える準備をし始める頃だった。
この王国で、春の訪れを宣言するのは、王国の国花でもある、‘デリアの花‘の蕾が開いた時、なのだが、‘癒しを司るもの’である私が生まれたことで、その年は‘デリアの花’だけでなく春を待っていた王国全土の蕾たちが一斉開花した。それによって、例年より2ヶ月は早い春が来たあの年を、人々はリヴィアルとして記念日としたそうだ。
読んだ絵本の中に‘癒しを司るもの’にまつわるものがあって、そこに書かれていた。
…その本の中で、私はヴァレス王国の戦いを終結させた癒しの神とだけ書かれていた。
『なんで…!なんで助けてくれなかったの?!』
『痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!』
『お願い!息をして…!いやよ!死なないで!』
その後にあった、あの事については、書かれていなくて、少し安堵の息を漏らしたものだ。
「リヴィアルといえば、‘癒しを司るもの’が誕生した奇跡を記念して作られた記念日… 」
「あれは、今から20年前…と、言うことは…リヴェリア様はすでに成人なさっている??!」
先ほどから何度も何度も繰り返し指を追って数え間違えがない事を確認したシェリーさんが驚きの声を出す。
私はもう、下界では成人しているんだ。あの神界から追放されて初めにいた家、あそこで女の人が言っていた『10才くらいかい?』。
その時は自分の年齢の数え方が分からなくて、何も不思議に思っていなかった。
10才が下界でいうどれくらいの年齢なのか知らなかったのだ。
この家にきてから、自分の年齢の数え方も絵本で知ったのだが、シェリーさんが私に持ってくる本が『12才のためのマナー本』とかだったから、あれ?私20才じゃなかったっけ?と少し引っかかっていたけれど、まさかそんな小さく見えていたとは。
盲点。
「20才です。」
私は自分の指で20を作ってみんなに見せる。
「かわ…そう言うことだ。俺がろ、ロリこ、ゴフォッ…などと言うのは撤回してもらおう…」
先ほどから、アデル様にダメージを与えている『ろりこ』とはなんなんだろうか…。興味を持ちつつも、流石にやめておいた。また倒れられたら困るから。
「それで、彼女と2人きりで話がしたい。一度みんな部屋から出ろ。」
シェリーさん達は少し躊躇いながらも、
「…かしこまりました。」と、部屋を出て行った。
ヒューイさんはアデル様に「合法ロリ…という訳ですね…!」と親指を立てて晴れた笑顔で去っていった。




