第12話 うちの主人、ロリコンだぁぁぁぁぁぁ(泣)by使用人一同
「アデル様は『おっさん』なんですか?」
「お、『おっさん』…」
『おっさん』という言葉がダメだったのか、アデル様は床に倒れ込んだ。
床に手をつけて『リヴェリアが、私をおっさんって…おっさん…お、お、私が…?』と繰り返し唱え続けているアデル様を見るに、あまりいい言葉じゃないのかなと思った。
慌ててフォローの言葉をつけ加える。
「あ、アデル様!元気出してください!アデル様は全然『おっさん』じゃないです!『おっさん』に全く見えません!たとえ、『おっさん』だとしても、私は……」
『私は……』?何を言おうとしたんだろう。よく分からないけれど、なんだか胸がバクンバクンした。一体なんなのか。この胸の高鳴りは。
変なところで話を途切れさせてしまっていたが、アデル様は全く気付いていないようで、
「リヴェリアの口から『おっさん』という下劣な言葉が何度も…。彼女はああ言って私は『おっさん』じゃないと言ってくれたが、心のうちではやはり…いやでも…」
と、私の後付けも虚しく、心の内側にある何かと戦われているようだった。
「シェリーさん!流石にまずいですよ!我が主人にそんな、『おっさん』だなんて…」
「あら、ヒューイさん。あなたって確か、旦那様より年上なんでしたっけ…?」
「グフォッ…!」
「「「ヒューイ様~!!」」」
アデル様が倒れ込んだあたりから、まだ言いたいことがありそうなシェリーさんを何人かの周りの人が止めようとしていた。ヒューイさんも、その1人だったのだが、どうやら撃沈したようだ。
「シェリー様~!一応言っときますがアデル様は雇用主です~!」
「シェリー様!ストップ!ストップしてくださいませ!」
「シェリー様!アデル様はすでに十分心を抉られています!」
私のお世話をよくしてくれるリリーさん達も、シェリーさんの四肢を必死で掴みながらどうにか止めようとしていた。
けれど…
「メリー、リリー、マリー。今すぐ、そこを退きなさい」
ものすごい威圧のオーラがシュリーさんから感じられた。
「今、私の邪魔をしたら…(降・格♡)」
『邪魔をしたら…』の後の言葉は聞こえなかったが、親指を床に突き刺さる勢いで下に向けたただならぬ雰囲気に、マリーさん達も気圧され、しまいには、
「すいませんアデル様!どうか私たちの|将来《皇宮メイドとしての安定した生活》のために犠牲になってください!」
と、自ら白旗を上げた。
アデル様は、床に向かって永遠に「おっさん…おっさん…?」と呟き続け、ヒューイさんは床に倒れてから一向に動かず、メリーさん達は、シェリーさんにアデル様までの道を潔く差し出している。
『混沌』
そんな言葉が私の頭に浮かんだ。とある絵本で、お酒を飲んで酔っ払ってしまった人たちがおかしな事をたくさんし始めた時に、使われていた言葉。
初めて聞いた時はあまりピンと来なかったけれど、目の前に広がる死屍累々を見て理解した。
本当にとっても良く理解できた。
シェリーさんが勢いよくアデル様を指差して言った。(人に指は差しちゃいけないんじゃなかったっけ?)
「リヴェリアお嬢様?よく聞いてください。世の中では、我が主人のような、幼く愛らしい子供に性的興奮を覚える大人のことを『ロリこ』…」
「シェリー…!一旦そこでストップしてくれ…」
アデル様は振り絞るような細い声で、シェリーさんを止めた。




