第一章2 信頼ゲーム
ひとまずワームという脅威は去った。のだが、目の前には2人の悪魔。おそらく会話から姉妹と見て取れる。……あの化け物を、軽く倒すなんて。
「あ、人間さん!無事だった?」
駆け寄ってくるラウラ。反射的にゆきねは身構える。
私のことなんて簡単にひねり潰せるだろう彼女たちに、助けられたとはいえ警戒しないわけには行かない。
「姉さん、一旦ストップ。…私はエルネ。ラウラは私の姉さんで、私たちは一応、敵意はないよ。」
「いやー、それにしてもさ!…人間さん、凄いね!」
「…なにが?」
何もしていない、強いて言うなら尻もちをついて、それでも立って逃げようとしていたゆきねを褒めるラウラ。
「だってだって、考えてたでしょ?必死にどうしよう、どうやって生き残ろうー!って!」
「…姉さん?」
ラウラの言葉に疑問を抱くエルネ。それはゆきねがあの場面考えていた、ということの否定ではなく…言ってはならないことを言っているような、そんな──
「人間さんはやっぱり、この魔界の適せ─」
「考えただけじゃ、魔界で生き残ることはできないですよ。」
「でも、考えないと始まらないじゃん?」
ラウラの言葉を遮るエルネ、しかしそんなエルネをからかうように笑いかけるラウラ。
「……嫌だ。」
そんな2人に向け、掠れた声で、しかしはっきりと拒絶する。
「あなたたちは…アレを、難なく倒した。…信じられるわけ、ない。」
両手を挙げ、一歩下がるラウラ。エルネはゆきねに声をかける。
「誤解しないで。アレは魔物。倒さなければこっちが死ぬ。弱肉強食なんですよ、この世界は。」
ゆきねの言葉が詰まる。自分も少し前まで、殺される側だったから。何も言い返せない。
「ね、人間さん。もしあたしたちが敵だったら─」
ラウラの声が、後ろからやけに近く聞こえる。振り返ろうとすると…右腕を掴まれ、動きを止められる。
「人間さんは、もう死んじゃってるよ。」
素人でもわかる。絶対的な力の差。それに怯える時間なんて存在せず─
「……それが、できない理由だって、あるかもしれないでしょ。」
「賢い。」
負けじと言い返すと、エルネはつぶやく。感心したように、一瞬だけ。
「でも、あなたは生きている。それだけが事実。」
「人間さん、怖いよね。うん、分かる分かる。…でもね、怖がってる間にも、次の魔物はどんどん来るの。」「っ…」
わかりきっていた事実。ここが魔界だとするなら…確実に、さっきのような魔物が山ほどいる。
「だからさ、選んで?あたしたちを怖がってここで死ぬか、一緒に行って、生き延びるか。」
「信用しろ、なんて言葉はまだ言わないです。…でも、私たちはあなたを守れる。」
手を差し伸べる2人。ためらうゆきね。暫く俯いてから、手を伸ばし…戻す。
「…わかった。けれど…信頼は、まだ、しない。」
差し伸べられた手は掴まない。けれど、助かるために利用はする。そのためにゆきねは、悪魔と並んで歩き出す。




