第一章 1 魔界のルール
「ここは魔界の『強欲』の層だよ!」
突如教室から飛ばされた女子高校生、白咲ゆきね。そんな私の目の前に現れたのは、大悪魔ラウラと名乗る少女。彼女にはツノも翼もある。世界の風景といい、嘘ではなさそう。
「え、えっと…ラウラ…さん?」
恐る恐る声をかける。ラウラはゆきねに興味津々といった感じで、私の周りをくるくる飛び回っている。
「ん、なーに?」
「魔界…って、ホントなんですか?教室から気づいたらここにいただけだし、真実味が─」
疑問を投げかけようとすると、ラウラの手がそれを遮る。私より小さいはずの背中に、なぜかたくましさを感じて。
「しっ…静かにしててね。あたしが相手するから。」
ラウラがそう言うと同時、地面が轟音を立ててひび割れる。目の前に現れたのは、体長6メートルほどの巨大なワーム。口には鋭い牙。口の中にまでびっしり生えている。地面が割れたため、ラウラの身体が宙を舞い、今にもラウラをワームが飲み込もうとして──
「うわっと、あっぶな!よくもやったなー!!」
私が驚いてしりもちをつくまでの刹那のうちに、ゆきねの横に立つラウラ。
「いいもんねー!怒ったからふんだんに能力使っちゃうもん!」
「──『境界跳躍』!!」
一瞬…そう。本当に一瞬。風が吹き抜けるように、彼女はワームの前に飛び込んでいた。未だにラウラを食べるため、地面から突きだしたワーム。そんなワームの身体に、拳を叩き込んだのだ。
衝撃にワームが悶え、地中に潜る。ワームに捕まらないよう、地面の上を駆け巡るラウラだが…地面のひび割れは、ゆきねの方に向かってきて。
「えっ!?」
突然狙いがこちらに向き、尻もちをついたままのゆきねは動けない。
「やばっ…!間に合えっ!」
地面を跳ねるようにしながら突撃してくるワーム。そんなワームに…誰かが触れる。濃い紫色の髪を肩まで伸ばした、緑色の目の少女。高校生くらいの身長に…ラウラと同じ、ツノと翼。
「『断層撃』」
少女がワームに触れてから、およそ2秒後。ワームの進行方向が少し横にズレる。飛び込んできたラウラに抱きかかえられ、なんとかワームを回避。
「もう…姉さん、勝手に動くのはダメだっていつも言ってるじゃないですか!」
ラウラに向け、声を張り上げる彼女。対してラウラは慣れた顔。
「あっ!エルネ!ありがとー!…よーしっ!勝つぞー!」
「あなたは下がっていてください…一撃で仕留めますよ!」
彼女…エルネと呼ばれた少女は、ワームに蹴りを叩き込む。が、ピンピンしている。ゆきねを安全なところに降ろしたラウラが一撃を打ち込まんとワームに接近、ワームも察知して地中に逃げようとするが──
「姉さん!」「はーいっ!!」
エルネが蹴りを叩き込んだ位置から、べきぃっ、と、ワームの身体が折れる。その隙を逃さず、ラウラの拳がワームの体を穿ち…血飛沫と共に、ワームは動きをとめる。
「これで分かったでしょう。魔界は弱肉強食。弱者は淘汰されるのみなんですよ。」
「あたしの見つけた人間なんだからね!取ろうってなら許さないよ!!」
自信満々なラウラと、冷静なエルネ。あくまでこれが普通。
「っ…!」
血の匂い溢れる魔界、その恐ろしさを学ぶのだった。




