第53話 業者向けレセプションのあとで
夕方のカフェ・ラフォーレ リーヴルス。
業者向けレセプションの片付けが終わり、ようやく外の風が心地よく感じられる頃。
スタッフたちはそれぞれ、余韻を残したまま帰路につき始めていた。
メイと詩音も、一緒に駅へ向かって歩き出す。
「つかれたー……!」
詩音が思いきり背伸びをして、肩をぐるっとまわした。
「教えるって、けっこう難しいね。なんか、頭も体もフル稼働だったよ〜」
「でも……今日のレセプション、すごくよかったんじゃないかな」
メイがふっと笑う。その表情は、どこか晴れやかだった。
「あれ? なんかメイちゃん、うれしそうじゃない?」
「うん。……草薙社長に、ちゃんと制服のお礼言えたから」
「あ〜、なるほど!」
詩音が手を打つ。
「だからか〜。メイちゃん、社長追いかけるとき、めっちゃ全力だったもんね」
「そ、そんなに走ってた?」
「うん。廊下は走るなー!って先生に怒られるレベルだよ。マジで」
「なに、それっ」
二人の笑い声が、夕方の街にやわらかくこだました。
しばらく無言で並んで歩いたあと、メイがぽつり。
「……あー、なんかお腹すいてきた」
「おっ、じゃあ一杯いきますか!」
詩音が茶目っ気たっぷりに言う。
(……目指すは駅前のハンバーガーショップなんだけど)
メイは少しだけ笑って、詩音の後ろ姿を追いかけた。
◇◇◇
夜。
メイは、自室のベッドの上に寝転んでいた。
天井をぼんやりと見上げながら、手元のスマホをスライドさせる。
画面には、梓とのRainトークが開かれている。
『ごめん 仕事で行けない』
そのあとに、メイからの返事。
『電子招待状送るから、これたら来てね』
それと一緒に、添付ファイルのマーク。
PDFで作られた、ラフォーレリーヴルス・レセプションの招待状。
既読にはなっている。
けれど――
返信は、それきり。
指先がゆっくりと画面を閉じる。
(やっぱ、無理かな……)
「……ふぅ」
メイはひとつため息をついて、もう一度、天井を見上げた。
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