第14話 昼下がり、戦場にて…散る!?
「ふひゃー!もう〜ホントに戦争だったよ〜」
お昼の忙しい時間を終え、詩音は控え室の椅子に浅く座ったまま、ぐいっと伸びをした。
「もっと忙しくない店舗が良かったなー」
「ここの会社のお店は、どこも忙しいよ。諦めなさい」
同じく休憩に入った畑中瑞稀が、なだめるように言いながら前の椅子に座る。
——ここは、ル ポ ドゥ レヴ・コーポレーションって会社が運営してる、首都圏に7店舗ある中堅どころのカフェ。
私たちの働く《カフェ・ル ルポ ド ニーチェ》は、神奈川県横浜市にあって、
お昼時はおしゃれなお客さんでぎゅうぎゅう!
「そっかー。じゃあ仕方ないかー」
気を取り直して、詩音は賄いのパスタをフォークでぐるぐる巻いて、ぱくり。
「麗佳さんって、経営センス抜群らしいよね。全部あたってるってすごいわ」
瑞稀も自分のパスタにフォークを突き立てながら、しみじみ言う。
——草薙麗佳。
ここの会社の社長さん。
若くして大手居酒屋チェーンを退職、独立して、カフェを始めたら大当たり。
一気に有名カフェチェーンになったらしい。
「まあ、拾われた身だから、文句は言えないもんねー」
「あれ? 詩音はここ、いつからだったっけ?」
「今年の3月からだよ。もう3ヶ月……月日が流れるのは、早いのじゃよ」
「もう3ヶ月かぁ。早いよね、ほんと。……それまでは?」
「ニート!」
「ぷっ」
瑞稀が吹き出す。
「なにその、やたら誇らしげな顔」
「えへへ。だって、去年、就活パーフェクトだったし!やることなかったから!」
「パーフェクト?」
「うん、全敗!」
「……完璧に抑えられたってことか」
(なんかその言い方おかしくない?)
瑞稀は心の中で小さくツッコミを入れた。
「で、草薙さん、私のお母さんの高校の同級生だったんで、ねじ込まれたんだよ〜」
「へえ、そうなんだ」
「そしたらいきなりこの戦場でしょ?
武器がなきゃ戦えないってもんだよね!」
詩音は目の前のパスタを指差しながら、得意げに言う。
「それを言うなら、食料でしょ!」
「あっ、そっか!」
二人でアハハハと笑っていると——
「はしゃぎ過ぎんなよー、お前ら!」
声だけが、厨房の向こうから突然飛んできた。
ビクッと瑞稀が肩をすくめる。
(やっべぇー。チーフの祥子さん、こわいんだよなぁ……控室と厨房、隣り合わせだし)
「ずみません」と小声で謝る瑞稀。
ふと顔を上げると、詩音が——
瑞稀に背中を向けて、両手を広げ、仁王立ちしている。
「なにしてんの?」
「私が盾で、瑞稀ちゃんが矛だからっ!」
振り向きざまにドヤ顔を決める詩音。
「……」
なんだ、こいつは。
瑞稀は思考停止に陥った。
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