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「後宮の名探偵・大后様の暇つぶし」  奏でられる死の楽器

作者: 米糠

 1. 事件の発生


 紫霄宮の中庭は、穏やかな午後の光に包まれていた。色とりどりの花々が咲き誇り、心地よい風が吹き抜ける中、蕭紅梅しょうこうばいは優雅に琴を弾いていた。彼女の指先が弦を滑るたびに、美しい音色が響き渡り、周囲の人々はその演奏に魅了されていた。


 大后の蘭明蕙らんめいけいは、蕭紅梅の演奏を楽しみながら、侍女たちと共に微笑み合っていた。「本当に素晴らしいわ、蕭紅梅。あなたの琴の音色は、心を癒してくれる。」明蕙は心からの賛辞を送った。


 周囲の侍女たちも頷き、拍手を送る。蕭紅梅はその反応に微笑み、さらに情熱を込めて演奏を続けた。しかし、突然、彼女の表情が変わった。目が虚ろになり、次の瞬間、彼女は琴の前で崩れ落ちた。


「妃様!」周囲の者たちが驚きの声を上げ、混乱が広がる。侍女たちは慌てて蕭紅梅の元に駆け寄り、彼女を支えようとするが、彼女は意識を失っているようだった。


「医官を呼んで!」明蕙は冷静に指示を出し、周囲の者たちを落ち着かせようとする。彼女の心には不安が広がっていた。何が起こったのか、蕭紅梅に何が起こったのか。


 数分後、医官たちが急いで駆けつけ、蕭紅梅の容体を調べ始める。明蕙はその様子を見守りながら、心の中で何か不吉な予感を抱いていた。


「妃様、どうかお目覚めください。」医官の一人が蕭紅梅の脈を確認し、もう一人が彼女の指先を見つめる。周囲の者たちは息を呑み、緊張感が漂う。


「何か異常があります。指に傷が……」医官の言葉に、明蕙は思わず身を乗り出した。傷?それは一体どういうことなのか。彼女の心に疑念が生まれ始めた。


「この傷は、琴の弦に触れた際にできたものかもしれません。」医官が言うと、明蕙はその言葉に耳を傾けた。琴の弦に何かが塗られていたのか?それとも、誰かが意図的に彼女を狙ったのか?


 明蕙は決意を固め、調査を始めることを心に誓った。蕭紅梅の命を救うため、そして真実を明らかにするために。



 2. 初期の調査


 蕭紅梅が崩れ落ちた後、紫霄宮の中庭は一瞬にして緊迫した空気に包まれた。

 周囲の者たちは不安そうに顔を見合わせ、何が起こったのか理解できずにいた。

 明蕙はその様子を冷静に観察し、心の中で状況を整理していた。

「つまらないわ〜。何か事件でも起きないかしら」と、彼女は小声でつぶやく。

 普段の平穏な日常に刺激を求めていた彼女にとって、今こそがその時だと感じていた。

 医官たちが蕭紅梅の元に集まり、彼女の容体を調べ始める。

 明蕙はその様子を見守りながら、彼女の指に目を向けた。

 医官の一人が、蕭紅梅の指先に小さな傷を見つける。

「これは……琴の弦に触れた際にできたものかもしれません」

 その言葉に、明蕙は心の中で何かが閃いた。

 琴の弦に何かが塗られていたのか?

 それとも、誰かが意図的に彼女を狙ったのか。

 明蕙は医官に近づき、質問を投げかける。

「その傷から、何か異常な成分が検出される可能性はありますか?」

 医官は頷き、「はい、調べてみます。ただ、琴の弦に触れたことで、何か毒が塗られていた可能性も考えられます」

 明蕙はその言葉を聞き、さらに深く考え込む。

 蕭紅梅が演奏していた琴は、彼女にとって特別なものであり、誰かがそれを利用したのかもしれない。

「琴の弦を調べてください。何かが残っているかもしれません」

 明蕙は指示を出し、医官たちは急いで琴を調査することにした。

 周囲の侍女たちは不安そうに見守る中、明蕙は冷静さを保ちながら、次の手がかりを探し始めた。

 彼女の心には、蕭紅梅を救うため、そして真実を明らかにするための強い決意が宿っていた。



 3. 名探偵の指摘


 明蕙は、蕭紅梅の指にできた傷をじっと見つめながら、思考を巡らせていた。

 彼女の心の中には、さまざまな疑念が渦巻いている。

「この傷は意図的に作られたものかもしれない」と、彼女は静かに呟いた。

 周囲の者たちは彼女の言葉に耳を傾け、驚きの表情を浮かべる。

 明蕙は、蕭紅梅が琴を弾く際に何か特別なことが起こったのではないかと考えていた。


「琴の弦に何かが塗られていた可能性が高いわ。もしそうなら、誰かが彼女を狙ったということになる」

 明蕙は、周囲の者たちに向かって言葉を続けた。

 彼女の洞察力は鋭く、周囲の混乱を一瞬で整理する力を持っていた。


「医官たち、琴の弦に残された黒い粉を調べるように命じてください」

 明蕙は指示を出し、医官たちはすぐに動き出した。

 彼女の目は真剣で、何か重要な手がかりを見逃すまいとする決意に満ちていた。


 医官の一人が琴の弦を注意深く調べ、黒い粉を指先でつまみ上げる。

「これは……何かの成分かもしれません。詳しく分析する必要があります」

 明蕙はその言葉に頷き、心の中でさらなる推理を進める。


「この粉が何であるかを突き止めれば、真実に近づけるはず」

 明蕙は自信を持って言った。

 彼女の目は輝き、名探偵としての使命感が彼女を突き動かしていた。

 周囲の者たちも、明蕙の言葉に希望を見出し、彼女の指導のもとで調査が進むことを期待していた。



  4. 疑惑の広がり


 明蕙は、蕭紅梅の容体が急変した原因を探る中で、次第に周囲の人々に目を向け始めた。

 彼女の心には、嫉妬心や陰謀が渦巻いているのではないかという疑念が芽生えていた。

 特に、蕭紅梅に嫉妬心を抱く貴妃魏紫音ぎしおんや、彼女に仕える女官たちの存在が気にかかる。

 明蕙は、彼女たちが何らかの形で関与している可能性を考え始めた。

「魏紫音は、蕭紅梅の才能を妬んでいる。彼女がこの事件に関与している可能性が高いわ」

 明蕙は、周囲の者たちに向かって冷静に指摘した。

 彼女の言葉には、確固たる自信が宿っていた。

 周囲の者たちは驚き、明蕙の推理に耳を傾ける。

「魏紫音は毒薬に詳しいから、彼女がこの事件に関与している可能性が高い」

 明蕙は続けて言った。

 彼女の頭の中には、魏紫音が過去に毒薬を使った事例や、彼女の冷酷な性格が浮かんでいた。

 明蕙は、魏紫音が蕭紅梅を狙った理由を考え、嫉妬心からくる行動の可能性を強く感じていた。


「もし彼女が関与しているなら、証拠を掴む必要があるわ」

 明蕙は決意を新たにし、周囲の者たちに指示を出す。

「魏紫音の動向を監視し、彼女が最近接触した人物や、何か不審な行動をしていないか調べてください」


 周囲の者たちは明蕙の指示に従い、彼女の推理を支持するように動き出した。

 明蕙は、疑惑の広がりを感じながらも、真実を明らかにするための道を進む決意を固めていた。

 彼女の心には、蕭紅梅を救うための強い使命感が宿っていた。




 5. 新たな事件


 明蕙が魏紫音の動向を監視するよう指示を出した矢先、再び不穏な事態が発生した。調査が進む中、別の女官が中庭で倒れ、同様の症状を示しているという報告が入った。明蕙はその知らせを聞き、心臓が締め付けられるような思いを抱えた。


「またか……」明蕙は思わず呟いた。彼女の心には、恐れと焦りが広がる。「次の犠牲者が出る前に、魏紫音を捕まえなければ。」明蕙は決意を新たにし、急いで現場へ向かうことにした。


 中庭に到着すると、倒れた女官は周囲の者たちに囲まれ、医官たちが必死に手当てをしていた。明蕙はその様子を見つめながら、心の中で冷静に状況を分析する。女官の顔色は青ざめ、呼吸も荒い。明蕙は、彼女が蕭紅梅と同じような症状を示していることに気づいた。


「この女官も、琴の弦に触れたのか?」明蕙は思考を巡らせる。

 もしそうなら、何か共通の要因があるはずだ。

 明蕙は医官に近づき、女官の容体を確認する。

「彼女の指に傷はありますか?何か異常な成分が見つかりましたか?」


 医官は首を振り、「まだ調査中ですが、彼女も何か毒に侵されている可能性があります」と答えた。

 明蕙はその言葉を聞き、ますます焦りを感じた。

 時間がない。

 彼女は魏紫音を捕まえ、真実を明らかにしなければならない。


「すぐに魏紫音を呼び寄せてください。彼女に事情を聞く必要があります」

 明蕙は命令を下し、周囲の者たちに指示を出した。

 彼女の心には、次の犠牲者が出ることへの恐れと、真実を追求する強い意志が宿っていた。


 明蕙は、魏紫音がこの事件に関与していると確信していた。

 彼女の心には、正義を貫くための決意が燃えていた。

 次の一手を打つため、明蕙は全力で動き出す準備を整えた。



 6. 証拠の発見


 明蕙の指示を受けた青荷は、魏紫音の部屋へと急ぎ足で向かった。彼女は、魏紫音が何か不審な物を隠しているのではないかと考え、部屋の隅々を調べることにした。

 青荷は慎重に家具を動かし、引き出しを開け、目に見えるものすべてを確認していく。


 すると、彼女の目に留まったのは、薄暗い棚の奥に置かれた小さな瓶だった。

 青荷はその瓶を手に取り、じっと見つめる。

 瓶の底には、黒い粉のようなものが残っていた。

「これは……毒薬の成分かもしれない」

 青荷は心臓が高鳴るのを感じながら、急いで明蕙のもとへ戻ることにした。


 明蕙は青荷が戻るのを待っていた。

 青荷が息を切らしながら小瓶を差し出すと、明蕙はその中身をじっくりと観察した。

「これが魏紫音の仕業である証拠になる」

 明蕙は自信を持って言った。

 彼女の目は輝き、真実に近づいたことを実感していた。


「この小瓶を持って、方慧仙に分析を依頼しましょう」

 明蕙は決意を新たにし、青荷に指示を出した。

 方慧仙は宮中で評判の高い薬師であり、彼女の分析によってこの証拠がどれほど重要なものであるかが明らかになるはずだった。


 青荷は小瓶をしっかりと握りしめ、明蕙と共に方慧仙の元へ向かう。

 道すがら、明蕙は心の中で次の展開を考えていた。

 もしこの小瓶が魏紫音のものであると証明できれば、彼女を捕まえるための強力な手がかりとなる。


 方慧仙の部屋に到着すると、明蕙は急いで事情を説明し、小瓶を手渡した。

「この成分を分析して、何が入っているのか確かめてください」

 明蕙の声には緊迫感が漂っていた。

 方慧仙は頷き、すぐに分析を始める準備を整えた。


 明蕙はその様子を見守りながら、心の中で次の一手を考えていた。

 証拠が揃えば、魏紫音を追い詰めることができる。

 彼女の決意は揺るがなかった。

 真実を明らかにし、蕭紅梅を救うために、明蕙は全力を尽くす覚悟を固めていた。



 7. クライマックス


 明蕙と陳星河は、魏紫音が密会をしている場所を突き止めた。

 それは、宮中の奥深くにある隠れた庭園で、普段は人目に触れない場所だった。

 二人は静かにその場に近づき、周囲の様子を伺う。

 明蕙の心臓は高鳴り、緊張感が漂っていた。


「彼女が他の側室たちと共謀している可能性が高い」

 明蕙は陳星河に耳打ちした。

 彼女の目は鋭く、魏紫音の動向を見逃さないようにしていた。

 陳星河も頷き、二人は慎重にその場に潜入する準備を整えた。


 庭園の奥から、低い声が聞こえてきた。

 明蕙はその声に耳を傾け、魏紫音と他の側室たちが何かを話し合っているのを確認する。

 彼女たちの表情は緊張しており、何か重大な計画を練っている様子だった。


「今がチャンスだ」

 明蕙は陳星河に目を向け、合図を送った。二人は一気に庭園の中へと飛び込んだ。


「魏紫音!」

 明蕙は声を張り上げ、彼女の注意を引いた。

 魏紫音は驚き、振り返るとその表情は一瞬にして冷酷なものに変わった。


「あなたたち、何の用?」

 魏紫音は冷たく言い放ち、他の側室たちも明蕙たちを警戒する。


「あなたが蕭紅梅を狙った理由は明らかだ。嫉妬心から、そして他の側室たちと共謀して、彼女を陥れようとしている」

 明蕙は毅然とした態度で指摘した。


 その瞬間、魏紫音の目に怒りが宿る。

「あなたには関係ないことよ!」

 彼女は叫び、逃げ出そうとした。


 明蕙はすぐに彼女の行動を阻止しようとしたが、魏紫音は素早く動き、庭園の出口へと向かう。

 明蕙は心の中で焦りを感じながらも、彼女を追いかける決意を固めた。


「逃がさない!」

 明蕙は叫び、全力で魏紫音を追いかけた。

 陳星河も後を追い、二人は緊迫した瞬間に突入していく。

 魏紫音の計画を暴くため、そして蕭紅梅を救うため、明蕙は全力で立ち向かう覚悟を決めていた。



  8. 捕まる犯人


 明蕙と陳星河は、魏紫音を追い詰めるために全力で走り続けた。

 後宮の庭園は、緑に囲まれた美しい場所だが、今は緊迫した雰囲気に包まれていた。

 明蕙の心臓は高鳴り、彼女の目は逃げる魏紫音を捉えようと必死だった。


「魏紫音、逃げられないわ!」

 明蕙は叫び、彼女の動きを封じるために全速力で追いかけた。

 陳星河もその後を追い、二人は魏紫音との距離を縮めていく。


 魏紫音は、庭園の奥へと逃げ込むが、明蕙はその動きを見逃さなかった。

 彼女は冷静に周囲を見渡し、逃げ道を塞ぐための作戦を考えた。

 庭園の中には、いくつかの道があり、魏紫音がどの道を選ぶかが勝負の分かれ目だった。


「左に行くわ!」

 明蕙は陳星河に指示を出し、二人はそれぞれの道を選んだ。

 明蕙は、魏紫音が左の道を選ぶと予測し、その道を進んだ。


 庭園の奥で、魏紫音は息を切らしながら振り返り、明蕙たちの姿を見て恐怖に駆られた。

「どうして私を追い詰めるの?」

 彼女は叫び、焦りを隠せなかった。


 その瞬間、影衛司が庭園に現れ、魏紫音を取り囲んだ。

「逃げられないぞ、魏紫音」

 影衛司の一人が冷静に言った。

 魏紫音は絶望的な表情を浮かべ、後ろに下がるが、すでに逃げ道は塞がれていた。


「私の計画は完璧だったはずなのに……!」

 魏紫音は悔しさを滲ませながら呟いた。

 明蕙はその様子を見て、心の中で勝利を確信した。


「私の推理通りだったわ」

 明蕙は満足げに微笑み、魏紫音に向かって言った。

 彼女の言葉には、長い間の苦労が報われたという安堵感が込められていた。


 影衛司が魏紫音を捕まえ、彼女は無抵抗のまま連行されていく。

 明蕙はその光景を見つめながら、真実を明らかにするために戦った自分を誇りに思った。


「これで蕭紅梅も救える」

 明蕙は心の中で決意を新たにし、次のステップへと進む準備を整えた。



  9. 結末


 魏紫音の捕獲によって、後宮内の混乱は収束し、蕭紅梅は徐々に回復を見せていた。

 明蕙は、彼女の病室を訪れ、安堵の表情で彼女の様子を見守る。

 蕭紅梅は、明蕙の姿を見て微笑み、「あなたのおかげで、私は助かったわ」と感謝の言葉を口にした。


「いいえ、あなたが強かったからです」

 明蕙は優しく答え、蕭紅梅の手を握った。

 彼女の心には、後宮内の平和を守るために新たな決意が宿っていた。

 明蕙は、これからも誰かが傷つくことのないよう、しっかりと見守っていくことを誓った。


 事件が解決し、後宮は再び静けさを取り戻した。

 しかし、明蕙の心の中には、少し物足りなさが残っていた。

 彼女は、日常の平和が続くことを望む一方で、何か刺激的な出来事が起こることを期待していた。


「つまらないわ〜。何か事件でも起きないかしら」

 明蕙はふとつぶやき、窓の外を眺めた。

 彼女の目には、次なる展開を期待する輝きが宿っていた。


 その瞬間、明蕙の心には新たな冒険の予感が芽生えた。

 後宮の平和を守ることは大切だが、彼女の好奇心は決して消えることはなかった。

 明蕙は、次に何が起こるのか、心の中でワクワクしながら待ち続けるのだった。

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