返答
「……ときに、ロイ。実は、つい先日ジャンくんに誘われたのです。一緒に、映画に行かないかと」
「……そっか、ジャンくんが」
食事も終わりに近づいた頃、ふと躊躇いがちにそう話すリリアさん。どうしてか少し上目遣いなのは気になるけど、それはともあれ――
……そっか、ジャンくんが。きっと、相当緊張したんだろうな。それでも、頑張って勇気を出して……すごいなぁ、ジャンく――
「……それで、どう思います?」
「……へっ?」
「……だから、ロイはどう思うのかと、そう聞いているのです。私が、彼のお誘いを受けるべきかどうか」
そんな感心の最中、不意に届いたリリアさんの声。いや、不意にでもないか。会話中だったんだし。
……だけど、その内容は中々に思い掛けないもので。えっと、僕がどう思うか……どう思うか……
「……えっと、リリアさんの心のままに返答すれば良いかと思う、かな」
「……そうですか。いえ、もう返答は済ませているのですけどね。申し訳なくも、丁重にお断り致しました」
「……そ、そっか」
すると、僕の返答に不服そうな表情でそう話すリリアさん。……まあ、そもそも僕なんかがためになる助言なんて出来るわけないよね。
ただ、それはそうと……うん、もう返事しちゃってるんだね。だったら、どうして聞いたのかという疑問はあるけど、それはともあれ……大丈夫かな、ジャンくん。やっぱり、落ち込んでるよね……とは言え、誰が悪いわけでもないので仕方ないのだけど。