大人の女性は魅力的?
「――素晴らしいわ、ジャンくん! 貴方は、本当に類稀なる才能に恵まれているのね」
「いやー、僕なんてまだまだです。まだまだ研鑽中の身でして」
「いえいえ、謙遜しなくて良いのよ。皆さん、ジャンくんに改めて盛大な拍手を!」
それから、およそ一週間経て。
二限目、中級魔法の授業にて。
先生から最上の賛辞を受け、少し照れくさそうに頭を掻き答えるジャンくん。そして、そんな彼に再び教室全体から大きな拍手が巻き起こる。と言うのも、今しがた上級に近い難しい魔法をものの見事に成功させて……うん、やっぱりすごいなぁジャンくん。改めてだけど、先生の言う通りものすごく才能が……まあ、才能だけみたいに言うのも頗る申し訳ないけども。ジャンくんは、実際にものすごく努力もしているわけだし。
……ただ、それはそれとして――
「――おやおや、随分とあの先生がお気に召したのですね、ロイ。さっきから、随分と――それはそれは、随分と熱心に見つめているようですし」
「……いや、そういうわけでは……」
そう、隣から声が届く。それはそれは、随分と冷ややかなお声が。でも、小心者の僕に直接そのご尊顔を拝む勇気はない。きっと……うん、声音に違わぬ大変冷ややかな表情を浮かべているだろうから。
さて、何のお話かというと――今日赴任してきたばかりという、何とも妖艶な雰囲気漂う女性教師、ロラ先生のことを仰っているわけで。
「……へえ、ロイはああいうのが好みだったのですね。しかと海馬に刻み込んで、今後の参考にすることと致します」
「……いや、あの……」
すると、なおも……いや、いっそう冷えた声音でそう口にするリリアさん。……うん、参考ってなんの?
……あと、ついでに言うと……確かに、僕はロラ先生をじっと見ていたかもしれないけど、それは好みだとかそういうことではなく――
すると、ふと教室内を歩き回るロラ先生。見ると、生徒一人一人に近づいて……えっと、授業の理解度を確認するため、とかかな?
ともあれ、暫くして僕のもとへと近づいてくるロラ先生。……しまった、正直あまり解ってな――
「…………っ!?」
「…………へっ?」
すると、僕を見るなり大きく目を見開くロラ先生。そして、どうしてかそそくさと他の生徒のもとへ……えっと、どうしたんだろ――
「……ふふっ、何だか避けられていますねロイ。ご愁傷さまです」
すると、つい先ほどまでとは一転、どうしてか嬉しそうな声音でそう口にするリリアさん。……うん、どうしたんだろうね。




