嘗てないほどに――
「……あの時の、あのお言葉……あれは、そういう意味だったのですね」
「……うん。まあ、リリアさんならそれも含め心配ないと思ったんだけど……それでも、万が一にもって思ったら……ごめんね?」
「ふふっ、なんで謝るんですか」
時は戻り、中庭のベンチにて。
そう伝えると、言葉の通り申し訳なさそうに答えるロイ。ふふっ、なんで謝るんでしょうね。
ともあれ、話を戻しますと――つまりは、ロイは自身と同じ思い……その莫大な魔力を制御できず、大切なご両親を殺してしまった自身と同じ思いを私にしてほしくなかったということで。
……まあ、彼自身言ったように、その点においては心配ご無用なのですけどね。一応、これでも神に仕えていた身――魔力の制御など、全く問題なく出来ますし。尤も、流石にそれを彼に言うほど無神経ではないつもりですけど。
さて、些かくどくなるかもしれませんが、当時の私に彼の真意は分かりませんでした。いえ、身も蓋もなく申してしまえば、真意どころか少しも意味が分かりませんでした。……ですが、それでも――
『……あ、その……はい』
あの日、彼の言葉に茫然と呟いた私。意味は分からずとも、それでも分かったのは――彼が、心から私を心配してくれていたこと。妬み嫉みはあれど、誰からも心配などされなかった私を心の底から心配してくれていたことが、この上もないほどに真摯なその表情からひしひしと伝わって。
ですが、そんなことは何でもない――少なくとも、私にとっては取るに足らないはずのこと。なのに……そんな何でもないことに、どうしてか嘗てないほどに胸が熱くなっている自分がいて。