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餞
『……人間になりたい、か。その言葉に、偽りはないのじゃな? リリア』
『はい、もちろんです神様。この忠実なる下僕たるわたくしめが、貴方様に嘘を申したことなどありますか?』
『いや、もうその言葉が嘘じゃと思うが。そもそも、忠実なる下僕でもなかったじゃろうに』
『ふふっ、そうですね。そして、もちろん問題はありませんよね? 私だって、ちゃんと例の水準を満たしているはずですし』
一週間前、校長室にて。
私の申し出に、何とも珍しく真剣な表情で確認を取る神様。その申し出とは、彼の言うように人間に――天使を辞めて、人間になりたいというもので。
だけど、神様に驚いた様子はない。むしろ、分かっていたように見受けられます。それから、再び真剣な表情を浮かべ――
『――ああ、承知した。ちなみに、分かっているとは思うが……決してやり直しは効かんから、後悔するでないぞ』
そう、真っ直ぐに告げる神様。私だって、彼とそれなりに長い付き合い――それが、彼なりの餞だということは流石に分かった。