魔法学校の落ちこぼれ
「――ねえ、ロイくん。あんまり、こういうことは言いたくないんだけど……流石に、このくらいはそろそろ出来てくれないと困るよ?」
「……はい、すみませんミシェル先生」
ソルエ魔法学校、その二年A組の教室にて。
そう、呆れたように告げるのは丸眼鏡の似合う端正な男性。彼はミシェル先生――僕ら二年A組の担任の先生で、初級魔法の授業を担当している。したがって、今教わっているのもまさしく初級――それも、その中でも初歩的な魔法なのだけど……それさえも、僕は一向に出来る気配がなくて。
……まあ、それも当然。どれほど簡単――それこそ、誇張なしに誰でも出来るような料理のレシピがあったとしても、食材がなければ作れない。それと同じで、どれほど簡単な魔法でもその材料――即ち、魔力という材料がまるでなければ魔法など出来るはずもないわけで。
「――やあやあロイくん、今日も注目の的だったねえ。いや〜ほんとに羨ましい限りだよ」
「……あはは、それなら代わってあげられると良いんだけどね、ジャンくん」
「いや〜それは難しいねえ。だって、あ〜んな簡単な魔法がちっとも出来ないなんて、僕みたいな才能豊かな人間には逆に難易度が高すぎるからねえ。だから、あれは君だけの才能だよ。これ〜ぽっちの魔力もない、唯一無二の君だけの才能だよ。いや〜ほんとに羨ましいね〜」
三限目――初級魔法の授業終了後。
廊下にて、何とも愉しそうな笑顔でそう話すのは鮮やかな金髪の男の子。彼はジャンくん――同じ二年A組のクラスメイトで、学年でも指折りの優秀な男子生徒だ。そんな優秀な彼であるからして、僕のような落ちこぼれなど眼中にないのが自然だと思うのだけど……どうしてか、このように度々こうして僕に話し掛け……いや、まあ理由はおおかた察してるんだけどね。




