……だけど、それは――
そう、何とも呆れたような表情で尋ねる神様。……うん、その表情は些かイラッときますが……でも、どういうこと? 魔力を奪った……いや、抑えた、かな? まあ、この文脈では同じことだろう。ともあれ、そうでなければどうして彼の魔力は――
「――不思議に思わんかったか? あやつの能力は、魔力を吸い取るというもの――じゃとしたら、突如生じたロイのあの魔力はどう説明するんじゃ? わしが魔力を奪っていたら、そもそもあやつが吸い取る魔力など皆無――じゃとしたら、良くも悪くもロイには何も起こらないはずじゃろう」
「……っ!!」
神様の指摘に、思わず言葉を失う私。……確かに、そうだ。タイミングがタイミングなだけに、きっと何かしらの作用が生じたのだと思っていた。彼の秘めたる魔力を目覚めさせる、何かしらの特殊な作用が。
……だけど、それはおかしい。既に神様が魔力を奪い取っていたとしたら、間違ってもあんな現象は起きていない。だとしたら、いったい――
「――答えは簡単じゃよ、リリア。わしは魔力を奪ったのではない――与えたのじゃ。あの莫大な魔力さえ無効にするほどの、途方もないほどに甚大な『負』の魔力をな」